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Another World  作者:
第八章 希望のドラゴン
44/51

第44話

 翌朝、リリィが体温を保つ魔法をかけてくれ、八人はランドの呼び寄せた霆龍とリゼルの呼び寄せた煌龍に乗って刑魔所を目指した。霆龍は黄金に輝く鱗を持ち、分厚い雲の上から下りてきた。


 ドラゴンの飛ぶスピードは速く、ライレーンからでも数時間で刑魔所に辿り着いた。


 刑魔所の北の塔の前で二龍から降りた。息は真っ白。魔法のお陰で寒さを感じることはなかったが、全てが氷でできあがるこの島を見て、陽斗たちは何となく腕を摩る。


 煌龍から降り立ち、リリィはすぐに目を見張った。


「騎士団が倒れている……?」


 奈瀬がリリィの隣で、制服を着て倒れている男性二人を見つめた。


「騎士団って?」


「騎士団は、ここ刑魔所の監視を命じられている団体で、エスディアから直接命令を受けている聖なる職業なの。罪人の監視ということもあって、騎士団に入れるのは優秀な魔法使いだけなの。それなのに、どうしてその騎士団がここで倒れている……? 中できっと何かが起こっているんだわ!」


 リリィはリゼルを一瞥し、二人は急いで刑魔所の中へ入って行った。


「フカミたちは危ないからそこで待ってて! カルマはみんなをお願い!」


 カルマはランドに言われ、力強く頷いた。


「ハルトも行くぞ!」


 ランドが振り向きざまにそう言って、リリィとリゼルの後を追う。陽斗も急いで追いかけた。


 カルマ、深海、奈瀬、日下部がその場に残される。


「……何かああやって魔法使いと一緒に戦いに行く月橋くんを見ると、やっぱりここに残されているわたしたちとは違う、遠い世界の人なんだなーって思っちゃうね」


 奈瀬が刑魔所の扉を見つめる。


「……そうだな。だが、月橋は月橋だ。奈瀬さんの知らない月橋じゃない」

 奈瀬は深海を見て微笑した。




 四人は刑魔所の中へ進んだ。刑魔所内は広く、天井は中央にいくほど高くなっていた。壁伝いに螺旋階段が張り巡らされ、それは天辺まで続いているように見える。


 四人は螺旋階段を駆け上った。


 地上階は単純にホールになっていて、二階くらいの位置から罪人が収容されている部屋が螺旋階段沿いにあった。部屋の近くを通ると、中の罪人が手を出してくることもあった。それぞれの階には螺旋階段に一部接しているフロアがあり、通常ならそこに騎士団が待機している。だが、二階に行っても三階に行っても騎士団は傷を負って倒れているだけだった。


「どうなっているの!?」


 ロッドを片手に階段を駆け上がり続けながら、リリィが言葉を漏らす。


 何段階段を上ったか分からない。そんな時、上の方から声が聞こえてきた。最初は反響していて聞き取れなかったが、近づくにつれ声がクリアになる。


「ディノスさん! いたら返事して下さい!」


 陽斗とリゼル、リリィはお互い顔を見つめ、それからリゼルは上を見上げた。


「やろう……! ここで会ったが百年目!」


 リゼルは駆け上がるスピードを上げて、上へ向かった。


「あんなにやる気満々のリゼル、初めて見たな……。一体、さっきの声の主誰なんだ?」


 階段を上り続けながら、ランドが興味津々に訊ねる。陽斗は彼を一瞥して答えた。


「諸星雄吾だよ。ダークウォーツの適合者で、エスディアを混乱に陥れた奴だ。仲間を助けに来たんだ!」


「なるほど……。噂のモロボシと初対面ってわけだな! どんな強者か楽しみだな!」


 ランドも駆け上がるスピードを加速させた。


 息を切って階段を上り切り、最上階のフロアにやって来た。ちょうど、騎士団がケイとルイにやられてしまったところだった。


 そこには諸星、ケイ、ルイ、そして既に解放されたディノスが立っていた。


 リリィが倒れている騎士団に目を向ける。


「こいつら意外と弱かったよ」


 ルイが鼻で笑う。


「SランクとかAランクとか言ってるけど、もうちょっと手応えあるかと思ったよ。何人かは手こずったけど、この程度さ」


 今度はケイが自分の傷口を見せて嘲笑する。


「ケイ、そこは言わなくていいから」


 ルイがケイの耳元で囁く。


「というか、また君たちか。しつこいね。……あれ? ライレーンの王子様が二人?」


 諸星が陽斗とランドを交互に見つめる。


「お前に説明することなどない! 勝手に罪人を解放していいと思っているのか?」


「罪人……?」


 リゼルの言葉に諸星はふっと笑った。


「ディノスさんが罪人? 笑わせるな! 罪人はお前たちの方だろ!」


 諸星はダークウォーツとは違う、新しい黒のロッドを手に力を一気に解放した。彼の黒い魔法陣から強い風が巻き起こる。


「イルート人の話、聞いたわ!」


 リリィが相手にも聞こえるように大声で叫ぶ。


「確かに私たちは事実を隠蔽しようとした。イルート人を殲滅したのも本当。だけど、一つあなたたちが勘違いしていることがあるの!」


「勘違い……?」


 ディノスは眉を顰めた。


「事の始まりはイルート人がエスディアの村を襲ったことなの! それで復讐のためにエスディアの若者がイルート人を襲った! 今度はイルート人がエスディアを襲い……、その繰り返しだったの! それを止めるために、イルート人を虐殺した。国が取った行動は決して正しいとは言えない! だから、これからは三国を治めていく者として、過ちを認め、罪を償っていこうと思うの!」


「…………嘘だ!」


 ディノスは叫んだ。


「嘘だ! イルート人は神の御加護を受けた民族だと言われているだけで妬まれ、それで皆殺しにされたんだ! イルート人は他族を襲うような、そんな野蛮な真似はしない!」


「……残念ながら本当だ」


 リゼルが冷たく言い放った。彼の言葉がディノスの耳にこだまする。彼は力が抜けたようにその場に跪いた。


「……だからって罪もない人たちまで殺していい理由にはならない! お父さんとお母さんを返してよ!」


 ルイの頬には涙が伝う。彼女はケイと天馬の杖を重ね合わせた。ピンク色の魔法陣が発動する。


「ちっ……」


 リゼルは舌打ちをして、魔法を解放した。だが、双子はリゼルが魔獣を召喚するよりも前に飛び上がり、彼に襲いかかる。


「速い……!?」


 リゼルはすぐさまその場から飛び退いたが間に合わない。


 二つのロッドから放たれた鮮やかなピンク色の光がリゼルに直撃する。轟音と共に、灰色の煙が辺りを包んだ。

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