第11話
「エスディアが今どうなっているかは知っているだろう? 空は暗雲がたちこめ、中心地には耐魔法用の城砦ができている。エスディアの者たちは外部との接触を絶たれ、身動きが取れないと聞く」
王様は静かに瞳を閉じた。
「我々三国は、古に神より賜りし神聖な務めがある。エスディアを守り、世に平和をもたらすこと……。今がその時である」
王が何を言っているのか陽斗が理解できないまま、それでも話は続く。
「ジュラルデン、リヴァレル、そして我が国ライレーン。この三国でエスディアを守る。我ら王がすぐさまエスディアに赴き、この務めを果たしたい。これが三国の王皆の願いだった。だが、この一大事に王が国を離れるわけにはいかない。そこで我々は話し合って、自らの子供にその大役を任せることを決めた」
王はそう言って、視線を斜め右横にいた男の子と女の子に移した。陽斗も視線を向ける。
男の子の方はメガネをかけ、黒髪で整った顔立ち。しっかり者の雰囲気を纏っていた。背は180センチ弱くらいだろうか。陽斗より少し高く見えた。
女の子の方は金髪ストレートヘアだった。瞳は沖縄の海のような、透き通るような青色をしている。身長は男の子よりも二十センチくらい低いように映った。
「年は皆十六。もう立派な大人だ。リゼル殿はSランク召喚魔導士、リリィ殿はリヴァレルに代々受け継がれる精霊魔法のSランク魔導士だ」
王はそこで一度区切ると、陽斗を真っ直ぐに捉えた。
「そしてお前は、エスディアの初代王が親友であったライレーンの王に贈ったという唯一無二の魔法剣セルフォードの適合者だ。皆魔法の才に長け、将来有望な三人だ。この三人に、我々王はこの世界の未来を託そうと決めたのだ」
陽斗は無意識に唾を呑み込んだ。喉仏が上下に動く。心臓がバクバクと音を立てる。
「ランド、お前には霆龍の笛も預けよう。本当なら今すぐ旅立ってほしいくらいだが、具合が悪そうなので仕方ない。旅立ちは明日でも大丈夫かね?」
王はリゼルとリリィに話しかける。
「具合が悪いのは仕方ありません。明日の早朝に出発します」
リゼルが感じよく答えると、王は何度も頷いて見せた。
「ランドのせいで申し訳ないですな……。お二方の部屋も用意させますので、今日はゆっくりしていって下さい。用意が整いましたらお呼びしますので、一先ずランドの部屋でくつろいでいて下さい」
王はそう言うと、ランドに自分の部屋へ行くよう目で促した。陽斗は慌てて、王とリゼルたちを交互に見てしまう。
(ランドの部屋ってどこだよ!)
陽斗があたふたしているのを一瞥して、リゼルは王に向き直る。
「ライレーン王、ご好意誠にありがたく存じます」
そして、陽斗の方にリゼルが近づく。
「ランド、ほら部屋行くぞ。久々に三人で昔話でもしよう」
リゼルは陽斗の腕を掴み、一礼をして部屋を出た。リリィもそれに続く。
陽斗はリゼルに引っ張られるまま、部屋を出て右側の奥にあった階段を上り、従者と思われる男性の前を通り、三つの扉の内、一番奥にあった扉の部屋に入った。
部屋の中は、天井が高く広い。正面には身長を裕に超えるほどの窓が二つあった。そこからはこの国の自然が一望できる。大きくふかふかしたダブルベッド、全身鏡、広い机、椅子とソファの下に敷かれた質のよさそうな黒い絨毯。この国の象徴と思われる、黄金の龍が描かれていた。
リリィが扉を閉めたのを確認すると、リゼルはソファの前で陽斗の腕を放した。リゼルは陽斗とは反対側のソファに腰掛け、リリィもその隣に座る。陽斗もとりあえず腰を下ろした。
リゼルは眉間に皺を寄せながら深く溜息をつく。そして低い声を震わせながら、鋭い瞳を陽斗に向けた。
「お前誰だ?」




