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前菜

昔かどこかもわかりゃしないどこかの樹海の中。


人っ子一人立ち寄らぬお城があったとさ。


そこに住まうは恐ろしい化け物と魔女がおりましたとさ。その恐ろしい恐ろしい化け物は、度々村を襲っちゃ人を攫うのさ。


攫われたら魔女に調理されて化け物の晩餐のメインディッシュになっちまうって話.....


「なんだよーこの絵本ー」


高級そうな椅子に深々と座り、貴族のような装飾の黒々しい服を着て、不機嫌そうに声を漏らす一人の少年


「何が気に食わないので御座いますか、城主様」


と、食事をテーブルに運びながら興味なさげに呟く髪の短い

メイド服を着た女性。


「だってだってー、僕こんな毛むくじゃらじゃないもん!」

パタパタとメイドに近寄れば絵本を見せる少年。


「...そっくりで御座いますが?」


「どこがさ!」


「この下品そうな顔とか」


そんな事ないもん!と少年が叫ぼうとした刹那


メイドが少年の眉間にマスケット銃の銃口をあてる。


「城主様。お食事の準備が出来ました」


「う、うん...ありが」


少年が動こうとした瞬間に城に響く発砲音

後ろ向きに少年が倒れる。


「早くなさらないと、撃ちますよ」


「撃ったよ?今確実に眉間に風穴開いたよ?」


怒号とともに立ち上がる少年。



.....チッ


「舌打ち?一回ぶっぱなしといて舌打ちはないよね!」


「お食事が冷めます」


そして当たり前の様に少年の横に立つメイド。


「一言謝罪が欲しいです」

「頂かれないのですか」

「食べますけど」


乱暴に食器の上のオードブルにフォークを刺すと口に運ぶ。


「如何でしょうか」


「...まぁ、美味しいです。態度は悪いけどこーゆーのはちゃんと出来るんだ」


と言い切ったか言い切らないかの瞬間、大量の血を吐いて皿に顔を

突っ込んだ。


「如何でしょう、今回は青酸カリをいれたアレンジで御座います」


「そんな殺人的なアレンジは必要ありません!」


やはり怒号とともに復活。


「...ちなみにこれは無事?」

と他の食べ物を指差せば


「それはカンタレラアレンジで御座います」


「じゃこれは?」


「ベラドンナ」


「これ」


「トリカブト」


「うん見事に全部毒薬入ってるよね!地獄のフルコースだよね!」


「天国の気分で安らかに地獄逝きできますよ?」


冗談じゃないよ! と少年はフォークを勢いよく叩きつけた。


「あら、もったいない。久々に城主様が狩ってきた食物なのに」


「もったいないことしたのは君だよね」


「...チッ..まぁ城主様の恐ろしさがまた刻まれた事ですし、またそのような絵本が描かれるのでは御座いませんでしょうか」



「また舌打ちしたね...うん、別に刻みたいわけでも無いんだけどね...それにしてもこの絵本メイドさんだけやけに綺麗に描かれてるのが気に食わないんだよねー」


少年が小さな声で呟くと、


「城主様、今何か」


「いいえ、何も言ってません、言ってませんからそのでっかいライフルを下ろしてください、下ろしてくださいって!」



そんな声がした直後、彼の悲鳴と発砲音が重なって城に響いた。



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