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Another World  作者:
第三章 帰還方法の検証
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第14話

「まずこのローブ脱いで! 目立つから!」


 奈瀬が傘をランドにさしながら、彼から黒いローブを剥がす。


「ちょっと! 何すんだよ! 寒いだろ!!」


 身包みを剥がすと、中は白いワイシャツに黒く細い紐リボンが結ばれていた。下は黒いズボン、先の尖った黒いブーツ。腰には、杖らしきものが刺さっている。その杖は透き通る黄色を基調として、杖の中にライトグリーンの線が縦横無尽に駆け巡り浮かび上がる。上には三つの立方体が大きい順にダイヤ型に積み上げられ、やはりそれを覆うように緩い螺旋が拵えてあった。


「何これ……? 杖? ゲームに出てくるのみたい」


 奈瀬が笑いながら杖に触ろうとすると、ランドは彼女を制するようにその杖の先を素早く奈瀬に向けた。杖が金色に眩く光り、地面には魔法陣が飛び出す。


「…………!?」


 奈瀬はすぐさまランドから離れた。深海も瞠目する。


(何だ今のは……? ただのおもちゃではない!?)


 深海はランドを隠すように正面に立つと、杖を指差した。


「とりあえず、それを引っ込めてくれ。ここはマズい」


 深海の言葉に、ランドは辺りを見回してから言う通りにした。


 美竹公園には段ボールに入ったおじさん一人。誰も今の現象を見ていない。深海と奈瀬以外は。


(一瞬にして月橋の頭がここまで変になることも、何も持っていなかった状態でここまでコスプレすることも、普通では考えにくい。ということは、こいつの言うとおり、ランドと名乗っているのは月橋とは別人……?)


 深海は腕を組み、思考を巡らせる。だが、正確な答えは出せない。


(……取りあえず、ここにこんな格好の奴がいると目立つな。移動するか)


「杖をローブで巻いて、手で持って。取りあえず、話ができるところに移動しよう」


 深海はそう言って、自分が着ていたブレザーをランドの肩にかけた。


「寒いんだろ?」

「……ありがとう」


 ランドは深海を暫く見つめてから礼を述べた。


「深海くん、これからどこ行くの? 話ができるところって……?」


 時計は午後四時半を指していた。


「俺の家誰もいないから、一先ずこいつ……ランドを連れて行こうと思う。父親も帰ってくるの遅いし。それに……、母親は病気で亡くなってるから、誰かに話を聞かれる心配もない」


 伏目がちにそう言う深海はどことなく寂しそうに見えた。


「……奈瀬さんはどうする? 男の家に行くなんて女の子はやっぱりご両親が許さないんじゃない?」


 しかし深海の予想に反して、奈瀬はかぶりを振った。


「遅くならなければ大丈夫。それに、わたしも知りたいから!」


 深海は笑って頷くと、今度はランドに向き直る。


「一つ言っておく。何か物珍しいものを見たりしても、俺の家に着くまで一切喋らない事。これだけは守ってほしい」


 ランドはぶんぶんと何度も首を縦に振った。深海はそれを確認してから、駅へ向かって歩き出す。その後ろに奈瀬が付く。ランドも訳が分からないまま、とりあえず二人の後に続いた。


 渋谷駅から半蔵門線で永田町まで行き、有楽町線に乗り換えて市ヶ谷で降りる。エスカレーターや階段を使って地上に出て、九段下方面に十分弱歩いた。一階にファミリーレストランがあるマンションの五階。そこが深海の家だった。


 鍵を開けて中に入る。


「お邪魔します」


 奈瀬は玄関で靴を揃える。深海に続いて洗面で手を洗った後、深海の部屋と思われる部屋に通された。ベッド、勉強机、椅子、パソコン、本棚。彼の部屋は物がほとんどない、殺風景とも綺麗とも言える部屋だった。


 奈瀬とランドがその部屋で待っていると、深海が飲み物を運んできてくれた。


「こんなものしかないけど」


 深海はお盆ごとそれを机に置いた。それから部屋の端に立てかけてあった、簡易な組み立て式の机を中心に据え、そこに飲み物を移す。


「ありがとう」


 奈瀬は深海から出されたガラスのコップに入ったお茶に早速口をつける。


「床は冷えるから、その椅子とか、ベッドとかに座って」


 奈瀬とランドがフローリングに直接座っているのを見て、深海が声をかける。彼の言葉に甘え、ランドは椅子に座り、奈瀬はベッドに腰掛けた。深海は床に座っている。


「あのさ、もう喋ってもいい?」


 ランドがやや遠慮がちに言葉を発する。深海が首肯すると、ランドは一気に口を動かした。


「っていうか、ここ凄いな! まず格好が斬新! 今まで見たこともない服を着てる! それと、沢山あった動く物体。あれ何? 中に人が乗ってて、二輪と四輪のものがあった! 動く階段とか、上下に動く箱とか! あとあと、オレたちが乗ってきた大きな四角い箱みたいなのは?」


 奈瀬は半分信じられないでいた。彼は一体どこから来たのか。


「ランド、質問に答えると、沢山あった動く物体の四輪のものは、車だ。二輪はバイク。燃料を入れると動く。動く階段はエスカレーター、上下に動く箱はエレベーター。そして、俺たちが乗ってきた四角い箱みたいなものは、電車だ。これらは電気で動いている」


 深海の説明に、ランドは今一理解していないようだったが、それ以上質問を重ねなかった。


 深海は一呼吸置いてから、ランドに話し始める。


「ランド、君はなぜあの場所にいた?」

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