帰路
会社からの家路、遠回りをして帰ろうと思った私は、いつもは素通りする路地へと入ってみることにした。
意味なんてない、単なる思いつきの行動。
大通りから外れた小道は街灯が少ないせいか酷く暗い。あたりには住宅が立ち並び、その窓から漏れ出る光を頼りに私は歩いていた。
自宅からは対して離れてはいないはずなのに、見慣れない風景は別世界にいるような錯覚を覚えさせた。
まるで冒険をしているようだ、そう思った。
私は周囲を観察しながら、黙々と歩いていった。
このひとつひとつの明かりに、それぞれの生活、人生がある。
そう思うと、無機質なはずの文明の光が、とても尊いものに思えた。
やがて見知った道へと出た。
小さな冒険の、幕が下りたのだった。
私は少し無理をしてでも、バイクを買おうと決めた。
なぜなら、思いつきの行動でも、これほどまでに自らの心に感動を与えられるのなら。
何もやらずに、日常を効率よく進めるためにルーチンワーク化してしまうのなら。
回り道、遠回りをしてみよう。
そう思えたのだ。
暇つぶしに書きました。
皆さまもバイクに乗りましょう。