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転生したら祖国滅亡? ~仕方ないので建国チーレムする~  作者: うなぎ
古代遺産編

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WARNING

 ロボット、ハワードは迫りくる岩石たちを避け続けている。


 ――WARNING 高速接近物体あり。


 視界が赤く染まり、センサーが警告を発する。だが――


(遅い)

 

 ハワードはそう判断する。石が遅いのではなく、センサーの警告が遅過ぎると言っているのだ。

 高速で飛来する岩石に対し、警告が追い付かないのだ。センサーの反応だけで対応してしまうと、間に合わなくなってしまう。

 石を回避する。

 ハワードは自立稼働型の兵器である。大戦時代、幾多の戦いのデータが蓄積した結果、人間で言うところの『戦闘慣れ』したレベルまで到達している。

 身体能力以上の危機回避能力が備わっているのだ。光学レンズに映る画像を忠実に分析し、ゴーレムからの投擲軌道を演算する。

 その結果、機体のスペック以上の力を発揮し、岩石を回避することに成功している。

 止まない雨。そして飛散する砕かれた石屑によって、ハワードの視界は大きく遮られてしまう。


「……っ!」


 頭部に衝撃。

 仮面を砕かれ、、こめかみに位置するあたりがへこんでしまった。あまりの衝撃に、病人であるかのように体がふらふらと揺れている。


「これ……は……」


 ハワードは見た。己の仮面を破壊し、頭部に損傷を与えたその物体は……鉄の塊だ。人間の頭部ほどの大きさをもっている。

 炎の魔法をこれ見よがしに見せる大将軍を見て、ハワードは悟った。

 カイは近くに散乱していた武具を炎魔法によって溶かし、巨大な鉄塊を作り上げたのだ。岩石と雨による目くらましを使い、最も効果的なタイミングでこの塊を投げつけてきた。


「くくく……」


 ハワードは人ではない。ゆえに人間でいうところの『喜び』などという感情は存在しないことになっている。

 しかし、これまでずっと大将軍のことを警戒し続けていた。そしてその警戒に足る攻撃を、今、目の前で示されたのだ。

 つまり、予想が当たり、思考回路に割いた労力が無駄にならなかった。

 ハワードはこれを『喜び』と解釈している。


「素晴らしい、素晴らしいぞ大将軍! あの凄惨な大戦時代でさえ、俺の体に傷をつけることのできた魔法使いは皆無だった。お前は最強だっ! 間違えなく最強だよっ!」

「どうも」


 さして嬉しそうでもないが、カイが返答する。むろん、ハワードとて素直に喜んでもらえるとは思っていなかった。


「さて、最強を示したのだから、もう十分だろう?」


 確かに、距離を稼ぎ金属の塊を投てきし続けていれば、カイは勝利できていたかもしれない。あと十回、同じように攻撃されれば、ハワードとて無事ではいられなかっただろう。

 だが――


 一瞬でカイとの距離を詰めるハワード。

 もとより、このように近づくことはいつでもできた。あえてしなかったのは、自らの起源ルーツである大将軍の力を推し量りたかったからだ。

 だがそれは、もう十分。

 この男は強い。自分を倒せるほどではないが。

 そう結論付けた。

 ハワードは自ら手を前にかざした。無敵防御層イージスの力によって、カイの体を覆う幾多の魔法は、完全に消失してしまうだろう。

 勝利は目前だ。


「終わりだ、大将軍」

「ああ……終わりだ」

 

 カイは足で地面を叩いた。


「お前の、な」


 その、言葉。


「……っ!」


 予想外の事態に、思考回路の処理が追い付かない。

 大将軍が地面を叩くと、急に地面が隆起した。否、地中に潜んでいたゴーレムが動き出したのだ。

 ゴーレムは両手で武器を持っていた。

 超振動槍グングニル

 パティ・マキナスの持っていたその槍が、すさまじい重低音を奏でながら迫ってくる。


 これまでのカイの行動は、すべて前座に過ぎなかったのだ。

 もちろん、その前座でハワードが倒せるならそれでもよかったのだろう。しかし、彼はその先を見ていた。

 無敵防御層イージスの起動には、対象に近づくことが必要である。つまりハワードがカイを倒すためには、何らかの形で彼に近づく必要があったのだ。

 本来なら奇襲に向かない超振動槍グングニルではあるが、地中に潜らせたとなれば話は別だ。そしてカイ周辺の地中ならば、いずれはハワードが近づいてくるだろう。最強の武器による奇襲は、こうして完成したのである。 

 おそらく、ここにたどり着きパティ・マキナスの槍が放置されているのを見た瞬間に、この戦術を思いついたのだろう。

 恐るべき男だ。


(勝てないな……これは……)


 納得した。自分が生まれた意味、そしてそれでもなお勝てないという事実を。


 ――WARNING 機体の著しい破損を確認しました。


 ハワードの体は、ずたずたに引き裂かれた。左足から入った超振動槍グングニルは、そのまま下腹部から上半身に駆けて貫通した。

 ハワードの体は真っ二つになった。左肩と左腕は残っているものの、激しく損傷しているため頭部からの命令を下すことはできない。辛うじてつながっているケーブルも、表面のコーティングが剥げ内部の線が露出している。すぐに使い物にならなくなるだろう。

 もはや、戦闘行為を続けるほどの余力は……残っていなかった。


読んでくださってありがとうございます。


ハワードさん、四話前のフラグを回収。


そういえば雨が降ってるんだった・・・。

砂埃っておかしいですよね。

こそこそと前の話も修正したのでした。

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