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Another World  作者:
第七章 真相解明
37/51

第37話

 三人は汐留にやってきた。今夜ここにあるテレビ局でカルマが出るテレビの収録があるらしい。


「冴歌!」


 首からデジタル一眼レフカメラを提げ、くたびれたベージュのトレンチコートを羽織ったおじさんが手を振って走って来る。


「やあ! 君たち冴歌の学校のお友達だね。いつも娘がお世話になってます。奈瀬洋一です」


 洋一はにこっと笑って見せた。深海とランドも挨拶をする。


「パパ、早速だけど、カルマが本当の魔法使いだと思った証拠を見せて」


「ああ!」


 洋一は娘に急かされて、カメラのスイッチを入れた。そして、その中にある写真を三人に向ける。


「これは……!」


 カルマの下には、彼を中心にライトグリーンの魔法陣。光を放ち、辺りを眩く照らしている。


「驚くのはまだ早いぞ」


 洋一はその次の写真を見せた。


「これって……!」


 カルマがマンションの隣にある花壇に向かって、杖から水を噴射していた。


「な、驚いただろ? テレビに出ている時、カルマは大きな囲み机の前でしかマジックを行わない。それは、この光る魔法陣を観客に見られないためだったんだよ。照明はカルマに注ぎ込まれているし、光もカモフラージュできる!」


 三人の驚いた顔を見て、洋一は満足そうに頷いた。


(このカルマって人、間違いなくオレの世界の人だ!)


 ランドは杖や魔法陣を見て、そう確信した。そして、深海と冴歌を見て深く頷いて見せた。


「お父さん、カルマに会うことってできるんでしょうか?」


 深海が洋一に尋ねる。


「できると思うぞ。テレビ局から出てきた時とか。だが、やっぱり一番いいのはカルマの家で張ることだな。一番素に戻ってる。彼が今回のように気を緩めるのも、仕事場では有り得ない」


「ということは、テレビ局から出てきた時では時間も取れないし、魔法使いかどうか叫んで聞いてみたら家の近くでも警戒する。つまり、カルマの自宅を張った方がいいわけですね?」


「そういうことだ!」


 洋一が深海の肩に手を掛ける。


「因みに、カルマの予定だが、今日は恐らく家に帰らない。明日の朝張った方がいい」


「じゃあ、今日は帰って、明日の朝カルマの家付近に集合する」


 深海は洋一からカルマの自宅を聞いた。彼の住まいは先ほどの写真に写っていたマンションで、マネージャーと同じ部屋に住んでいるそうだ。


 三人が駅に向かおうとすると、洋一は汐留ラーメンを奢ると言って引き留めた。特に急ぎの用事があるわけでもなく、三人は彼と共にラーメン屋へ向かった。


 四人はお店に入り、少し並んでからカウンター席に腰掛ける。


「あ、カルマの件は内緒で頼むぞ? おじさんがあの写真と共に雑誌に掲載するんだからな」


 汐留ラーメンをすすりながら、洋一が言う。だが、それを娘がすぐに止めた。


「パパ、そのことなんだけど、カルマの件を掲載するの、もうちょっと待ってくれない?」


 洋一は娘の発言に首を傾げる。


「どうした、冴歌? いつもなら凄いって言って、ノリノリなのに。カルマに何かあるのか?」


「いや、そういうわけじゃないんだけど……。とにかく待って。ね? お願い!」


 冴歌は右に座る洋一に手を合わせた。


「……冴歌がそこまで言うなら。だけど、理由は教えてくれないと」


 洋一の言葉に、冴歌はふっと笑った。


「もうちょっと待ってれば、もっと凄い記事が書けると思うんだよね」


 冴歌のこの笑みを見た時、深海とランドは背筋に何か冷たいものが走ったような気がした。



 翌日、三人と洋一はカルマのマンション前の木の陰に隠れていた。マンションの前、道路を隔てた向こうには木が等間隔で植えられており、その先には川が流れている。


「ごめんね、パパまで付いてきちゃって」


 冴歌は真剣に辺りを見回す父親を後目に、深海に小声でそう伝える。


「予想はしていた。仕方ない」


 深海は一言そう言って、冴歌を横目で見やる。


「……とかいいつつ、奈瀬さんもこれを予想してたんじゃない? それで今よりももっといい記事が書けるとお父さんに言った」


 冴歌は口角を片方だけ吊り上げた。


「まさか。深海くんてば、意外と想像力豊かなんだね」


 冴歌の白々しい台詞に深海は嘆息する。直後、誰かに見られているような気がして、深海はすぐにその方向に目をやった。だが、誰もいない。


「……どうしたの?」


 冴歌に言われて、視線を元に戻した。


「……いや、何でもない」


(気のせいか……。俺やっぱり疲れてるな……)


 深海は手を額に当て、深く溜息をついた。


 その横で、ランドは通りすがる散歩中の犬を構おうとして何回も吠えられ、ショックを受けているようだった。

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