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転生したら祖国滅亡? ~仕方ないので建国チーレムする~  作者: うなぎ
古代遺産編

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エドワードの降伏


 俺たち、遠征軍はオールヴィ州へと帰還した。

 決して戦争で敗北したわけではないのだが、被害は甚大だった。誰もがハワードの恐るべき力を認め、その威力に恐怖していた。

 体と心、両方を休める必要があるだろう。


 俺は執務室の椅子に座った。

 不在の間、アダムス総督がよく処理してくれていたらしい。書類はかなりまとまっており、目を通すのも苦痛ではない程度だ。


「すまないな、ホリィを危険な目に合わせてしまった。親として心配だっただろう?」

「あの子は陛下の傍にいたかったはずです。怪我をしても後悔はしないはず。先ほど話をした時も、『大好きな先生が助けに来てくれて嬉しかった』と、むしろ喜んでおりまして……」


 なんと物わかりの良い発言だろう。あの孫娘にべったりのアダムスとは思えない。まるで何か下心があるように感じるのは、俺の気のせいだろうか?


「……ん」

 

 書類を流し読みしていた俺は、わずかな違和感を覚えた。


「なあ、これおかしくないか?」

「な、何の話でございましょうか?」

「ほら、ここだよここ。この俺がいない時に開かれたという貴族・富豪向けのパーティ、妙に金が……」

「味に煩い上流階級向けのパーティです。多少の出費は許容範囲内かと……」

「そういえばアダムス。お前妙に体調よさそうだよな。肌につやがあるし……」


 そう。

 ダイエットして痩せこけていたはずの彼が、ちょっとだけリバウンドしているこの状態。もう答えは明らかだろう。


「食べちゃった?」

「申し訳ございません」


 どうやら、俺がいない間に暴飲暴食を行っていた模様。

 なんだか俺がいじめている風な光景に見えるが、これは立派な政治なのである。かつて悪徳総督として圧政を敷いていたアダムスだ。ちゃんと痩せていないと周りに示しがつかないのである。


「まあ、俺が戻ってきたからにはそういうの禁止な。自分のためと思って頑張ってくれ」


 しゅんとしてうなだれるアダムス。おっさんのくせに小動物みたいな動作をしないでほしい。

 この話はこれでおしまい。


「そういえば、エドワード新皇帝はどうした? 今日話をする予定だったはずだが……」

「もうすぐこちらに」


 タイミングよく、執務室のドアが叩かれる。入ってきたのは、件のエドワードだった。


「お久しぶりです、殿下」


 アダムスがエドワードに一礼した。もともとは皇子として彼に仕えていた男だ。いろいろと思うところがあるのだろう。

 エドワードは皇帝風の衣装ではなく、どこにでもありそうなシャツとズボンを身に着けている。頭髪はきれいに整えられ、体にあった擦り傷はもう癒えている。ただ、どことなく暗い雰囲気を纏っているのは、心労からなのだろうか。

 別に人質というわけではないので、拘束もしていない。もっとも、この男のやつれ具合を見る限り、逃げ出す気力などとてもなさそうだが。


「僕は……理解していなかった」


 エドワードは小さく、しかしはっきりした声で話を始める。


「ハワードは恐るべき男だった。そして、この男にこんな力があるということを僕は知らんかった」


 まあ、分かっていればもっと早く戦争に導入してただろうな。そしてもしそんなことになっていたのなら、クラリッサ率いるツヴァイク州方面軍はボコボコにやられていただろう。

 俺は本当に運が良かったのかもしれない。


「帝国にはまだ僕の知らない秘密が隠されているかもしれない。それを無視して皇帝を名乗るなんて、それこそ馬鹿だ。この国は、力ある人間が支配して浄化される必要がある」

「俺のことを認めてくれる、という解釈でいいのか?」

「僕は君の王国を認める」


 これで、決まりだ。エドワードが物わかりのいい奴で助かった。


「セレスティア州との降伏協議はもう終わっている。ツヴァイク州に関しては、降伏の特使としてお前を派遣したい。頼まれてくれるか?」

「分かったよ。僕にできることなら……」


 どうやら、ハワードの件がだいぶ堪えているらしい。驚くほどに素直に応じてくれる。

 俺たちは今後のことを話し合った。次の出陣ではツヴァイク州に寄ってエドワードを使い降伏勧告、次いで帝都マリネへと進軍し教団を倒す。こういう流れでいいだろう。

 そして帝都を制圧したのち、精鋭を連れてバージニア州へと乗り込む。アーク神とやらと戦い、本当の意味でこの世界を解放するんだ。


「兄上」


 と、協議をしていた俺たちのもとへ第三者がやってきた。 

 パティだ。どうやら兄であるエドワードの様子が気になってここにやってきてしまったらしい。


「パティ、元気でやっているようでよかったよ」


 エドワードは安心したように微笑んだ。血のつながった兄妹としていろいろ不安に思っていたのだろう。


「ああ、兄上」

「ここでの生活はどうだい?」

「邪神殿は優しいお方だ。わ、私は今まで……少し肩を張って生き過ぎていたのかもしれない。彼は私の手を、足を、そして爪の先までを優しく撫でてくれた。『テレーザの鱗の数を数えている間に終わるよ』、と私の耳元で囁いて――」


 んん?

 何やらパティさんが意味の分からない主張をしているが、俺には何のことだかさっぱり分からない。

 ま、まあ大丈夫だろう。いずれ変な誤解も解けるさ……。

 何も聞こえない。あーあー。


読んでくださってありがとうございます。


新人賞出したい、と思ったら締め切り過ぎてた。

次出すころにはもうこの小説終わってそう……。

どうしよ……。

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