2話 この世界
独自の世界観の説明パートです。
分かりにくい表現がある際ご指摘いただけると嬉しいです。
「私はセリス・アルヴェリア、セリスって呼んでね」
エメラルドグリーンの瞳に、ハーフアップに結ばれたプラチナブロンドの美しい髪。
外で倒れていた創理を介抱してくれた少女はセリスと名乗った。
「本当にありがとうございます。セリスさん」
「さんは付けないで、セリスでいいよ。それに敬語も使わなくていいから」
セリスは頬を赤らめながらそんなことを言う。なんでも普段から町の人たちにもセリスと呼ばれているそうで、さんをつけられるとなんだかむず痒いんだとか。
「わかった。ありがとう、セリス」
「いいのよ。ところで貴方は? どこから来たの?」
「俺は神谷創理です。17歳。日本って国にいた筈なんだけど……日本はわかる?」
俺が今聞くべきなのはここがどこなのかだろう。
「日本か……聞いたことはないかな」
「っ……」
驚きと絶望に近いものが創理の冷静さを欠く。
なんで?どいうことだ、意味がわからん。日本がわからないって……俺はどうすればいいんだよ。
「けど、少し似た雰囲気の名前の町があったはず。あそこは火の神様を信仰してるんじゃなかったかな?」
「ほんと?!」
なんということだろう。この異世界であろうところに 日本に似た雰囲気の名の町があるのだそう。そこに日本について何か手がかりがあればいいいのだが……
ぐぅぅ~
静かな部屋に間の抜けた音が響いた。
「ウフフ。そうだった。お腹空いてるんだよね、食べ物持ってくるから待ってて」
「ありがとう!」
セリスは椅子から素早く立ち上がると、元気よく部屋から飛び出していった。
俺も忘れてたけどめちゃくちゃお腹空いてるんだった。
それにしてもこの世界はどうなってるんだ。魔物はいるし、普通に魔法は使うし、そもそも俺の知る世界じゃないからな。
とりあえず聞きたいことは山ほどある、セリスに色々聞くとしよう。
「お待たせいたしましたー! 当家自慢のランチでございまーす!」
少しふざけた様子のセリスが運んでくれたものに、俺は驚いた。
焼きたての白いパン。鶏肉と根菜のシチュー。香りのいい葉野菜のサラダ。どれも綺麗に盛り付けられ、食欲をそそる匂いが部屋に広がった。正直思っていたよりも豪華だった。
「いただきます」
創理は震える手でスプーンを握り、そっとシチューを口へ運んだ。
よく煮込まれた鶏肉と根菜はいずれも柔らかく、とろりとしたクリームシチューとよく合う。
「うまい……」
「よかった」
パンはフワフワしていてほんのり甘く、葉野菜のサラダはさっぱりとした味付けで、2日間何も食べていなかった胃が拒絶反応を示すことなく食べることができた。
先程まで食べながらこの世界のことを聞こうとしていたが、そんなことは忘れて夢中になって食べ続け、気付いたら料理を平らげていた。
「ごちそうさま。めちゃくちゃおいしかったよ」
「良かったわ。いい食べっぷりだった。」
セリスは小さな子供のように無邪気に笑う。
空腹が収まりやっと質問できそうだ。
「あのさ……ここについて教えてくれる?」
聞きたいことが多すぎて、曖昧な質問になった。俺が聞きたいのはこの町、この世界、兎に角沢山だ。
「ここはミルヴェラ。主に風の神様を信仰してる町よ」
先程も火の神様がどうとか言ってたけど、はて、風の神様とは何なのだろうか。
「風の神様ってなに?」
「え!!」
セリスは笑顔から驚きに満ちた顔に変わる。何かおかしなことを聞いてしまったのか?
「風の神様は、風神オルデのことだよ? わからない?」
だめだわからん!知らんぞそんな人は!
「えーと……わかりません」
セリスの瞳は大きくなり、顔にはありえないと書いてあった。
「ソーリは日本ってところから来たんだよね? 日本では何の神様を信仰してたの?」
歴史的にはいたのかもしれないが、現代で身の周りに神様を信仰している人はいたか?そもそも神様って存在するのか?
「わからない……」
創理はそう答えるしかなかった。
「そんなことあるの……?」
セリスは苦笑いしていた。
そこからはとにかく長かった。
先ずは魔法について。魔法とは空気中を漂う魔気を利用して、様々な現象を引き起こす力のこと。
大きく4つに分類される。
・属性魔法
火、水、風、土、雷をベースにしたもの。稀にこの5つの属性とは異なる、はぐれ属性というものが存在するらしい。日常生活や、魔物との戦闘で使われる。
・回復魔法
傷の手当て、疲労回復、解毒等々、莫大な数の回復魔法があり、下位では応急処置程度、最上位では死者蘇生まで可能とのこと。
・強化魔法
感覚強化、速度強化etc.こちらも莫大な数が存在する。
・特殊魔法
結界や転移、召喚などの少し変わった魔法。
4つに分類される魔法は、基本的に誰でも使えるそう。ただし向き不向きはあるらしい。中でも特殊魔法と、セリスが俺に施した”ブリーズヒール”のような、属性魔法と回復魔法を融合させる、魔法の融合はかなり難易度が高く、使えない人も多いのだとか。
そしてこの世界における五柱の神の存在、正体、名前についても教えてもらった。
火神スルド
水神ニルズ
風神オルデ
土伸ヨルダ
雷神トルス
この五柱が世界の均衡を保っており、最強にして最恐の神なんだそう。各々がそれぞれの属性を司る神だという。
もっとも、これらのことは誰もが知っている常識らしい。
「大体わかった? 沢山教えちゃったけど」
口頭の説明でこれだけのことを一気に伝えられても、到底理解できないだろう。しかし、創理はすべて理解できた。それになんだかいつもより脳内がクリアな気がする。
「わかった。魔法についても、五神についても」
「私、何を伝えればいいかわからなくて、あれだけのことを一気に言ったのに、全部理解できたの?」
「うん。なんだか頭の中がクリアというか、情報がスッと頭に入ってきて、全部理解した。」
セリスはこの神業ともいえる思考術を、思考強化の魔法で行っているのだと考えた。
「すごいねソーリ。多分強化魔法の一種、思考強化だよ」
「そいうことか」
創理も納得していた。今まではできなかったこともこの世界ならできる気がするからだ。
「ここ、ミルヴェラに来る前、気付いたら森の中にいたんだ」
「どういうこと? 日本に住んでるんじゃないの?」
「うん。日本に住んでる。けど森の中にいた」
「それって……」
「俺の住んでる日本は多分この世界とは別の世界なんだと思う」
「……」
「転移したんだと思う。けど、転移魔法ではないはず。あっちの世界には魔法もなければ魔気もないから」
「誰かが森にソーリを召喚したってこと?」
「おそらくね」
創理は自分が別人のように冴えていることに気付いた。しかし驚きはしない。
元々頭は良い方ではあったので、そこに思考強化が上乗せされた今、自分の状況に納得がいった。
「森では誰か見かけた?」
「いや誰も。見かけたのはスライムと大きい狼くらい」
あの時は死ぬかと思ったけど、今なら倒せたりするのだろうか?
「待って待って、ソーリはヴァルグの森に転移したの?」
セリスは瞳を大きくし、食い気味に質問してきた。




