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転生したら祖国滅亡? ~仕方ないので建国チーレムする~  作者: うなぎ
エピローグ

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エピローグ


 リディア州、セントランド山には賢者がいる。 

 万病を治すと名高いその賢者は、ごく少人数の村人たちに神様のように崇められていた。ある日突然この地に現れた彼女は、貧しい人々を救う聖人のような存在。


「賢者様、ありがとうございます」


 子供を抱きかかえた村人から感謝された。熱病を患っていたあの子供は、適切な処置を施さなければそう長くはもたなかっただろう。そう思うと、自分の善行に気分が良くなってくる。

 薬の調合はさほど難しくはない。『あの人』ほどではないが、自分だって物質錬成魔法を使うことができる。知識のある限り、必要な薬草を生み出すことができるのだ。


 外に出ていった村人と入れ違いに、新たにドアを叩く音が聞こえた。木製のログハウスは自分で作ったものであるが、ところどころ隙間が多い。強くドアを叩かれると建物が壊れてしまわないかと不安になってしまう。


「入れ」

 

 そう言って、新たな客を迎え入れる。

 現れたのは一人の男性だった。マントと胸当て、それから剣を腰に下げたその姿。

 賢者は、思わず手に持っていたすり鉢を落としてしまった。


「お久しぶりです、エミーリア様」

「カイ……」


 現れたのは、今やこの統一王国の王となった……カイだった。



 俺はエミーリア様の前にいた。


「ったく、リチャードの奴、あと一年後だって言ってたのにこれだもんな。ホント……あいつらのいい加減さには呆れるよ」


 かつてこの世界を支配したアーク神を倒し、世界を解放してから三年の月日が流れた。

 俺はすぐさまリチャードに頼み込み、転生するエミーリア様の魂を誘導した。その結果、こうして記憶を維持したまま生まれ変わることに成功したらしい。

 そう、今俺の眼前に座っているこのお方はエミーリア様。 


 要するにかつての俺と同じだ。魔法が使えるようになったら子供の体から大人の体に構築しなおし、親元を離れこの山に引きこもっていたのだろう。

 エミーリア様を探すのには骨が折れた。なんせ、本当に転生しているのかどうか半信半疑だからな。それっぽい人物のところをしらみつぶしに探していくしかなかった。

 今頃は、リチャードが俺の代わりにしっかりと政務に励んでいることだろう。ご愁傷さま。


「なぜここに来た」


 願いかなった俺たちの再開は、そう順風満帆とはいかないらしい。エミーリア様は柳眉を歪め、警戒した様子でこちらを睨みつけた。


「お前が私を転生に導いてくれたのは知っている。必ずそうすると思っていた。だから私はこの山に身を隠し、誰とも会わないようにしていた」

「あなたは……確かに罪人だった。それを俺は否定したりしない。でも、人々を虐殺したエミーリア様はもう死んだ。今、この場にいるのは生まれ変わって何の罪も持たない女の子だって理解している」

「ずいぶんと都合のいい理論だな」


 にらみ合う俺たち。幾ばくかの時間が流れたのち、ふぅ、とため息をついて最初に折れたのはエミーリア様だった。


「……いや、子供のようなことをしてすまなかった。あ、あれだけ『結婚』とか喚いておいてもう一度会うのが恥ずかしかっただけなのかもしれない」

「では、俺と一緒に来てくれるんですか?」


 こくり、と頷く女王陛下。


「よかった」


 どうやら、交渉は成功のようだ。変に嫌がられたらどうしようかとやきもきしていたから、胸をなでおろす気持ち。三年というときの流れが、女王陛下の心を静めてくれたのかもしれない。

 俺はエミーリア様の手を取った。二人でこの部屋を出るため、ドアに手をかける。


「あれ?」


 しかし、俺は足を止めてしまった。建物の外には、俺の見知った四人が立っていたからだ。


「カイ、何をやっているんですか? おじい様がひ孫の姿を心待ちにしていますよ?」

「え?」

「邪神殿、帝国の正当後継者として、早く子供が必要だとは思わないか?」

「え?」

「せんせ、とうとう私、体を組み替える魔法を会得した。先生の大好きな邪竜エミーリアにそっくりの体を作ったよ。その人の代わりは私に任せて」

「え?」

「またこんなところフラフラ歩いて、リチャード将軍の命令で連れ戻しに来たわよっ! も、もう、あんたにはあたしがいないと……駄目ね」

「え?」


 ど、どうやら俺は後をつけられていたらしい。建物の外にはクラリッサたち四人が立っていた。


「ふ、ふふふ……ふ」


 エミーリア様が……笑う。しかしその微笑みは心優しいものではなく、どこか生まれ変わる前の病んだ感じを彷彿とさせるような様子だった。

 

「ど、どうやら正妻が誰かをはっきりさせなければいけないようだな。カイは私のものだっ!」


 そういって、エミーリア様は俺に抱きついたのだった。


 俺たちは生きている。

 この世界で、どこまでどもまでも。

 平和は遠い。平等なんてあってないようなものだ。かつてあのお方が求めていた世界とは程遠く、欲にまみれた穢れた世界。

 でも、世界なんてそんなもんだ。

 人は理想のままに生きていけない。美味しいもは食べたいし好きな人はできる。その結果暴走してしまうことを防ぐのは……難しい。

 俺は理想を求めない。でも願わくば、少しでもいい世界を作れるように……努力していきたい。


読んでくださってありがとうございます。


これにて、『転生したら祖国滅亡? ~仕方ないので建国チーレムする~』は最終回となります。

読者の皆様、今までありがとうございました。


前回の作品はブックマークの少なさのあまり、途中でだいぶやる気が削がれてしまっていました。

今回は100以上ブックマークがあったため、常に励まされている状態でした。

そのため、執筆は格段にやる気がありました。


次回作ももりもり頑張っていきます。

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― 新着の感想 ―
[一言] つまらん。すっきりしない。なんか薄っぺらい。駄作
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