3即席の衣服
投稿日時
なう(2025/07/05 16:36:55)
改稿日時
時間の感覚が、妙に曖昧だった。
村瀬陽翔は、相変わらず裸だった。日差しの加減からして、朝か昼かはわからないが、太陽らしき光源は頭上のどこかにある。
風は穏やかで、湿度もさほど不快ではない。それでも、全裸で森の中に立っているという事実は、身体的にも精神的にも、思っている以上にダメージが大きかった。
「……なんとかしないとさすがに無理だって……」
全裸で森に立つというシチュエーション。
ゲームなら笑って済ませられるが、現実となると色々とツラい。虫や草の刺激もそうだが、なにより無防備すぎる。
人に見られる心配は今のところ無いとはいえ、このままでは心細さが勝ってしまう。
(何か、布の代わりになりそうなものは……)
足元に広がる雑草をかき分けつつ、近くの木々を見回す。
すると、手のひら大の広い葉をつけた植物が群生しているのが目に入った。さらに、木の根元には細くてしなやかな蔓のようなものも絡んでいる。
「……これ、使えそうかも」
葉は、厚くて丈夫。いわゆる“バナナの葉”に似た質感で、水を弾く感触がある。
蔓は長く、強く引っ張っても簡単にはちぎれない。結べばある程度の固定も効きそうだ。
試しに数枚の葉を重ね、腰の周囲に巻きつけてみた。
蔓を紐のように使い、葉を包み込むように結びつける。
何度かやり直しているうちに、ようやく腰回りを覆う“腰布”のようなものが完成した。
「……まあ、見た目はアレだけど……」
下半身が覆われただけで、体感としてはかなり違う。
続けて、胸元と肩にも同様に葉を当てがい、簡易な“ベスト”のようなものを作った。こちらも蔓で締めつけ、動いてもずり落ちないように固定する。
全体としては、葉と蔓で無理やり繋げた即席の民族衣装のような見た目だ。
正直、鏡で見たくはない。
「……うん、サバイバルって感じになってきたな……」
言葉にしてみると、少しだけ気持ちが落ち着いた。
何も持っていないという不安感から、最低限ではあるが“装備を整えた”という事実が、わずかながら精神を支えてくれる。
だが、それでもまだ状況は分からないまま。
ここがどこなのか、なぜ自分がこんな場所にいるのか。地球に似ているが、どう考えても地球ではない。
さっきまで部屋にいた。ゲームをしていた。テキストを打ち込んだ、その直後だった。
(まさか、本当に——)
否定するには現実感がありすぎる。
だが、認めるには非現実的すぎる。
陽翔は、息を整えながらその場に腰を下ろした。今は焦らず、まずは情報を集めるべきだ。動くのは、もう少し後でいい。