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モップのせい

暗い森のとある日。

城主は獣の姿で森を走り、唯一陽のあたる自分の城へと急いだ。

今日は散歩に出かけたに過ぎないが、それでも街はだいぶ離れているためそれなりに疲れる。


帰ったらメイドに水でも用意してもらおうとひた走る。

そろそろ自分の城の門が見えてきた、あともう少しと足をはやめると珍しく自分の帰りを待っているらしいメイドが見える。


はて今日はいいことでもあったのかなと考えていた城主だったがメイドの両脇にあるものを見て足がすくんだ。砲だ、砲がある。


あれは、対戦車ロケット砲RPGだ


門に入る直前で足を止めた城主だったが、砲は容赦なく門めがけて発射された。


「ちょまっ、メイドさっうああああああ!」




門ごと吹き飛ばされた城主だったが、すぐに体制を立て直しメイドの追撃を避けながら城に入る。


「何!何ですか!僕が一体何したん!」

「そんな事自分の胸にお聞きなさいな」


城主の言葉はメイドには届かないらしく、容赦なくRPGは発射される。


「怖い!怖すぎるよメイドさん!砲を二丁持ちして連射ってどんなよ!」

「ご安心ください、反動はあらかじめ消してあります」

「魔女怖い、君も結構な感じで化けも」


城主の言葉の途中で弾が命中し、派手に錯乱した


ちなみにメイドが消しているのは反動だけで彼女は持ち前の筋肉でRPGを持ち上げている。

にもかかわらず外見は華奢な女性にしか見えないから困る。きっと脱いだらすごいのだろう。


さて、胴体だけになって飛んでいった城主だが、RPGを置き粉塵の中から二刀流の刀を持って現れたメイドによってさらに頭だけに切り取られ、着地と同時に髪を鷲掴みにされた。


「メイドさん痛いんですけど!ほんと!僕、何かしましたか」

「これだけ殺られてまだわからないなんて」

「説明を求めます」

「仕方ないですね」



と、いうわけで。


時刻は城主が城を出てからメイドが掃除を始めようとするところまでさかのぼる。


メイドはいつものように食事の片付けを終え、城内の掃き掃除を終わらせさて拭き掃除だと

お気に入りの掃除用具入れからモップを出そうとしたところ

いつもあるべき場所にモップの姿はなかった。


「あら?」


はて昨日ちゃんとここに入れたはずなのだがと首をかしげるメイド。

もう一度昨晩のことを思い出し、そういえばお風呂掃除の時に使ったなと思いもしかしたら浴場にあるかもしれん、と浴場に確認しに行くとそこには


昨日しっかり洗い新しい水を貯めたはずの浴槽に謎の黒い液体が溜まっていた。


メイドは激怒した。




「と、いうわけでございます」

「な、なるほど。でもそれは僕じゃないと思うんだけど」

「何をおっしゃいます。この城でそんなことができるのは城主様だけでしょう」

「何のために浴槽黒くしなきゃいけないかわかんないよ!」

「城主様の血は黒くていらっしゃいますでしょう」

「そうだけど風呂場で大量出血なんてしないよ!もう一度現場を見たらわかるって」

「根拠は?」

「ないけど、ないけど何かわかるかもしれないから」


メイドは一度ふん、と鼻を鳴らして


「仕方ないですね」


と言った


そして二人、若干一名生首だが。は城の中に踏み入った。


「しかし不気味だね、勝手にそんなことになるなんて」


「ホラーの塊みたいなあなたから不気味なんて言葉が出るなど片腹痛いですが、そういうことにしておいてあげます」


「怒ってると口悪いですねメイドさん」


無言でメイドが城主を見下ろす。


「なんでもありません」


そんなこんなで浴場へたどり着くと、城主は言葉を失った。


「これはまた、派手に」


「やってくれましたね」


「だから僕じゃないんだって、ほら、何か証拠があるかもしれないから、ね?よく見てみてよ」


ちっ、と一つ舌打ちをしたメイドだったが、言われた通りに辺りを見回しているうちにあることに気がついた。昨日の夜から拭き掃除をしていないはずの浴場の床が濡れている。


「これは?」


「ねぇメイドさん、なんかこの濡れてるの道になってる気がする。このあとを追えばいいんじゃないかな」


城主の意見に耳を貸す事ほど嫌なことはないメイドだが、その濡れた道が気になるため仕方なく道を追ってみることにした。


その濡れた道はろうかを通り時に壁を伝い、そしてくねくねと右往左往した挙句城主の寝室の屋根裏部屋へとつながっていた。


「なんか屋根裏部屋から水垂れてるんだけど」

「ここに何かしらがいることは間違いありませんね」


そこでメイドは一旦 城主(なまくび)を下に置き、はしごを立てかけて屋根裏部屋へと入っていった。


そしてしばらくしたあと、城主が少しづつ元の形に戻ろうとしていた時、メイドが戻ってきた。


その手になくしたはずのモップを持って。


「モップ?」


「モップですね」


「モップがひとりでに?」


「そんな、まさか」


二人はまじまじとモップを見ながらあーだこーだ言っていると、どこからか小さな声がした。


「あの」


「だから城主様が屋根裏部屋に証拠を隠滅したとしか考えられないでしょう」


「だから違うって誤解だって」


「あのう」


「言い訳なんて醜いですよ」


「だからいい訳じゃないってば」


「あの!」



その小さな声が大きな声に変わったとき、二人はしばし沈黙した。


「声、した?」


「どこからですか」


「ここです」


二人は同時にモップを見た。


「モップが」

「喋った」



ここです、といったモップは小さく揺れると、そのふわふわとした部分から水が巻き上がり

そしてそれはメガネをかけた娘の姿に姿を変えた。


「あの、どうも、はじめまして」


メイドと城主は同時に


「は、はじめまして」


と言った。


「あのあたし、目が覚めたらなんかモップになっててで、自分が何だったかものんなのかもわかんなくて」


「はい」


「そんで取り敢えずなんか、動いてみたんですけど、なんかあたし黒くて動きづらくて。で、そこに水、溜まってたんでそこ入ったらなんか黒いの落ちたんで体軽くなったんでいろいろ動いて見てたんですけど、

その、ご迷惑かけましたか?」


メイドと城主は顔を見合わせてから


「い、いえ」


と、言ったあとすすす、と端の方に移動し


「どどどどどどういうことなのメイドさん」


「そそ、それは」


端の方で動揺しながらちらちらと娘を見る。

なんだか、前回で破裂した娘と似ている。


「どうやら城主様の血で破裂したものの不死の性質で液体として蘇り、そして血を拭き取ったモップを本体として動き、水を吸い取って色を変化させた、といったところでしょうか」


「つまり、僕が生み出した新生物?」

「そう言いましたことになります」


「あのう」


相談していた二人にモップ娘は接近していたようで


「は、はい!」


と城主は間抜けな声で反応してしまった。


「あたし、行くところもないみたいなんで、ここで住まわしてもらってもいいですかね」


娘は意外と抜け目なく図々しかった、が


追い出してもなぁ、と言ったことになり


「ど、どうぞ」


と散々悩んだ結果二人は声を合わせたのだった。


それからというものモップ娘は拭き掃除担当として城に住み込むことになった。

話すこともたどたどしくたまにドジを踏んだがよく働くためメイドからはそれなりに気に入られていた。

城主も人がいると新鮮だということでそれなりに喜んだ。


娘はクレアと名付けられ、城主たちの城はまた少し賑やかになった。

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