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反乱軍リーダーの帰還



 夜、すべての人間が寝静まった、ちょうどそのころ。


「そろそろだな」


 俺、カイは痩せた畑へとやってきていた。

 もちろん、この土地問題をどうにかするためだ。

 問題になっているのは、土地の栄養と……それから水だったな。まずは――

 大地魔法レベル五によって、大地を隆起させたり削ったりしていく。これを山付近の川まで繋げて……と。

 俺が削っていった大地に、川の一部が流れ込んでいく。要するに大きな用水路を作ったのだ。周囲を隆起させているため、この水が外にあふれ出すことはないだろう。

 これで畑から一〇〇メートル程度離れた辺りに川ができたことになる。後の細かい水路は、個々人に任せることにしよう。

 これでわざわざ遠くまで水を運んでくる必要はなくなる。 


「よし、これでいいだろう」


 土地を削られ、いつの間にか家を水浸しにしていたというのでは困る。そのあたりは高低差を意識し、むやみに家が流されないように設計する。

 河川の流れは単純に水を運ぶだけではない。その水流自体が、山から栄養分を運んでくれるのだ。

 が、それは川が氾濫した後の話であり、今現在土地がやせてる分にはどうしようもない。いずれはこの新しく出た川の下流に畑を作るのがいいかもしれない。

 しかし、今畑があるのはここなのだ。それをどうにかするのが急務。


「仕方ない」


 使い魔錬成レベル八、ゴーレム生成。

 かつてテレーザ用のトイレを作ったあのゴーレム。だが今回は、生み出した数が桁違い。

 その数、一〇〇体。


「いいか、命令するぞ。あの辺の土をだな……」


 ゴーレムたちは俺の言葉に従い、良質の土を山から運んでくる。

 もともと痩せた土地に適しているジャガイモみたいな奴は、今の時点でもそれなりに育っている。こういうやつは無視だ。とりあえず、特に元気のない野菜類に適当に振りまいておく。 


「おおおお、すごいですねカイ」

「テレーザ、いたのか?」


 いつの間にやら、隣には青い髪の少女……テレーザがいた。

 ちなみに、この子の正体がドラゴンであるということは未だにばれていない。とりあえずは俺の妹という設定で反乱軍には説明している。


「カイ、私はおなかがすきました、何か夜食のようなものを作ってください」

「待ってろ」


 物質錬成レベル六、食糧生成。

 ぽん、と俺の手にミカンが出現した。


「はむっ、やっぱりカイの作るごはんは美味しいです。この砦で出された粗末な食事とは大違いです」

「それ、ほかの人の前で言うなよ」

「はーい」


 テレーザはぼーっとゴーレムたちの様子を見ていた。画一的に動く土人形たちは、彼女にとってとても珍しく興味深いもののようだ。きらきらと目を輝かせながら眺めている。


「…………」

 

 地味な作業だ。っていうかたぶんこれ、川はともかく土に関しては俺がやったってこと分からないだろう。きっと。

 集団というのは、めんどくさいものだ。

 俺なら食料水も生み出せるし、純度の高い金属も生み出せる。っていうかいい鉱床を見つけることもできるし、そもそも武器だって錬成することができる。ついでに言うなら通貨だってコピーできてしまうから、一人で過ごしている分にはなんら問題はないのだ。

 だが、土地や鍛冶職人に関してはどうにもならない面がある。通貨だけ作りまくってたらハイパーインフレまっしぐらだ。まずは農業と金銭の問題を解決し、戦争をへて領地を拡大するんだ。

 なんて、国の運営を考えてる俺だけど、まだこの組織を完全に掌握してるわけじゃないんだよな。そのあたりのプランも練っておかなければ。

 


「こ……こいつは……」


 農民たちは、新しくできた川を見て驚いていた。これで遠くまで水を運ばなくても良いのだ、その感動は並大抵でないだろう。

 もう一つ、例の土を撒いた件は一日二日で成果がでないから、今のところは何とも言えないな。


「な? 言っただろ? 正義の心が……」

「さすが俺たちの邪神様っ! 暗黒パワーで川を作るなんて、俺たちのこと考えてくれてたんだな! 嬉しいぜ!」

「え……いや、……正義の」

「邪神様あああああっ!」

「俺たちの邪神っ!」

「ああああ、邪神万歳!」


 うーん、俺の望んでいた喝采とは……少し違うような気が。

 ま、いいか。俺が感謝されてる分には変わりないんだし。


「これは……」


 と背後から誰かの声が聞こえた。旅人なのだろう、所々泥に汚れた衣服を身に着けている。


「すごいですね、この川。僕がいた時にはこんなものなったのに。一体どうやって作ったんですか?」

「あ……あんたはっ!」


 農民の一人が彼を指差した。なんだこの男は、有名人なのか?

 青年は帽子を取り、こちらに向かって一礼をした。おそらくは二十代前後の青年。短髪で、服さえ汚れていなければ清潔な印象を受けていただろう。


「初めまして、邪神さん。僕の名前はハロルドです。この反乱軍のリーダーをしてました」


 この男が……反乱軍のリーダー?

 反乱軍のリーダーを名乗る男は、俺の視線に気が付いてにっこりと笑った。


「クラリッサのところに案内してもらえますか?」


 ってことは、クラリッサのお兄さんか。こんなタイミングで……。

 ふーん。 


読んでくださってありがとうございます。


ごぶぉっ!

内政というものがなんだかよくわからない。

チャレンジしてみたが、限界を感じてしまった。

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