a lot
「いたぞ、化け物だ!」
「殺せ、殺せ!」
(いきなり銃なんか撃たないでおくれよ、いたいなぁ)
今日、城主は街に出た。何故街に出たかというと
(大人しく死んでてよ。うるさいなあ)
それはただ狩りのために。
今の彼が腕を振るえば銃弾など軽く弾き返してしまう。
「駄目だ、全く利かない」
「クソッ化け物め」
(化け物化け物言わないでよ。そっちだって化けモンみたいなデカイ銃使ってるんだから似たようなもんじゃないの)
城主がもう一度腕を振るう。そうすると先ほどまで騒いでいた
兵隊どもも、ただの食物に変わる。
兵隊が銃で化け物を撃つ。
城主がそれをはじく。
城主が腕を振るう。
もう何回その動作を繰り返したことか。
(銃の扱いもなってない。お前らは蟻か)
「駄目だ、退却!退却ーッ」
化け物に恐れをなした兵隊どもが一目散に逃げていく。
まるで蜘蛛の子を散らすように。
城主はそれを追いかけるわけでもなく、それを見送った。
(格好悪い)
しばらく城主は人のいなくなった街で散らばった食物を袋に詰めていた、が何を思ったのか突然その一つを口に含んだ。
(まずい。こんなにまずかったかなぁ、こいつら)
(あ、そっか。メイドさんが料理してないからこんなにまずいんだ)
(味は悪い癖に数はいるからなぁ。食べ物には困ることはないだろうけど、やっぱりメイドさんじゃなきゃなぁ)
紅い街に雨が降る。
(うわ最悪。雨かよ)
「今から帰るよ、メイドさん」
その時の彼は少年の姿でにこりと笑った。