がーるふれんど とは
凄惨な景色が広がっていた。血と肉片と、切断された肢体。
罰を下された者が転がっている。
ジゼル・クレマンは…切断遺体もとい多多邪の宮へ絆創膏を見せる。
「化け物であるわえがこんな物で治るとでも?」
ジゼルは優しい笑みで、いいや、と言う。
「ガールフレンドに絆創膏、もらうと嬉しくなるんだってー」
「ガールフレンド?どこにいるんだろぉ?」
「あははっ。相変わらず意地悪だね。そういうの友だちに嫌われちゃうよ?」
血みどろの多多邪の宮は横たわって、血を遠くへ吐いた。無惨な状態なのに彼は痛みを感じていないようだ。それもう、彼はこの世の者でないのだから。
「友だち?わえに友だちなんかいないよ。ねえ、ひどいでしょ。遠い置き土産を見つけられてとっちめられちゃったんだよぉ」
彼は知らないようだ。目の前にいる者こそが報告に関わっている事を。
「…ねえ、お土産て?人間にお土産をあげちゃった?いつの話?」
「あー、それが。忘れてたや…」
優しい雰囲気の少女がクスクス笑う。醜悪なモノを見る目付きで。
「何かあげる時はちゃんとオチを設けなきゃね?望んだモノにはそれなりの代償があるって、人間に分からせなきゃいけないんだよ。…って偉い人が言ってたー。神さまのフリをするなら、尚更なんだって」
神さま失格。そう貶めると、ため息をついた。ジゼルは、
「タタさんは優しいんだから。ひとに利用されっぱなしは良くないよ」
「わえは人間だもの。神さまじゃないもん」
「人間?あははっ。変なの〜」
まったくこのこの世の者でない部類は頭が違っていると、ジゼル・クレマンは優しい顔を貼り付けたまま見下げ果てる。
化け物だというと怖がり、今の世の人間だというと否定する。
多多邪の宮はそんな人物だった。
人間が生まれて、何種類の似た生き物が死んで、文面が誕生する前に多多邪の宮は拾われた。多分、家族だっていたろうし、狩りや生活をするための集団だっていたはずだ。
人間なんて、ジゼル・クレマンからしたら生命体でしかない。だが、多多邪の宮には現代人は自分に似た別物に見えている。
人間の真似事をする人間。ジゼルはそんな、不気味な生き物に取り憑いて観察しているのが好きだった。
自分も不気味な生き物だとは自覚している。こうやって寄生して遊んでいるのは、この世の者でない部類では変わった事じゃあない。
「あ、彼女きたよ」
変人が来たのを察して、立ち上がる。
「ぬ、ぬえーっ!追い払ってよぉ!」
「ええっ?元はと言えばタタさんがエスコートしたんでしょ?ちゃんと手を引いてあげないと」
「あれはいっときの迷いで((ry…ぎゃーっ!」
「ママ〜〜」
雷光と共に現れた女の子に、多多邪の宮は切実に悲鳴をあげた。
年端もいかないその子供はかつて多多邪の宮の手を取った、言わば同族や眷属に近しい存在であろう。
彼を唯一怯えさせる存在でもある。
「ジゼル!友だちでしょ〜っ!助けて!」
ズルズルと引きずられていく『友だち』に彼女は笑う。
「友だち?タタさんにはそんなモノいないでしょ?さっき言ってたじゃん」
(それにさ、自ら作ったのは敵しか、いないでしょ。あー、愚かしい。面白い。そういう所も好きだよ)
心の中でそんな意地悪な言葉を吐いてみる。
ぬいぐるみの腹に詰め込まれる多多邪の宮を眺め、ジゼルは踵を返した。
「さてと、伝書鳩の任務に戻らないと…」
二人の関係について。




