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第1話 お約束は漂着から前編

相変わらずファンタジーのファの字もありません。どころか未だに主人公が協会に着く気配すら見えない今日この頃。

気長に待っていただけると幸いです。

―――――海

そう言われたら、人はどんな事を思い浮かべるだろうか。

海水浴、釣り、はたまた船に乗った記憶か。


多くの人は海を恐れない。特に内陸部に住む人間にとって海は漠然とし過ぎていて恐怖の対象にならない。

精々が遊びに行ったくらいの思いしかないだろう。


しかし、海は確実に人へ牙を向く。

潜れば周囲から掛かる水圧。

水温によって奪われる人間の体温。

何より足も付かない様な外海に何の装備も浮きも無しで人が居れば、いずれ力尽き沈んでしまう。



何が言いたいのかというと。



―――教訓:海で遊ぶ際は、十分に注意しましょう。







「誰が今、教訓話を求めたよ!!」



・・・・・・このモノローグにいきなりツッコミを放った青年は平塚百目。

現在絶賛遭難中だ。


海の真っ只中で。


百目は悪態を吐きながら、何とか浮かんでいようと足掻いているが、如何せん波は荒く空を曇天が覆っている。

どう控えめに見ても嵐の最中だ。

そうこうしている間に一際大きな波が被さると、百目は二度と見えなくなった。






さて、主人公が一時退場した所で少し舞台となっている国について説明をしよう。

現在関係各局が血眼になって百目を捜索しているのがアヴァル王国。

百目の留学先である 王立魔術協会ロイヤルソサエティー が在る。


一方アヴァル王国の在るルーン地方から見て遥か東、ジェノス大陸の極東に存在する島国、八ツ島国。

名前の通り大きく別けて八つの島々からなる国家で、国土の狭さと鎖国と呼ばれる国交断絶を行っていた為に、かなり独特の魔術体系が作られた国だ。

現在は開国し、世界各国とも国交を持ち、アヴァル王国とも同盟関係にある。

因みに余談ながら歴史上、幾度となく人と人外の戦が起こっているにも拘らず、世界でも唯一と言える人妖平等(ルーン風には人魔平等か)を政道に謳っている非常に珍しい国家だ。


お互いにお互いの技術を求め合った結果、両国は頻繁に留学生を派遣し合い知識や技術の吸収に務めた。

今回もその一環で百目と沙綺の留学が決まり、八ツ島からアヴァルへ向かったわけだが・・・・・・。


船は途中嵐に遭い、乗客一名が行方不明。

それがよりにもよって八ツ島からの派遣留学生。

ぶっちゃけた話百目である。

王室と議会は即座に割けるだけの兵を捜索に回した。











―――――とてもじゃないが落ち着いてなんて居られない。

無事に入国し協会入りを果たした沙綺はこれから自分が暮らす事になる部屋の中でイライラとしていた。

逆にイライラしていないと、今にも泣き崩れてしまいそうな自分を叱咤している。こういう時の想像は何故か考えたくない悪い方へ悪い方へ行ってしまうのが常だ。一説には人間に備わっている精神防衛の一種らしいが、今の沙綺にそんな事は関係ない。


「・・・・・・あの馬鹿。・・・・・・いつも側に居て守るって言ったくせに・・・・・・」


普段の冷静かつ気丈な態度からは想像出来ない様なか細い声で呟く。

その声はまるで泣くのを必死に堪えている幼子の声にも聞こえた。


待つのももう限界に近かった。元々沙綺は待つのがそれほど得意でもないのだ。

こうなれば一人でも百目を探しに良く決意を固めたその時、不意に扉をノックする音が聞こえる。

何とか気を取り直し、目元を拭ってドアに向かった。


「はい。誰でしょうか?」

「あア、協会の者でス。少々お話を良いですカ?」


男性の声なのだろうが、どことなくイントネーションがずれていると言うか、間延びしているというかそんな声をいぶかしみながらも沙綺は扉を開けて、その男と対面した。






一方その頃。


ふと気を取り戻した百目はぼんやりした頭で何とか現状把握に努めようとしていた。


(・・・・・・ここは何処だ?・・・・・・固い場所に寝転がっている。海じゃない、陸地には居るのか?)


段々と視界も晴れて来る。どうやら潮で目をやられている様子もなさそうでホッとした。

次は何とか体を起こそうとして動いてみると、今度はほとんど体を動かす事が出来なかった。


(しまった。体はどこか傷めたのか?)


体が全く動かないことから最悪の想像をして、やっとの事で重たい頭を少しだけ動かして体を見てみると。




見事に縛られていた。

しかも後ろ手菱形縛りで。


(何だ、ただの緊縛プレイか・・・・・・。)











「ってそんな訳無いだろ!?なんじゃこりゃ!!!」


そう思いながらも何処かで「あっ、声は出るんだ」等と考えていたりと、百目の頭の中は混乱を極めていた。

何で助かったと思ったら縛られているのか。それも非常にマニアックな縛り方で。

まあ、もっともこの縛り方を知っている時点で百目の知識も非常にマニアックなのだが、今現在それにツッコミを入れれる人間はここには居ない。


「落ち着け。落ち着くんだ。こういう時は焦っても活路は見出せないと師匠も言っていた!!」


何とか自分を落ち着かせ、現状の把握に努めようとする。


「そうだ、混乱している時は東海道五十三次を逆から唱えるんだ。京都・大津・石部・・・・・・・・良し!落ち着いた」


未だ嘗て聞いた事もない方法だったが本人は落ち着けたらしい。


取り合えず自分は今まで経験した事の無いような縛られ方で転がされている。

次にここは何処なのか?暗くはあるが、目が慣れてきたせいかぼんやりと見えてきた。どうやら部屋らしいのだが、窓の類は一切く、ドアらしき場所から若干光が漏れて見えるぐらいだ。それもどうやら日の光の類ではなさそうだ。

という事は夜なのか、はたまたそれほど奥まった部屋なのか。

部屋には自分が転がされているだけで、家具の類も全く無い。


まだ情報は無いか考えていると、外に人の気配がした。気配はそのまま部屋に入ってくると明かりを灯し、百目の前に立った。

中肉中背とでも言うのだろうか。八ツ島人の百目からすれば幾分大柄だが、筋肉が付いてるとかそう言う訳でもなく、ひょろりとしている訳でもなかった。人種は解りやすいルーン地方特有の白色人種。流石に八ツ島出身の百目に国までは特定できなかったが。

歳は正直良く解らない。予想では四、五十かとも思うが、自信は無かった。


「気が付いたかね?」


顔の皺の分だけ重みを重ねたような声が男の口から発せられた。


「ここは何処だ?何で俺は縛られている!?」

「ここはアヴァル王国フィアッカ地方に在る海沿いの町シール。そこにある私の屋敷だ」


取り合えずアヴァル王国には着けたらしい。しかもフィアッカ地方は最終目的地の王都と協会が在る地方だ。このシールという町からどれ位離れているのかは解らないが、違う国に流れ着かなかっただけ僥倖と言える。

百目が一人でそう納得していると、男は百目のもう一つの質問にも律儀に答えてきた。


「そして、君を縛っているのは君に逃げられないためだ」

「いや、意味が今一つ解らないんですけど?」


理解が及ばなかったのか、理解したくなかったのか、思わず百目は丁寧に聞き返した。


「ふむ、では単刀直入に言おう。君が気に入ったので側に侍らして置こうと思ってな」




・・・・・・今度こそ百目の思考は完全にストップした。

主人公が協会に着くどころか、後編に続きます。

一応次の話で協会入りして本格的に勉強が開始します・・・・・・すると良いな?

ご意見、ご感想お待ちしてます。

どんな些細なことでも結構ですので、頂けるとうれしくて作者のやる気も出ます。

どうぞ宜しく御願いします。

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