第45話
「今度こそ!」
ルイが呟く。彼女は目を細め、リゼルがいた場所を凝視した。壁が破壊され、外から強い雨風が吹き込む。そこには、人の姿はなかった。
ルイはそれを見て満足げに笑おうとしたが、すぐにそれを止めて左に振り向いた。
「君たち確かに速いけど、オレの方がもっと速いよ!」
ランドがリゼルを抱え、ニカッと笑って見せる。
「ランド、助かった」
ランドとリゼルがお互いの右腕を交差させる。
その後、倒れた騎士団二人もランドが素早い動きで螺旋階段付近に運んだ。
「ちょろちょろと……!」
ルイの怒りに反応するように、彼女の魔力が増す。魔法陣の光が更に眩くなる。
「ケイ、行くよ!」
「うん!」
「じゃあ、俺も!」
ルイ、ケイ、諸星の三人は背後を取られないように、壁を背に付けた。双子は再び空中に舞い、ロッドから尖った氷のようなものを瞬時に幾つも生み出し、それを広い範囲に雨のように降らせる。諸星からは黒く光る稲妻が無秩序に放たれ、攻撃パターンが全く読めない状態を作り上げられてしまった。
陽斗とランドは空間魔法のお陰で避けることはできたが、リリィは精霊魔法で身を守るのが精一杯、リゼルは召喚したスザリアの炎で飛んできた双子の攻撃を燃やし尽くし、稲妻は自身の防御魔法で防いでいた。だが、それも長く持ちそうにない。
(この状況はヤバいな……)
陽斗は攻撃をやっとの思いでかわしながら打開策を考えていた。
(諸星も双子も背後を取れない。それどころか、自分の背後以外全ての空間が攻撃範囲になっている。更に双子は空中。この間みたいに空間魔法で彼らを黙らせることはできない。…………あ!)
陽斗は一つの策を思いつき、ランドとの接触を図ろうと攻撃の合間を縫って近づく。
陽斗は魔法も使って何とかランドの隣につけ、意向を伝えると彼は微笑んだ。
「なるほど! それでいこう!」
陽斗は頷いて、左後方いたリリィの横に移動した。ランドは素早くリゼルを抱え、彼を右後方へ移動させる。リゼルはランドに何かを言われ、すぐにスザリアの召喚を解いた。
「ライト、お前なら間を縫って諸星たちの元へ行けるよな? 諸星と双子の動きを一瞬だけ止めてくれ!」
陽斗の声に反応し、ライトは翼をパタつかせて、素早く軽い身のこなしで二人の元へ飛んで行った。
ライトが諸星の近くに到着。そして、彼の手の甲の辺りに一気に火を噴いた。
「あっつ!」
諸星が悲鳴を上げる。手からロッドが床に落ちる。
「え!?」
双子は彼の声に気を取られ、一瞬攻撃を止めてしまった。
「今だ!!」
陽斗とランドは穴の開いた壁の横に背を付け、左にいる陽斗は右側、右にいるランドは左側を向いて、ロッドを構えた。
「行くぞ――――っ!!」
陽斗とランドの魔法陣が同時に眩い光を放った。ロッドとセルフォードの先から百度くらいの範囲で灰色の煙が出現しする。それはやがて雲となり、その雲はその範囲全てに大きな雷を落とした。目を開けていられないほど眩しい金色に辺りが染まった。
激しい雷撃の後、暫くして煙が晴れてきた。二人の攻撃が降り注いだ範囲は床が全て抜けている。細かな破片はぼろぼろと重力に引き寄せられて落ちていった。
諸星、ケイ、ルイ、ディノスの四人を攻撃範囲から外していたため、全員無事だった。だが、彼らの戦意を喪失させるにはそれで充分だった。陽斗とランドの魔法の威力の前に、双子も目を見開き、だらんと垂れ下がった手には力なくロッドが握られていた。
それを見て、陽斗は魔法が成功したことに胸を撫で下ろす。
(良かったー。リゼルとリリィにランドがどんな魔法使っているのか聞いて練習しておいて)
ライトが陽斗の方へ戻ってきて、肩に留まった。
「ありがとな!」
陽斗がライトの顎を撫でてやると、嬉しそうに鼻を鳴らした。
「おい! 天井が抜けるなんてびっくりすんじゃねーかよ!」
螺旋階段から騒がしい声が聞こえ、全員の視線が自然と注がれる。そこから姿を現したのは、日下部だった。




