神待ちの果てに
このわけ分からん世界の住人だけあって,オッサンもわけ分からん奴だった。私の不幸な境遇を夢物語と笑い飛ばす。確かに電波を学ぶ女子学生は希少だが,決して電波な子じゃ無いぞ。いやむしろレア物なんだ,それなりのリスペクトってものがだなぁ。
そうこうしているうちにオッサンの丸太小屋へ着く。砂金運びの分で今夜は泊めてくれるらしいが,居座るなら対価を払え,とか言い出した。
「何も持ってないんだ…です,けど?」
オッサンはちょっと考えて,ある意味お約束だがある意味ありえない事を言い出した。未通女か,だと!?いやそれベタ過ぎ。てかまだ17の私に手を出したら国家権力が黙っていない。人権擁護委員会だって許さないぞ。
しかし結局他に払える物も無く,ここを出たら野垂れ死に確定コース。私の乙女は安くないぞと最後の抵抗。ところがオッサンはそれを聞いて大笑い。人間なんかに興味は無いって!?アンタいったい何者だ?なに?ドワーフ?どっかで聞いたような気もするがまぁ乙女のピンチが去るなら何でも良い。
だが待て,それなら何でそんな事聞くんだ?と思ったらオッサンは鍛冶屋だという。なるほど鍛治場には男か乙女しか入れんと授業中にマンガで読んだぞ。てことは何か?鍛冶をやらせる気か。まぁ家庭科がマンガ読書の時間と化した私にとっては家事よりそっちのほうが良いかも知れないが,電気も通ってないようなアナログな環境で鍛冶とか悪い予感しかしない。
「…とりあえず,お名前を伺っても?」
この自称ドワーフとかいう生き物のオッサンはトーベ。トーベ=ナバティータと言うらしい。童話作家に居そうな名じゃないかオイ。ああアレかドワーフってのは童話の親戚か。
営業スマイルを浮かべ下手に出ておじさまなんて言ったら怒り出した。そんなに年は食っていないだと?じゃあアンタいくつだ。何?120!?それオッサンどころの話じゃないだろ!
下手に出るのも忘れてしばらくの口論の後,親方だからとかなんとか巧く丸め込んでオヤっさんに落ち着いた。ヤをつけただけこっちも随分譲ったんだから文句言うな。
いろいろと疲れたがともかく当面は何とかしのげそうだ。ヤレヤレ生きるってのは大変だ…。