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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆litとInsane☆  作者: 犬冠 雲映子
きりとりせん(多多邪の宮の悪趣味城塞編、etc)
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ろうじん と らくえんのおわり(第15話)

多多邪の宮さん迷宮シリーズです。

「で。こっちの扉でええの?あっちにも同じのあるけんど」

 これまで通ってきたような一方通行ではなく八角の内、扉が瓜二つ、隣合って構えていた。瓜二つではあるが片方のは蓮の花が薄らと彫られている。

「蓮の花が彫刻された『五』の間に行けばタタラバへたどり着けるガウ」

「五か、四の塔楼は…」

「さっき倒壊したガウ。四、信者から搾取していたシ──死を閉じ込めていた塔楼はもう役に立たないガウ」

 ふむ。とミハルは頷いた。

「あの爺さんは六道輪廻を表したかったんかねぇ?」

「まあ…多分そう、ガウ。僕はその時代の宗教にあまり詳しくないガウ。えー、どれどれ。説明書には入り口は裏鬼門なので『南西』三番から四番の塔楼へは本堂を通るガウ。裏鬼門へ鬼門へ向かう通路らしいガウ。わざと不吉な事をして死を無くそうとした形跡ガウガウ。もはや六道輪廻を目指すとか関係なくなってるガウが」

 六道輪廻。大ざっぱにいえば、六つの世界がありそれにランダムに割り振られる。生前の行いが左右するために、人間は必死に良い世界へ行ける事を願う。

 だがバティがディスプレイに出したのは魔物が咥えた丸の中を、六つの世界など存在せず人間がひたすらに極楽を過ごす異質な絵だった。

「なんやよ。この魔物は」

 牙の鋭い、四つ目の鹿に似た生物。鹿か、カモシカか?角には死人の皮らしきものがこびり付き、垂れ下がっている。

「多多邪の宮ガウ」

「あの爺さん。多多邪の宮の本性を見抜いてたんか」

「ハハハ!そうかもしれないガウ!アハハ!愉快だガウっ!ざまぁみろっガウガウっ!」

 悪鬼の如し険しい顔をした異形の魔物に囲まれ、人間たちは何も知らない。なぜ楽しそうに笑っているのかも。守護神がとんだ悪魔かもしれぬのに。

「最後のタタラバには獅子の門の前に『流転の箱』が並べられているガウ。その封印を解くと、魂は『流転できるように』なる──そうして、タタラバを壊せば…」

 悪どい顔をしたバティは仕切り直しとばかりに、手を叩いた。

「お二人共!流転の箱に詰め込まれないよう、がんばるガウ!」

「る、るてんの箱とか、負ける気しかしねえよ…」

「はぁ〜。多多邪の宮のヤツ、投げやりやったかんな。手応えがない。もっとコンテニューするかと思ったのによぉ」

「へ、変態だ…」

 怯えながらも彼女はミハルへついて行く。





 ──いくら神に近づこうとも。我は神にはなれぬもの。


 ──…神は気まぐれ、日暮れの昏れに姿を消しては惑わすばかり。


 誰かがほぼ吐息に近しい囁き声が廊下に響く。

「な、何?!」

 ギャビーがすぐさま真後ろに隠れてきた。廊下も大層な装飾が施され、高身長のミハルも普通に歩けるようになっていた。

 天女が楽しそうに舞い、楽器を演奏する。美しい雲の流れと咲き乱れた蓮の花。祝福に満ち溢れた風景。まさに極楽への通路。

 最終ステージであると物語っている。


 ──ああ、神さま。私の家族を、元に戻してください。それだけでよかった。それだけで…。神さまは無知であった。だから。


 ──私は神にはなれぬのか。どうして。皆、神はあちらだと言うのか。


 蚊の鳴くような声がボソボソとどこからかしては掻き消えていく。

(…じいさん。アンタの後悔も、支配も今日で終わりやよ)

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小説家になろう 勝手にランキング

かなりランキングに向いている作品とは思えませんが、ぽちィーーー!!!としてくれるとマンモスうれピーーーー!!です。

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