表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら祖国滅亡? ~仕方ないので建国チーレムする~  作者: うなぎ
古代遺産編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/76

転生テロ

 


 俺はハワードを倒した。

 地面に潜らせたゴーレムの超振動槍グングニルで奴を倒す。この方法が通用して助かった。この次に考えていた手は、少なからず周囲の兵士たちが犠牲になっただろうからな。

 今の俺は、無事だった兵士たちに指示を出し、応急手当を任せている。テレーザ、ホリィ、パティ、クラリッサはいずれも野外テントに運ばれ、そこで休んでいる。ここでできることは限られているから、一度はオールヴィ州のに戻った方がいいだろう。

 なぜかエドワード新皇帝も近くで倒れていたため、保護することにした。これで名実ともに、新帝国の領土は俺たちのものとなるだろう。

 無事だった兵士たちが、徐々にではあるが平静を取り戻してきた。


 さて……。


「おい」


 周囲に誰もいなくなった後、俺が話しかけたのは……破壊されたハワードの一部。

 首だ。平野の草に埋もれ、その顔は覆い隠されている。

 俺の声に反応し、ハワードは瞳を光らせた。


「くくくっ、俺に何か用事か大将軍? 首から下がなくなったこの状態、まさしく手も足も出ないといったところか。笑っていいぞ?」

「お前の冗談に付き合っている暇はない」


 ハワードは生きていた。いや、壊れていなかったというべきなのだろうか。おそらく、人間と同じように主要な演算・記憶領域が頭部に集中していたのだろう。

 もっとも、この状態で俺に反抗できるとは思えないが……。


「お前は俺が転生した後のことを知っているんだろう? 話せ。なぜ俺が災厄と呼ばれていたんだ?」

「その件か」


 どうやら、ハワードも反抗する気がないらしい。この調子なら、話を聞けるだろう。

 俺は腰を落とし、目線をハワードに近づけた。


「お前が転生するという噂が帝国内を駆け巡り、大混乱を引き起こした。猜疑心に苛まれた皇帝が、幼い子供を尋問し……時には処刑すらした話だ」

「何……」


 俺が転生した後、そんなことが起こっていたのか。転生した俺は、当然ながら子供として生まれる。俺を見つけ出すために、皇帝が子供を捕まえた?

 ……なんだ、それ?


「皇帝は馬鹿か? 俺が転生したという噂だけで、子供たちを処刑? そんな頭の悪い判断を俺のせいにされるなんて、ただの言いがかりだろ」

「ああ、そうだな。確かにそれだけで処刑をしたなら、呆れてものも言えない有様だろう」


 雨が降り注ぐ中、周囲の兵士たちは必死にけが人を運んでいる。俺の様子を気にするものもいたが、雨音にかき消されて話の内容は伝わっていないのだろう。


「最初はそう、帝国の皇族・貴族たちの子弟が所属する幼稚園の発表会だった」

「は……?」

「開式の挨拶をする皇帝陛下のもとへ、とある名門貴族の三歳児が駆け寄ってきた。そいつは懐に毒を塗ったナイフを所持していて、壇上にいる皇帝へと突き刺したのだ」


 子供が皇帝を殺そうとした?


「幼児の筋力だ。幸いにも狙いは外れ、手を少しだけ切ったレベルで済んだ。皇帝は毒によって三日三晩苦しんだが、命に別条のある容体ではなかった。そしてその悪事を働いた幼児は、自らをグリモア王国の兵士だと名乗ったのだ」

「何っ!」


 マキナマキア帝国貴族の子供が、自らをグリモア兵士だと名乗った? 意味が分からない。俺と同じく、転生を果たした身だとでもいうのか?

 転生は、俺以外にも行われていた……?


「他にも、建物に火をつけたり、料理に毒を盛ったりなど、死人が出かねない事件が転生幼児によって起こされた。最初の件と合わせて合計五件か。当時の人間は『転生テロ』と呼んで恐れていた」

 

 転生テロ。

 そんな……恐ろしいことが。


「そんな『転生テロ』が五回ほど起こった後で、大将軍カイ転生の噂が流れた。皇帝はこの件を恐れ、一~二歳児を集め、尋問することにした」

「…………俺を見つけるために?」

「そうだ。当時の人間も、まさか五千年後に転生するとは思っていなかったようだがな」


 むちゃくちゃだ。そんな年齢の子供を尋問したところで、正しく選別できるはずがない。

 だが、一度殺されかけてしまった皇帝だ。自らを狙う暗殺者の陰に怯え、正常な判断を行えなかったのかもしれない。


「尋問するといっても、相手は幼児だ。事の重大さが分かっているわけもなく、冗談で自らをカイだと名乗る者もいた。皇帝陛下はそういう子供も処刑してしまった」


 そうだったのか……。

 俺以外にも、転生者がいた。おそらくは五〇〇〇年前の大臣が絡んでいるのだろう。俺が転生したことを、より効果的に演出するための作戦。

 見事という他ない。皇帝は大臣の策にはまり、疑心暗鬼にとらわれてしまったわけか。

 むしろこの作戦なら、俺が転生を成功させない方がいいんじゃないのか? 俺が上手く転生できないことは織り込み済みだった? そもそも、転生魔法を使ったのは俺が初めてという話だったはずだ。あの男はいろいろと影で動いていたのだろう。

 過去のことをどれだけ想像しても、答え合わせはできない。そんなことよりも、今は目の前のことが大切だ。

 

「それで、お前は結局、今、何をしているんだ? 皇帝に忠誠を誓い、五〇〇〇年の間ずっと仕えてきたのか?」

「俺は帝国で廃棄処分が決定されていた。あの時点で、もはや忠義を尽くすべき相手ではないと判断している。今の俺の主はアーク神様だ」

「俺は冗談に付き合ってる暇はないんだが……。神話の話は子供にしてくれ」

「くくく……理解していないようだな。あのお方は実在の人物だ」


 何?

 いや、千年おきに世界が滅亡しているという神話が事実だったんだ。あの中に出てくるアーク神が存在していても……全く嘘とは言い切れない。


「あのお方は人ではない。俺と同じく不老不死の肉体を持って、この世界を永遠に支配している。平和と平等、崇高な理念を掲げ、教団を介して世界に働きかけている」

「……その崇高な理念を持つ神に仕えているわりに、お前はずいぶんと好戦的だったように思えるのだが……」

「許せ。俺はもともとが兵器だからな。加えて、もはやこの世界は邪竜によって滅ぼされる。今更平和に腐心したところで意味がない」

「アーク神は邪竜を倒せないのか?」

「…………」


 だんまりか。

 どうやら、今の主について不利な話題は避けているらしい。だが、これだけ情報が揃えば十分だ。

 アーク神。

 創世神話において慈愛を司るとされる善神。邪竜エミーリアの対局を成す存在であり、配下の天使たちを従えて世界を見守っているとされる。

 失われた帝国の技術や王国の魔法を駆使し、世界で暗躍する存在。この世界を歪めている元凶と見て間違えないだろう。

 敵は定まった。

 あとはそいつのところにたどりついて、倒せばいいだけだ。


読んでくださってありがとうございます。


説明ばっかりの話ですね。

あまり長くならないように注意した……つもり。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ