第47話
陽斗以外は、双子が壊した壁の穴から、呼び寄せた三龍に乗って下に降りた。そしてランドは北、リゼルは南東、リリィは南西の氷の塔の最上階に舞い降りる。
陽斗は小さな扉を見つけて外に出た。塔の周りに階段が螺旋状に付いている。
(何でここ手すりがないの!?)
陽斗は塔に手をつきながらゆっくりと確実に階段を上っていく。雨風で滑り落ちないように。
(下を見ちゃ駄目だ!)
そう自分に言い聞かせて、やっとの思いで天辺まで上り詰めた。そこには扉はなく、そのまま中に入れるようになっていた。
そこは本当に小さな見張り台だった。上は空。それ以外は何もない。
『ハルト、準備はいい?』
リリィの声がどこからともなく聞こえてくる。きっと周りに人がいても聞こえない。エアイヤホンをしているような感じだ。
陽斗は昨日よりまた少し大きくなったライトを肩から降ろす。もう掌には乗らないサイズになっていた。
そんなドラゴンを見ながら、陽斗は思い出す。ライトに会った日のこと、これまで一緒に過ごしてきた日々のことを。胸の奥がきゅうっと締め付けられる。
(ライト、ごめんな……。本当は別れたくないけど……!)
陽斗は心の奥底の本心を声にすることはせず、意を決したようにライトに真っ直ぐ視線を合わせた。
「今までありがとう。おれ、ライトのこと大好きだよ。絶対忘れないからな!」
陽斗はライトを引き寄せ頬ずりした。瞳から零れ落ちた涙がライトを濡らす。白銀に輝くドラゴンは、より一層その輝きを増した。
(大丈夫!)
陽斗は魔法を発動し、リリィたちに声が届くようなイメージを浮かべて念じた。
『じゃあ、いくわよ!』
ランド、リゼル、リリィはそれぞれの三龍に魔法を唱えた。三国に伝わるロッドからしか生み出されない、ドラゴンの力を増強させる、未だ嘗て誰も使ったことのない秘伝魔法。三人の魔法に氷の塔が反応し、彼らのいる場所を虹色の光が繋ぎ、三角形を描く。そして三人の塔から中心、陽斗の元へ光が注がれた。
ランドの魔法を帯びた霆龍に直後、見たこともない大きな雷が轟音と共に直撃した。雷の全ての力をため込むように霆龍はその激しさに耐え、そして体は黄金を纏った。
リゼルが煌龍に魔法を唱えると、世界の全ての炎が一瞬にして消えた。世界中の炎の力を全て結集させ、暗闇の中でもはっきりと分かるくらい鱗が紅く輝く。
リリィのロッドから放たれた魔法を纏った水龍は一度荒れ狂う海の中へ潜った。それからすぐに勢いよく空に舞い上がる。水龍には水のベールが纏われていた。
陽斗の元にいたライトは、自分の役目を認識しているかのように、自然に陽斗の元を離れた。ライトは最後にキャッキャッと鳴いて陽斗の額に自分の頭を擦りつけてから、天高く昇って行った。そして、ある一定の高さまで行くと、体を丸め、球体を形作る。
三龍は物凄い速さで天に昇り、白銀の光目がけて自身の持てる限りの力で、雷を、炎を、水を口から吐き出した。
「さようなら、ライト……!」
陽斗はセルフォードを天に掲げ、自分の全魔力を注ぎ込んだ。陽斗の魔力はセルフォードを通して虹色の光となり、それは真っ直ぐにライトへ向かった。
陽斗から放たれた虹色の光を取り巻くように、雷、炎、水が入り混じり、それはやがて一つの閃光となってライトに到達する。
真っ白な光が破裂するように一気に世界に広がった。眩しすぎて、誰も目を開けていることはできない。風も強く、立っているのがやっとだ。
突風が止み、暫くしてゆっくりと瞳を開く。そこには澄み渡る青い空、眩しい太陽、穏やかな海が広がっていた。
陽斗はすぐに上空を見上げた。
「ライト……」
そこにライトの姿はなかった。雲一つない蒼穹があるだけ。陽斗の涙が再び頬を伝う。
「ありがとう……!」
陽斗は涙を拭い、空に向かって微笑んだ。




