化物様城主様
メイド、グノシエンヌ・ブーゲンビリアは
この城の城主が大っ嫌いだ。
我侭で自己中心的で、このほかにも嫌いなところは吐いて捨てるほどあるが、ここでは省略する。
だが、それ以上に狩りをしている城主が大嫌いだ。
狩りをしているときの城主は、酷く汚らわしい異形の化け物でしかない。
「メーッドっさーぁん。何ぼーっとしてるの?」
相変わらず能天気な城主の声が聞こえる。
どうやら料理中に考え事をしていたらしい。
「あ、申し訳御座いません」
「しっかりしてよねーってメイドさん、何か鍋が物凄い煮え立ってるんだけど。何アレ、地獄?」
「城主様が暖かいスープをご所望だと申しますので」
「限度考えてよ」
何の事は無い、いつもの会話。
「普通に作ってくれるメイドさんのお料理は大好きなんだけどなぁ
そうだ、今日のデザートは大学芋がいいな」
と、言われた瞬間にメイドは二丁拳銃をぶっ放した
穴だらけになる城主。
「くっ...うう...何が、何がいけなかったんですか」
メイドは静かに拳銃をしまうと
「城主様はご友人がおりませぬ故、他人の気持ちが分かりませんのです」
「メイドさんの感情読み取るの難しいと思うんだけどなー
って、僕にもお友達くらいいるよ!」
メイドはあら、と首をかしげた。
「ふふん、お城にも呼んだ事があるよ。ほら
九尾の狐でしょー、あと鬼蜘蛛でしょー...」
沈黙
「それだけ、ですか」
「それだけ」
「何故東洋の方々ばかりなのですか」
「し、仕方ないじゃん気が合うのがそいつらだけだったんだから」
メイドは一つため息を吐いた。不死の歳月を費やしても、
中々そういったものは広がるものではないらしい。
「思い出しました。お雪様と泥鬼様ですね」
「そーそ、そいつら。元気してるかなー。
メイドさんこそ恋人もいないんじゃないの?」
「とっくのとうに貴方様に殺されましたが」
「あれ、そうだったっけ」
なんの変哲も無い日常会話。何の変哲も無い日常会話。
「ま、どうでもいいや。あとで絵本読んでくれるよねメイドさん」