第35話
数日経ったある夜、ライレーンの地でいつものようにテントを張って横になっていた。すると、外が白っぽく光るのをテントの中から捉えて、陽斗は目を凝らした。
(闇に支配された今の世界に光……?)
リゼルとリリィは既に寝ているようだった。陽斗はローブを羽織り、フードを深々と被って、彼らを起こさないように静かに外へ出る。
雨が降っていて分かりにくいが、確かに鈍い光があった。陽斗はびしょ濡れになりながら、その場に近づく。
(……木の中?)
光はとある幹の太い木の大きな裂け目の間から漏れていた。他の草木は枯れていたが、その木は他よりも進行が遅いようだった。
陽斗はゆっくりと近づき、中を覗き、目を見開いた。
(――――――!! 何だこれ!?)
陽斗の目の前には白銀に光る小さなドラゴンが眠っていた。
(ドラゴン!? これってどうすれば……? そっとしておくべきか?)
陽斗はあれこれ考えながら暫くそこに突っ立っていた。
(一先ず、この裂け目から雨が入らないように葉か何かで覆おう)
激しい雨で太い裂け目には雨が入り込んで、ドラゴンに当たってしまっていた。陽斗の目には寒くて体を丸めているように映った。
近くの木からまだ完全には枯れていない大きめの葉を千切って覆おうとした。だが、葉の大きさが足りなかった。仕方なく、陽斗は葉をドラゴンに優しくかけてやって、それからテントに戻った。
翌日、三人は再びライレーンのあの小屋を目指して旅立とうとした。その前に、陽斗は気になって昨日のドラゴンがいた裂け目を覗いたが、陽斗が置いてやった葉があるだけだった。
(どっか行っちゃったんだな……)
陽斗がフェリアに乗っていざ出発しようとしたその時、何かが頭の上に止まった。
(え、何!? なんかちょっと重い……)
「ハルト、行くぞ……っておい! お前!」
リゼルが驚いた顔で陽斗を見つめる。リリィもそれに釣られてハルトを見て悲鳴に近い高い声を上げた。
陽斗は頭に手を当てようとした瞬間、急に軽くなった。不思議に思っていると、視界を白い何かが横切った。その〝何か〟に焦点を当てる。そして、思わず大声を上げた。
「君は昨日の!」
陽斗が見た小さなドラゴン。手の平サイズのそのドラゴンはフェリアの頭に乗り、陽斗の方を向いた。
リゼルとリリィはティルから降りて、ドラゴンに近づく。彼らはドラゴンをまじまじと見つめた。
「ドラゴンは三国に一頭ずつしかいないはずなのに……」
信じられないといった顔でリゼルが言葉を漏らす。
「『昨日の』って、このドラゴンどこかで見つけたの?」
リリィの質問に、陽斗は昨日の話を二人に聞かせた。
簡単な説明が聞き終わり、リリィがドラゴンを優しく撫でる。
「もしかしてあなたハルトのこと好きになったんじゃない?」
彼女の言葉に小さなドラゴンは、可愛い鳴き声を上げた。
「そうみたいよ」
リリィが微笑む。
「どうして四頭目のドラゴンが現れたのかは分からないけれど、ハルトに懐いているようだし、一緒に連れて行きましょう?」
ドラゴンは陽斗を円らな瞳で見つめている。
「うん!」
陽斗は無性に嬉しくなった。自分に懐く、小さくて白銀の光を放つドラゴン。この闇を救う一縷の光のように感じた。
「よし、決めた! お前の名前はライト! よろしくな、ライト!」
ライトは嬉しそうにキャッキャッと声を上げた。




