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ニート・オア・チート ~選んだのはニートでした~  作者: 著作権フリー作品
序章    NEET the Cheat 《芳桜院 境夜》という男     < 7scenes 異世界転移前 >
5/26

Scene3  《フローレンス》、境夜さんは《わたし》にそう名付けました。 sight of《わたし》

まえがきに代えた

設定を知るのが面倒な人向き Scene3のあらすじと注意事項


SFサイエンス・ファンタジー風です。


境夜はすごくヘンだから異世界転移した。

神様以上の《わたし》から境夜をスキスキな《フローレンス》が生まれた。

でも《フローレンス》は神様くらいの力しかない。



注意事項

 ●一般人には異世界転移などできないという夢のない設定説明になっています。

 ●神という概念についての細かい設定に興味のない方は、以下の設定は適当に読み跳ばして下さい。


 ●《わたし》は概念や現象の擬人格化した分身のような存在です。

   人間には解る事のできない何かと人間とのコミニュケーションインターフェイスです。

 ●《わたし》は言動や所作から人間が表現してしまう全ての情報を、間違いなく観察する何かです。


 ●グノーシス主義や古神道の言語を借りて表現していますが、宗教とは関係ありません。

 ●本作では‘ 宗教上の神 ’はフィクションであり存在しないものと定義しています。

 ●アイオーンやデミウルゴスは、グノーシス主義の概念として御読みください。




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Scene3

 《フローレンス》、境夜さんは《わたし》にそう名付けました。 sight ofわたし





 《フローレンス》、境夜さんは、《わたし》にそう名付けました。

 《わたし》が、そう願ったからではありません。


 《わたし》に固有名称が存在しなかったからです。

 機能的には、人間の想像物(フィクション)である‘ 神 ’と同じですが実在する存在。

 精神的には、人間《芳桜院 境夜》の理想異性(アニマ)と同じですが実存する存在。


 虚構(フィクション)の言葉を借りるなら、“ アイオーン(アレーテイア)の分御霊。 ”

 それが一番近い言葉でしょうか。

 

 あ、すみません。 境夜さんの知識から引用すると、判り難くなるようですね。

 

 無作為な次元転移を巻き起こす高次空間の穴は、特異な精神世界に引きつけられやすいので、そういった方の表現では、一般の方には判り難い表現になってしまうようです。


 言い直しますね。


 簡単にいうなら、“ 神より凄い人間には想像もできない高次元にある何かの意志に創られた分身の一つ ”みたいな感じです。


 もっとも、《わたし》にできるのは、宇宙を創ったり現象や法則や概念を創ったりするくらい。

 宇宙をデジタルゲームソフトに例えるなら、プログラマーみたいなものですから、分身などと名乗るのはおこがましいのですが──。

 

 プログラマーといってしまいましたが、もっと正確にいうのなら、プログラムをつくる意志を持つAIといったほうがいいでしょうか。


 コンピューターに接していない人向けにいうのなら、精神と物質世界では全知全能の存在とでも考えてください。



 とりあえず、《わたし》の自己紹介はこれくらいにして、境夜さんと《わたし》の出会いについて話しましょうか。


 境夜さんは、《わたし》と同種の分御霊が出会った177番めの次元転移者です。

 無数の宇宙の可能性分岐を樹木の枝分かれに例えた《宇宙樹》という概念が、数グーゴルプレックス集まっても、その可能性の中で1度起こるかどうかという無作為の次元転移を経験した者。


 それが、境夜さんでした。

 ええ、とてもとても稀な存在です。


 人間という種では初めての転移者ですね。


  神話(フィクション)の言葉を借りるなら、“ 神のアルコーン(デミウルゴス)のような物質世界のみで全知全能な存在 ”が行う《宇宙樹》の育成として選ばれたわけではない次元転移者です。


 未だ人間レベルの精神体の概念には存在しない理由で、《わたし》は境夜さんを時空凍結して、《宇宙樹》の一つに同化させることを決めたアイオーン(アレーテイア)の手段として、存在を確定しました。


 それを、出会いといっていいならばの話ですが、そうして《わたし》達は出会います。


 《わたし》は、虚構(フィクション)の言葉を借りるなら、境夜さんを自身の意志によって‘ 転生 ’させるために創造された存在なのです。


「申し訳ありません。そういうわけで、あなたを元の世界に還すことはできないのです」


 だから、《わたし》は、境夜さんなら納得する理由を口にして、境夜さんの疑念を巻き起こさない狭間の世界(とくしゅかんきょう)を創り、精神を誘導しました。


 特殊環境とはいっても精神を落ち着かせる効果があるわけではなく、多くの人間ならパニックや恐怖に冷静な判断を行えないのですが、境夜さんが完全に感情を自己制御できていたので()れた方法です。


 それは、《わたし》自身の感情を操作する事で、境夜さんの感情を巻き起こす方法での誘導でした。


 これは、人間達が普通に行っているコミニュケーション手段なので、能力的な精神干渉ではありません。


 あくまでも境夜さんの意志で、異世界に面向(おもむ)いて貰わなければなりませんので、よく多次元精神体(デミウルゴス)が、生命体を宇宙樹内の世界間を移動させる時のような精神干渉はしません。


 相手を自分の意図に従わせる性格や価値観まで変える強い精神干渉だけでなく、一定以上の恐怖を感じなくさせるような弱い精神干渉でも、人間の精神は簡単に歪んでしまうからです。


 強い精神干渉だと“ 宇宙樹という世界の可能性 ”は、広がりますが“ 高次元への可能性 ”は狭まりますし。

 弱い干渉なら“ 高次元への可能性 ”は、狭め難いですが、それでも影響は出ます。


 境夜さんは違うようですが、例え“ もともと強い機能を与えただけで容易く自分を歪めてしまう精神の持ち主 ”だったとしても、“ 精神世界という次元の可能性 ”への外部干渉は問題になります。


 それでは、“ 未だ人間の概念には存在しない理由の望み ”へと至ることができないのです。

 ですから、《わたし》が行ったのは、人が行える次元とレベルでの誘導です。


 悪意や怒りや欲望をぶつけあう強い動物的な精神の交流から、善意や喜びや愛情を通わせあう人特有の心の交流まである中で、もっとも強制力の弱い精神誘導。


 ああ、また判り難い表現になってしまいましたね。

 境夜さんの語彙から、最も正しい在り方に近いものを選ぶとそうなってしまうんです。

 《わたし》は、人間に近く創られながら、人間ではありえない存在ですから。

 

 それでは、《わたし》からの境夜さんへの精神干渉を簡単に言いなおします。


 《わたし》は、境夜さんへお願いしたのです。


 哀しみという感情とどうしようもないのだという諦めの感情と境夜さんへの誠意と愛情と同情。

 そういった境夜さんが、《わたし》に信頼と好意を持つような感情と一緒に。


 もちろん、意識的にそれを行うのでは誘導になりません。

 その精神誘導を、《わたし》自身、そのときは意識していませんでした。


 《わたし》が仕組んだものなら、境夜さんが《わたし》へ好意や信頼を向けてくれるはずがありません。

 それくらい、境夜さんは鋭いかたですので。


 ですから、そのとき境夜さんは、《わたし》の言葉を疑っていませんでしたし、確かに異世界への転移に納得していたのです。


 人間としては、極めて特異な“ 完全な自立と自律に近い精神性を得る技術 ”──俗に、自己暗示などとも言われる精神技術──を体得した境夜さんですから、それは当然の帰結(けっか)だったはずです。


 なのに、長い沈黙の後で境夜さんの口から出たのは、そんな心の動きとは切り離された言葉でした。


「……………………………………………………………………………………………………………………ボクは、名前も名乗らない相手は信用しない事にしている。なぜなら、そういった相手は自分という個性よりも、役職や目的といった個人とは別の意志優先で行動しているからだ」


 どうして、感情や信頼や納得という自分の意思を無視して、自らの意志を通せるのか?


 その答えは、境夜さん自身の長い沈思黙考と‘ 心の動きとは切り離されたその言葉 ’が示してくれました。


 それは、境夜さんが意思と意志を区別することに慣れていて、自らの意志をマニュアルとして行動するからなのでしょう。


 “ 他者ではなく自分自身が創った自由意志のマニュアル ”。

 境夜さん流の表現でなく、それを表現するのなら、それは‘信念’によって行動するということなのでしょう。


 もっとも、‘信念’という言葉は、“ 融通の利かない信仰めいた信条 ”という意味で使われる事が多いので、“ 融通無礙にケース・バイ・ケースで書き加えられる ”という意味でマニュアルという言葉を使って、正確さを心掛ける境夜さん流の表現とは別のものなのです。


 だからこそ、境夜さんは、想定外の状況に出会って、スムーズな会話より長い沈思黙考を選んだのでしょう。


 《わたし》への対応を“ 境夜さん自身が創った自由意志のマニュアル ”に書き加えたのかは、“ 境夜さんの理想異性(アニマ) ”でも予想できません。

 

 そうして、《わたし》は名がない事を正直に告げることになり、《フローレンス》、境夜さんは、《わたし》にそう名付けました。


 その事自体に、物語(フィクション)じみた呪術的な効果はありません。

 単なる呼称で精神干渉を行えるほど、人間という存在は他種存在に影響を与えられる存在などではないのですから。


 逆に、自己暗示という言葉のように、自らの言葉にすら影響を受けるほど脆弱な精神構造を持つからこそ、そういった虚構(フィクション)を創り出すのでしょう。

 

 けれど、“ 境夜さんの意志で未来を確定させるために創られたこの場 ”においては、この名を与えて受けるということは、別の意味を持つのです。


 この場所は、量子論幻想(フィクション)の言葉を借りるなら、《シュレディンガーの猫が閉じ込められた箱の中》です。


 物質世界ではあり得ない“ 存在が未確定な場 ”。

 それは、異世界に能力を与えた境夜さんを確定させるための場でした。


 それが、アイオーン(アレーテイア)の分御霊から、《フローレンス》という存在を確定させます。


 《わたし》の一部から“ 境夜さんの理想異性(アニマ) ”を抽出した人格と“ 境夜さんに好意を持った人格との共感性 ”を抽出した人格が混合され確定したのです。


 アイオーン(アレーテイア)の分御霊から更に分岐した存在。

 虚構(フィクション)の言葉を借りるなら、《御先神》や《アイオーンの天使》でしょうか。


 《フローレンス》は、こうして生まれました。


 これもアイオーン(アレーテイア)には想定内の事象なのでしょう。

 そうでなければ、この確定は起こりえなかったでしょうから。







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あとがきに代えた

次回予告




みなさん、初めまして《フローレンス》です。


境夜さんって、とっても不思議な方でした。

理想異性(アニマ)って、本来は境夜さんの一部なのです。


だから、本当は一番、境夜さんを理解できている存在のはずなのです。

なのに、境夜さんをよく知る他の方と同じくらいにしか、わたしは境夜さんを解っていないようなのです。


境夜さんは、他の方も自分の一部のようなものなのだから

それは、あたりまえのことなのだと仰います。


《芳桜院 境夜》という方は、そんな方です。



次回

Scene4  幸せよりも自由を愛しているという境夜さんの言葉に、哀しくなりました sight of 《フローレンス》


9月23日、夜7時 掲載



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