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Another World  作者:
第四章 その先にあるのは
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第19話

 三日目のお昼を過ぎた頃、三人は森を抜けて海に出た。日光が反射して、きらきらしている。辺りには誰もいなかった。


「ここがライレーンの最南端ね」


 リリィはティルからすとんと降り立つ。それから彼女は自分のポーチの中に手を入れた。出て来たのは淡い水色をした艶のある横笛。陽斗が王から預かった霆龍の笛に似ている。


「もしかしてそれ、水龍の笛?」


 リリィが首肯する。リゼルはティルを戻し、フェリアへ目を移す。


「リリィ、フェリアをどうする? 水龍に乗せられるか?」


「どうかしら……? ランドがいれば空間魔法でフェリアを連れて行くことができるけれど」


 リリィとリゼルの二人は陽斗を見据える。


「え……、あの、まだコントロールもマスターしていないし、できるわけ……」


 陽斗は自然と上目づかいになる瞳を二人へ向ける。だが、彼らの表情に変化は見られない。


「……あ、でもやってみればできるかも? コントロールの方は、昨日あとちょっとってリゼル言ってくれたし……?」


 陽斗は弱弱しく息を吐いてから、エネルギーをコントロールするイメージをして、ロッドに手を掛けた。目をきつく瞑る。


 辺りがシンと静まり返る。


「……あれ? 魔法陣が現れない……?」


 陽斗は恐る恐る瞼を持ち上げる。


「やればできるじゃないか」


 リゼルが感心したように陽斗の肩に手を乗せる。


「良かったわね」


 リゼルとリリィが褒めてくれたその直後、ロッドから眩い光と魔法陣が飛び出した。巻風が起こる。


「気を抜くな」

「う、うん」


 陽斗は放出されている魔法を体内に留めるようなイメージをする。すると、光と魔法陣はロッドに吸い込まれ、ただの美しい棒になった。


(……それにしても、おれが魔法使いかぁ)


 陽斗の顔が弛緩する。


 にやけていた陽斗は、リゼルとリリィが自分を横目でじっと見つめているのに気付き、キッと顔を引き締めた。


「……で、空間魔法とやらはどうすればいいの?」


 陽斗は一度咳払いしてから、二人に向き直る。リリィが口元に手を当ててくすっと笑う。少し恥ずかしい。


「わたしも詳しくは知らないのだけれど、一度通った道を辿るイメージをするそうよ」


 リゼルがリリィより一歩前に出る。


「つまり、一度エスディアの大陸に着いてから、通ってきた道をフェリアも同じように通るイメージをするんだ。すると、フェリアもエスディアの大陸に来られるというわけだ」


(何だか難しいな……)


「二人ともSAランクの魔法使いなんだよね? だったら、ランドみたいに得意じゃないにしろ、空間魔法使えるんじゃないの?」


 陽斗の言葉にリリィが首を横に振った。


「空間魔法は習得が非常に難しい魔法なの。わたしたちも凄く簡単な、例えば右にあったものを左に移すような、それくらいの魔法なら使えるわ。だけど、目に見えないほど遠くのものを移動させたりできるランドと同じようには無理ね」


 彼女はフェリアの横に立ち、背中を優しく撫でる。フェリアは白く艶やかな尾を揺らしながら、嬉しそうに鼻を鳴らした。


「そもそも魔法使いは全ての魔法を使えるわけではなく、専門分野があるんだ。そして大抵はそれで評価される。俺はSランク召喚魔導士、リリィはSランク精霊魔導士、といった具合だ。勿論総合評価もされるが、あまり重要視されない」


「そうなんだ……」


 陽斗がこの世界の知識を吸収していく。


「俺たちが先にエスディアの大陸に行き、それまでフェリアには待っていてもらう。空間魔法が成功すれば、フェリアも一緒に来れる。もし駄目なら、俺かリリィがフェリアにテレパシーを送り、ライレーン城まで戻ってもらう。それでいいな?」


 陽斗は首肯する。


 リリィはフェリアの正面に回り、頬を優しく撫でた。


「安心して。水龍はとても速いの。すぐにテレパシーを送るから、それまで大人しく待っていてね」


 彼女はそう言ってから左手に持っていた水龍の笛を吹き始めた。すると間もなくして、目の前の美しい海の中から、それ以上に美しいドラゴンが姿を現した。


 陽斗は息を呑む。姿、大きさ、優雅な気品、それら全てに圧倒され、目が釘付けになった。


「ハルト、何をボーっとしている。さっさと行くぞ」


 リリィの後ろで水龍に跨ったリゼルが声をかける。


「う、うん」


 陽斗はフェリアに暫しの別れの挨拶をしてから、リゼルに続いた。水龍の鱗は大きく、水に濡れたような艶を放っていた。


「じゃあ、出発するわよ」


 リリィの言葉に反応するように、水龍は海に身を沈め始めた。


「え!? ちょ、ちょっと!」


 徐々に沈んでいく自分の体に、陽斗は慌てて大きく息を吸い込み、きつく目を閉じた。

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