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転生したら祖国滅亡? ~仕方ないので建国チーレムする~  作者: うなぎ
古代遺産編

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邪竜の居場所

 魔王ちゃんを出迎えた俺は、すぐに来客用の部屋へと案内した。


「ま、まさか魔王がこの州にやってくるとは……」

「パパ、大丈夫だよ。あんな奴、全然怖くないから」

「同感です。多少は魔法が使えるようですが、カイの敵ではありません」


 隣に座っているアダムスがビビっている。

 未だ怪我の完治していないクラリッサやパティは部屋に待機中。今、この場にいるのはアダムス、テレーザ、ホリィのみだ。

 魔王ちゃんが部屋に入ってきた。黒マントを翻し、銀髪をなびかせるその姿は威厳があり美しくもある。その肩書にふさわしい雰囲気を出していた。


「ふ、さすがは我が好敵手ライバルの城だ。眺めていると感心してしまうぞ」


 歩いてくる魔王ちゃんは用意された席には腰掛けず、なぜか俺の隣へとやってきた。

 魔王ちゃん、近い! 


「魔王ちゃ……あ、いや、魔王さん。ちょっと近くないかな?」

「ククク、我はお前を認めているからな。少しぐらい近づいても問題はないだろう? 親交の証だと思え」

 

 いや、もうこの子ただ甘えたいだけだろう。たぶんそのためだけにここにやってきたんだと思う。

 だがそんな様子に気がつかないアダムスは、魔王が俺を殺しに来たと勘違いしているらしい。


「さすがは魔王……。常に陛下の油断を窺い、隙あらば命を取ろうとしているのですな。陛下、ご注意を」


 アダムスの勘違いぶりが妙に笑える。みんな魔王を極度に恐れすぎだろ。

 と、突然魔王ちゃん体が俺から離れた。ホリィが間に割り込んだからだ。


「先生は渡さないっ!」


 ホリィはなぜか意気込んでいる。


「私の娘が愛する陛下のために勇気を振り絞って魔王に……。うっ、成長したなホリィよ。パパは嬉しいぞ」


 アダムス、それでいいのか? あと俺は愛されてるのか? アダムス的にはそれでいいのか? 


「ククク、この小娘の親はお前か。ならばこの親を殺せば、お前を黙らせることができのるか?」

「ひっ!」


 きらり、と光る魔王の瞳に反応し、アダムスが腰を抜かした。自らが殺されると恐怖してしまったのかもしれない。


「パパ、騙されちゃダメ! こいつは先生の娘で、いい年してた父親離れしてないだけっ! 先生の許可なしに傷つけたりはしない」


 君が言うかな? そのセリフ。


「な、何を言っているのか分からない。我とパ……げふんげふん、この男が親子だと?」

「今『パパ』って言いかけたよね?」

「ち、違う。気のせいだ」

「違わないよね?」

「違うもん!」

「違わないもん!」


 魔王ちゃん、地が出てる。


「いや、君たち落ち着いてくれ。俺は重要な話をするつもりなんだから……」


 そう。

 魔王ちゃんには聞かなければならないことがあった。


「魔王。お前に聞きたいことがあったんだ」

「なんだ?」

「詳しく聞かせて欲しい。邪竜は北の方から現れるって聞いてたけど、正確にはどこなんだ? そのあたりは調べてないのか?」


 この世界を遥か昔から生きている魔王ちゃんだ。そのあたりの情報に何か詳しいかもしれない。

 この件はハワードには聞けない。奴は俺の質問に答えてくれはしそうだが、嘘をつく可能性もある。俺が本当に信用できるのは、この子だけだ。


「邪竜?」


 おっと、アダムスたちにはこの件を話していなかったな。

 俺はここにいる三人へ、邪竜の話を説明しておいた。創世神話に出てくる邪竜が存在すること、世界が一〇〇〇年おきに滅ぼされていること。


「にわかに信じられませんな」

「先生の言ってること、よくわかんない」

「邪竜というのはどういった系統の竜なのでしょうか? 二種類のブレスを使う竜など……聞いたことがないです」


 という反応。


「なるほど、『北の方』としか話をしていなかったな。我らとて復活の現場に居合わせたことはないが、その大体の場所は把握してある。世界地図はあるか?」

「少々お待ちを」


 アダムスが席を立ち、外に控えていた兵士に指示を下した。ほどなくして世界地図が持ってこられる。

 広げられた世界地図をじっと見つめる魔王ちゃん。

 

「確かこのあたりだったはずだ」


 魔王ちゃんが指さしたのは、帝都マリネの北にある大地。バージニア州と呼ばれるこの場所は、かつてのグリモア王国の領地そのものだ。

 現在は教団の管理下におかれ、一般人は立ち入り禁止となっているはずだ。

 邪竜エミーリア復活の地がかつてのグリモア王国とは、嫌なジョークだ。


 俺一人で行ってみるか?

 いや、止めよう。ハワードと戦っているとき、俺が一人で抜け出してしまったために被害が拡大してしまった。もうあんなことになってはならない。少なくとも帝都に進軍するまでは、他の兵士たちと一緒に移動するようにしよう。


「我はこれよりグランヴァール州へと戻らねばならない。会えて嬉しかったぞ」

「帰るのか……」


 そうか。

 魔王ちゃんはいなくなってしまうのか。まあ、寂しいと思っているのは俺だけなのだろうがな……。

 最後の決戦を前に、彼女に会えて嬉しかった。

 

「またいつか」


 魔王ちゃんは立ち上がり、部屋の外に出て行った。

 俺にだけ見えるようウインクして、魔王ちゃんはこの地から立ち去ったのだった。

 


 魔王ちゃんとの再会は、俺にとって予想外だった。ただ、会いたいと思っていた時に会えたのは運が良かったと思う。

 そして、もう一人俺が会いたかった人物。

 水竜王。

 何度か彼を召喚しようとゲートを開いたのだが、一向に現れる気配がない。

 召喚の魔法陣が発動はしているため、本人が死んだりとかそういうことが起きているわけではない。 

 謎だ。そもそも契約竜の召喚魔法は絶対であり、本人の意思で出現を拒むことなどできないはず。誰かに妨害されているのか、それとも竜族自身が契約召喚を拒む魔法を完成させたのか……。


 アーク神。

 水竜王。

 ローレンス皇帝。

 邪竜。

 気になることはいくつかある。しかしいずれにしろ、帝都への進軍は決定事項だ。

 俺の目的はただ一つ。

 この世界のすべてを王国領にし、祖国と……そしてエミーリア様の名誉を正すこと。

 これはエドワードから聞いた話だが、セレスティア州の遺跡には数多くの石碑が眠っていたらしい。そこには戦争に関係する記録や、敵国であるグリモア王国の概要などが書かれていたようだ。

 エドワードはその記述を気にも留めなかったらしいが、俺にとってはとても気になる内容だ。発掘された遺物を、そう、博物館のような形で民に示せば……神話に寄らない正しい歴史を示せるかもしれない。

 そしてそれは、邪竜と謗りを受けるエミーリア様の名誉回復へと繋がるはずだ。


 二週間後。

 英気を養った兵士たちを引き連れ、俺たち王国軍は帝都攻略へ向け旅立ったのだった。

 最後の戦いが始まったのだ。


読んでくださってありがとうございます。


ここで古代遺産編は終了になります。

主にハワードの話でした。

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