第1章~始まりと出逢い
日々の生活に飽きてきた執筆者
佐山の心情がもとになった作品です
こんな出逢いってあってもいいと僕は思いますね
楽しんでいただける内容であれは幸いです
この世界に俺が生きている理由はなんだろう…
毎日毎日、同じことの繰り返しのような学校生活。
つまらない日常。
見飽きた光景。
目の前で騒ぐ男女男女の空間で、俺は目の前の光景を不思議に思う。
きーんこーんかーんこーん…
どこの学校にでもいけば、休憩時間にながれる…、もしくは授業の終わりを告げるその聞き慣れた音楽は、俺の耳を掠めた。
少しぼやけた世界で目の前を見つめると、そこには机の上に適当な状態で転がるなんとも質素な文房具子箱がある。
窓際からもれこむ外の眩しい光に照らされ、鉄で出来たそれは、白銀の光を俺の目へと直撃させた。
一瞬、真っ白になった世界が目の前に広がるが、それは瞬く間にして元の視界へと姿を戻し、目の前にはいつも通りの教室が広がっていた。
俺、城野 和羽は、教室に設置された時計の針が昼休みに入ったのを確認し、財布をもって自分の席から腰を重たくあげる。
追ってきた感覚は、血圧が一瞬上昇して起こる軽いめまい。
片手を机について、少しすると俺は教室の外へと体を動かし始めるのだった。
どこにいくかなんて特に目的地はない。
そう…、目的地なんてないんだ。
ただ歩く。それが昼休みの暇つぶしだった。
廊下を行き来すれば沢山の男女に出くわす。が、その中に心惹かれる女子もおらず、仲のよい男子友達のようなものもいない。
むしろ逆だろう…、そう思っては吐き捨て、足を前へ前へと進める。
動いていく視界の中に入るものすべて、俺に対しての興味心などはまったく持ち合わせていない。
いや、正式には持たなくてもよいのだ。
それはこの世界において、特別なことでもなく…かといって普通のことでもない。
生徒や教師が行きかう廊下で他の生徒とすれ違う時にふと、女子の会話を耳にした。
「…あ、この人ってなんか呪われてるって噂だよ~」
「えぇ~…?本当?…」
クスクスと笑いながら歩き去る女子の会話には、”呪われている”という誰かをさす言葉が含まれていた。
それは間違いなく俺のこと。
気にしないと心に決めていたその言葉…。しかし、気がつくと無意識に片手は左額を押さえて震えていた。
***
「……」
無言のままで、一人しかいないその家のソファーの上に腰を下ろした。
ぎゅむ という異質な音をたててソファーは腰を包むかのように凹みを作る。
それに続き、体をもあずけると、風呂上りの熱った体が眠気を催すようになる。
しかし、それを振り切るように体を起こし 一メートルと少しの距離の間隔をあけて置かれた黒くツヤのあるテレビを眺めた。
見もしないそのメディア媒体には、いつもながら大きな笑い声が響いていた。
何かのバラエティのようだが、そんなものには興味がなかった。
ただ、静かな空間というのがあまり好きではないから…という、なんとも寂しい気持ちによってテレビは生かされているのだ。
広く、誰一人として和羽以外には暮らさない家。
周りを見渡してもこれといって物は無い。
家を出て行った親家族が、ほとんど持っていったのだ。
これはそう最近の話ではない。
和羽以外の親家族は、和羽の”それ”を忌み嫌っていた。
”それ”とは彼が生まれつき持っていた体質。
彼のもってして生まれた珍妙なその”左目”だった。
もってして生まれた彼の瞳の色は…、純粋な金色。
宝石なら、貴婦人たちは目を鱗にして手にしたくなるようなそれは、宝石ではなく彼の体の一部だった。
人ならざるもの…、小さい頃難しい言葉だが祖父母や周りの人々に言われてきた言葉だ。
人では有り得ない事が、今の俺の体…正式には生まれてから今に至るまで、ずっと起きている。
それを嫌い、両親や兄弟は少し離れの場所に別で家を買い、いまではそこで暮らしている。
毎月ガス代電気代などの生活費を袋に入れて郵送してくるが、それだけで、家族という付き合いはまるで無かった。
悲しいことに、ここ最近は親の顔も思い出せない。
そんなことを考えていると、ふと脳裏に言葉が飛び込んだ。
【化け物!!】
「!!」
ソファーから飛び起きると、目の前には虹色のラインが縦にいくつもあるテレビの画面があった。
どうやら寝てしまったみたいだ。ソファーに預けたその体は寝付かれてしまったのか、動かすと軋む。
…なんでまた、今になって昔のことを…
昔のことが、夢に出てきた。
それは自分の目をみた他の小学生に言われた一言だった。
その言葉は鋭利なナイフのように、無残にも彼の心を切り裂いた―――思い出したくないことを今でも覚えている。
「…はぁ…またか。この呪文はなんだ?」
夢を見終わると必ず起こる人体現象。
いや、空想現象かもしれないし、仮想現象かもしれない。
現実に起こる現象としては認識できないそれは、彼の頭の中に起きていた。
頭…というよりは、目が覚めると必ず金色の文字が目の前に呪文で浮き上がる。
ミミズの歩いた痕跡のようなそれは呪文というしか他に説明できない。
導け…呼応なる……い、愛しき?大地…よ…ぇと、?
見たこともない文字は不思議にも日本語に訳し読むことができた。少しおぼつかない感じはあるのだが、何度か唱えるとするとスラスラ読めることは間違いない。しかし、この呪文を唱えて何かが起こったらどうするか…という警戒心を感じ、それを唱えようとはしなかった。
彼自身、不思議に思っていることがいくつかある。
ひとつは、この世界には魔法が存在してもいいのかということだった。
どのRPGストーリーものの漫画やゲームには、≪魔法≫というスキルが存在する。いや、必ずしもあるわけではないのだが、大半のものには、大技を繰り出し、敵を殲滅する迫力のある魔法などがある。しかし、それは悪魔で現実ではなく、仮想や空想で出来上がった作者が作りだした想像の産物にすぎない。全世界で人気奮闘のゲームや漫画も、作者の想像力で出来上がった、いえば読者やプレイヤーを楽しませるものにすぎないはずだ。
しかし、"それ"が仮想ではなく現実に起きてしまった。
彼、和羽は魔法…、いや、術といったものが使える。
自身も驚いたことなのだが、漫画に出てきたあるシーンの魔法を、もし真似できたら…、という子供染みた好奇心で行った結果…、できてしまった。ここ最近のことだ。
この目があるために出来たことなのかは今だ不明だが、少なからず何かを唱えると術が完成し発動してしまうようだった。
「……」
先のことを踏まえ、この呪文を唱えてもし何かあったら周りは迷惑に思うだろうか?。
ふと感じたその感情は、少し寂しさを纏っていたが、少しづつ、少しづつ確実にその感情は彼の好奇心をあおり始める。
ソファーに座ったままだった和羽は立ち上がり、何かの漫画で見たことがある詠唱のポーズのように、片手を目の前に突き出す。
が、性にはあわないと思い、鼻で笑い捨てた。
こほん 一度咳き込みをして喉を整える。
「…導け呼応なる愛しき大地よ…芽吹けば世界始まり、花開けば世界に福音をもたらす。我を導き、新たなる世界へと送らん…」
まったくもって意味のわからない言葉の列は、空しくも静かな部屋にいる少年に羞恥というものを与えるのだった。
何も起こらない…と、思った矢先のこと。
目の前に広がっていた視界の妨げになっていた金色の呪文は消え去り、呪文が消えたその虚空の場所からは一筋の金色の光が芽吹く。
「な、なんだこれ!…わっ!!」
その小さな光は次第に大きくなり、一瞬にして彼を飲み込んだ。
やがて光がなくなったその部屋には、彼の姿は忽然となくなっていた。
***
「…ぁぁぁぁああああああ~!!!……!!っ~~」
どこからか出現した和羽は、数メートル地面から離れた場所だった。
そして、重力にひかれて落下。激しい音をたてて地面に腰をついた。
体に痛みが襲い掛かる。
無意識にも呼吸が荒くなるが、それは致し方なかった。
「…こ、ここは…?」
先まで部屋にいた目の前の光景は一転し、辺りには森の木々がわんさかと生えていた。どの木も一本一本がとても大きい。樹齢100年はくだらないだろうと推測はするものの、ふと疑問が浮上する。
こんな大きな木はあったか?近くの森に…。しかもこの量は…。
目の前に広がる広大な木々の数は、圧倒的に和羽が住んでいる周辺にある木々とは大差があった。
よくみると、見たこともないものだ。葉一枚一枚が水色で染まっている。月光に照らされて光り輝くその葉は、魅力的な美しさを周辺へと放っていた。
クリスマスのツリーに飾られたライトのように、葉が半透明で地へと光の木漏れ日を照らしている。
夜中なのに、あたりが暗くないのはこの少し変わった木々のお陰だった。
立ち上がって周辺を見渡す。しかし、近くに民家の様子はまったくない。近くに道路でも通っていれば車の作動音を聞き、そこを目当てに歩けばいいが…、そういった音はまったくなかった。知らない場所にきたため、むやみやたらに動くことはできない。
かちかち かちかち と、ふと耳をくすぐるような音が聞こえた。
何かがいるようだ。
目を閉じ耳を澄ますと、音は足元近くから鳴っていた。
目をやると…
「ぅわ…!。見たことない虫だな……。新種の生物か何かか?」
足元の近くを這っていたのは、羽の生えた百足。一瞬気味が悪くも感じたが、見ているとどことなく悪さをする様子がないと感じれる。目元は丸く黒い瞳をしていて、少し見慣れると愛着心が沸いてくるのだった。
手を伸ばし、触ってみようと思う。が、ちょっと待て…!と、自分の心が自分の体を引きとめた。
おかしい…。新種の生物が何かとしても、これはあまりにも飛躍しすぎている。
羽の生えた百足が自分の住む家の近くにいるか?ましてや、半透明の水色の葉が沢山ついた木々は現実にあるか?。
単純に自分に問いかけると、あり得ない…という答えが浮上した。
当然あり得ない。
木々の種類の中には青い色素を持った葉をもつものがあると聞いたことがある。が、それはそこまでの青を持っているわけでもなく、目の前の木のように葉が半透明ではない。
少なからず、この生物や木々は和羽の住んでいた周辺、いや…和羽のいた世界には存在しないものだ。
そういう推測をすると、次に浮上するとしたら、ここはどこだ?。
別の異世界か?だとすると俺は、あの時好奇心にあおられて行った行為によって見知らぬ世界にいるのか?。
いや、現実に異世界とは存在するのか?。
疑問が彼の心を覆い始めたその時、
「……めて!!」
「……!女の子の声…?」
一瞬、甲高い女の声が聞こえた気がした。何かをひどく拒んでいるかのような悲痛な声。
今まで、散々化け物といわれてきた和羽だが、目の前に苦しむものがいると見てみるフリはできない。
そんな彼は無意識にも耳が感じ取った声のする方向へと勢いよく走り出していた。
凸凹とした凹凸の地面をけり、声主を探す。
悲痛な声ではあったが、透き通った綺麗な声をしていた。
一度耳にすると忘れることができない。
やがて、一本の木の近くに行き当たると、目の前には男が3人、少女が1人いた。
男が集って少女を襲っている光景だ。
それに必死で抵抗する少女。
「やめて!お願いだからやめてください!!」
「はっ!!五月蝿いんだよ。生意気なエルフの癖に…人間さまに指図してんじゃねぇよ!!」
白銀に輝く長い髪を掴み、あいた片方の手を振り上げた。
しかし、その瞬間にとっさに声がでていた。
「やめろ!!」
『!?…』
「なんだ?坊主。お前も仲間に入るのか?この女、エルフだからいい体してるぞ~。4人でまわして楽しもうじゃねぇかww」
「はぁ?1人増やすのか?」
「順番が長くなるじゃないか…おい」
「黙ってろってwwだって面白いだろwww」
見慣れない格好をした男3人は少女を襲うらしい。
そんなことを聞くと無償にも腸が煮えた。
面白いだと…?少女を我が身の欲のために生贄にでもするというのか?
「…ざけるな…」
「?どした、坊主」
「ふざけるな!女の子に寄って集って、お前らの欲のためにこの女の子を傷つけていいわけがないだろ!!」
「…!!」
どさ と少女の髪を掴んでいた手が離れ、少女は力なく地面に倒れた。
幸いにも彼女は怪我などはしていないようだ。
「んだとガキ!!。偽善にもはしって俺らの邪魔するってのか?あぁ??」
「おい、バルダー……なんならこいつ殺しちゃおうぜ?」
「いいねぇ~そんでもってこいつの住んでる村見つけて、村に十字で飾ってやろうじゃねぇかww」
男3人はげらげら と、気味悪く会話を続ける。
月光に照らされ、なお一層不気味になった彼らをみると異様な怒りがやり場もなく心の中で暴れているのがわかった。
先まであたりを美しく染めていた水色の木々の葉は、いつしか陰り、顔をみせなくなる。
「だったら……さっさと殺そうぜ!!」
懐から銀に輝く刃を持った3人の中で一番デカイ男は、勢いよく飛び込んでくる。
が、時間を俺に与えすぎた。
「がっ!!?」
和羽との距離が1メートルもなくなったところで、見えない壁にでもぶつかったように、男は顔面を強く何もない空気に打ち付けた。
バン という鈍い音が森に響きわたる。
「なっ!どうしたバルダー」
「わ、わかんねぇよ!!見えない壁があるんだ…あいつに近づけない!!」
無風空間を作り出し、結界の壁を作る防御の魔法≪断壁≫。漫画にあった魔法を試行錯誤のすえに生み出したものだった。
それは案外にも目の前の男たちには効き目があったみたいだ。
「まだやるのか?」
「あぁ?!」
「やるなら最後まで付き合ってやる。でも、さっきみたいに顔を打ちつけるだけじゃすまないからな」
「ちっ……!!。クソ!帰るぞ」
「なっ!!?いいのかよバルダー。せっかく捕まえたエルフの高女なのに、そのまま返すなんて」
「うるせぇ!!だったらお前があいつに一撃でもかましてみろ!!」
仲間われしたように、男たちはああだこうだ騒ぎながらその小さな背中をどんどんと遠ざけていった。
木の下、地面に座り込む少女へと駆け寄る。
「大丈…」
「来ないで!!」
「!?…」
「来ないで……ください。私に近寄らないで!!」
まるで狂乱したように激しく怒鳴る少女。怒っているからなのか、彼女の耳は横に尖って伸びていた。
「…わ、悪い…俺はただっ!?」
ガン!!
鈍い音が頭でした。
振り返るとそこには、彼女と同じように横に尖った耳をもつ女が立っていた。
倒れる視界の中、その女は右手にかなづちを持っている。
それで…殴ったのか?…
倒れたと同時に、和羽の意識は途絶えた。
【続】




