16)岩への付与魔法挑戦
投稿日時
なう(2025/07/05 17:34:07)
改稿日時
毒に犯された身体に鞭を打ち、何とか岩の前に立つ。ずっしりと重く、ひんやりとした岩肌に指を触れる。
「……これなら耐えられるかもしれない……」
朦朧とする意識の中で、陽翔は深呼吸をして魔力を集中させる。
手のひらに魔力を集め、ゆっくりと岩に流し込む。
「いけ……!」
意識の端で、かすかな振動を感じた。
岩に刻み込まれる魔力の波紋。
けれども、そのまま何事もなく魔力は岩に吸い込まれていく。
「……まだだ」
魔力の注入をやめず、何度も繰り返す。
岩肌がじんわりと温まる気配がした。
今度は少しずつ、岩の表面に小さな亀裂が入る。
「……砕け……」
危うく砕け散る寸前の緊張感が走る。
しかし陽翔は魔力の量を絶妙に調節し、岩が耐えられる限界ギリギリを攻める。
数分後――岩に付与した魔力が岩の中で不思議な輝きを放ち始めた。
「……宿った……!?」
陽翔はその時、腹部の鈍い痛みが少し和らいだことに気づく。
目を見開き、ゆっくりと身体をさする。
「……毒が……薄れてる……?」
付与魔法の効果が、間接的に体内の毒素を浄化し始めたのだ。
痛みがゆっくりと遠のき、息が楽になっていく。
まだ完全ではないが、確かな回復の兆しだった。
陽翔は膝をついて、深く息をつく。
「これで……生き延びられる……」
魔法の力で初めて命が助かった実感が、彼の中で確かな光となった。
まだまだ厳しい戦いは続くが、希望を掴んだのだ。
「よし……まだやれる!負けない。絶対に」