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Another World  作者:
第七章 真相解明
40/51

第40話

 ここ数日、雨が降り続いていた。太陽は日の目を見せることもなく、空は厚い雲に覆われている。


 カルマの家で真実を皆に話してから数日が経ち、ゴールデンウィークに入る前日、奈瀬とランドが朝教室に揃うと、待ち構えていたといわんばかりの勢いで深海が二人に顔を近づけた。


「向こうの世界に行けるぞ!」


「…………えっ!?」


 ランドと奈瀬が顔を見合わせる。


「月橋くんから連絡が来たの?」


「いや、まだだ」


「じゃあ、何で?」


「最近、休館日以外は毎日国立国会図書館に足を運んでいたんだ。そこで『最後の黙示録の最後』という本を見つけた」


「『最後の黙示録の最後』?」


 深海は首肯した。興奮した深海に、奈瀬は顔を顰める。


「……というかその前に、何で深海くん国立国会図書館に入れるの? あそこって十八歳以上しか入れないんじゃなかったっけ?」


「父親にお願いした。秘書が同行して、特別に入れてもらった」


「さすがね……」


 奈瀬はお手上げといった具合に軽く息を吐いた。


「で!? それには何て書いてあったんだ!?」


 ランドが席から立ち上がり、深海を見つめる。


「『最後の黙示録』を書いた後、筆者はこの世界にやって来た。戻る方法は分からず、この世界で残りの人生を過ごした。この世界に来て、向こうの世界にいた時にはなかった自分の魔力を感じ、得意の占いをしたそうだ。それで『最後の黙示録』の内容では終わらないことを知った」


 ここまででホームルームが始まってしまったので、続きはお昼の時間になった。


 昼。いつも通り混んで騒然となっている食堂で、三人は何とか席を見つけて椅子に腰を下ろした。


「さっきの話の続きだが、向こうの世界に闇が広がったせいで、空間が歪み、向こうの世界とこっちの世界を自由に行き来できるようになっているらしい」


「それって誰かと入れ替わらなくてもいいってこと!?」


 奈瀬の言葉に深海が力強く頷く。


「闇の杖――ダークウォーツと言うらしいが、それが存在する以上、世界に闇が訪れる可能性を考慮し、神は何か策を講じているらしい。闇の中に、光を象徴するような何かが生まれ、三国に伝わる三頭のドラゴンと三つの杖、そしてエスディアの初代王より賜りし魔法剣セルフォードを使って、その何かを世界の中心で解き放つらしい。その何かはそこで消滅するが、代わりに世界に再び光が戻るそうだ」


 深海の話を真剣に聞き、ランドが難しい顔をして口を開いた。


「その光を象徴する何かっていうのは分からないけど、あとは大体分かる。オレの世界はエスディアを中心にライレーン、ジュラルデン、リヴァレルという三国があって。その三国には古より三頭のドラゴンを与えられているんだ。ライレーンには霆龍、ジュラルデンは煌龍、リヴァレルは水龍。三国の杖っていうのは、三国の王子王女が代々受け継ぐ、各々の国を象徴するロッドのことだ。オレが持ってるのは、ライレーンの王子に代々与えられるロッド。セルフォードっていうのは、ライレーンがエスディア初代王より賜った魔法剣。世界の中心っていうから、エスディアの中心で光の何かを解放すればいいんだと思う。だけど、ここで問題が一つ。オレのロッドはオレしか使えない。でも、セルフォードの適合者もオレしかいない……」


 ランドが更に表情を険しくして腕を組む。だが一方、今の話を聞いて納得の表情を浮かべたのは深海だ。


「だからか……」


 彼の発言に、ランドは眉を顰め、説明を求める。


「実は……、そうなる時に合わせ、神は四人の逸材を同時に世界に生み出しているんだ。三国の王子王女として」


 ランドは理解できないといったように首を傾げた。深海は一拍置いて、言い放つ。


「ライレーンの王子は双子だったんだ……!」


「―――――っ!?」


 ランドは声にならない叫びを上げた。


「それってもしかして……」


 奈瀬の信じられないといった声色に深海はゆっくりと頷いた。


「恐らくランドと月橋は双子だ」


 騒々しい食堂で、三人の空間だけに沈黙が降りる。


「オレが双子……?」


 ランドは食べることも忘れ、そう呟いた。喉の奥から漏れ出た声は吐息と交じり、最後の方は霧散していた。過去を必死に思い出し、ランドは両拳を強く握る。


「で、でも、オレは気づいた時から一人だったし、そんな話聞いたことない!」


「それは当然だ」


 深海は静かに言い放った。


「本によると、昔双子は忌み嫌うべきものだったらしい。しかも一国の王子が双子とあれば、それをよく思わない人もいる。それに世継ぎの問題も出てくる。だから、月橋はこの世界に連れてこられた。何者かによって」


「……それじゃあ月橋くんは元々向こうの世界の人間だったってこと?」


「ああ」


 深海はそう言ってから付け足した。


「また、逆もある。こっちの世界から向こうの世界に行った人もいるということだ。全く魔法の使えない人間が向こうへ行き、子孫を残したとしたら、魔法をあまり使えない子供が生まれるかもしれない。カルマさんは、魔法は才能だと言っていたが、俺はそれだけではないと思っている。神が魔法で成り立つ世界を創ったとすれば、そんなに極端に魔法が使えない人間を創るはずがない。だが、実際にほとんど魔法を使えないカルマさんが存在する。これは俺の推測だが、カルマさんの先祖の誰かはこっちの世界の人間だったのではないか、と思う」


「……じゃあ、カルマさんは本来こっちにいるべき人ってこと?」


 肯定の返事がくると予想していた奈瀬の期待を裏切り、深海はかぶりを振った。


「いや、そこは断言できない。何せ、先祖の半分以上は向こうの世界の人間だ。それに向こうの世界でずっと過ごしてきている。月橋もカルマも自分が生きる世界を選ぶのは彼ら自身の選択だ」


 ランドは俯いていた顔を深海に向けた。


「……ツキハシのお母さん、ツキハシが向こうの人間だって知ってるってこと?」


「それは分からない。月橋がこの世界に連れてこられ、どこかに捨てられていたのをお母さんが偶々拾って育てたのかもしれない。魔法使いの子供だと知っていたかどうかは分からない」


「そっか……」


 様々な感情が混在しているランド。その様子を汲み取ったのか、奈瀬がパンッと手を叩いた。


「今日学校終わったらゴールデンウィークだし、放課後美竹公園に行ってみよ! 今なら向こうの世界に行けるでしょ? 支度整えて、六時に美竹公園に集合で! 突然消えたらみんな心配するから、連絡はしてね」


 奈瀬はそう言ってウィンクした。

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