てついとわーるど
無意味名 パビャ子は何か異様な気配を感じ、工場群の敷地内に侵入した。
確かについ数年前までは工場だったようだが、今は倉庫として使われているのか。積荷が窓から覗いていた。
ウロウロと目新しいもの、または食べ物を探していたがこざっぱりとしていて無意味だと悟る。あったのは配りわすれた印刷物の山と、一台の軽自動車だった。
ここに居ても仕方がない。そう思い、出口がないか見回した。
すると少しだけ扉が開いている建物がある。そこから変に、異様な気配がしている──と、パビャ子は納得した。
人が通れるくらいの隙間をくぐり抜け、中に入ると。
「会場にようこそ。これからアート作品としての鉄糸ワールドをお楽しみください」
いきなりアナウンスが流れ、重音が四方から響き渡る。機械が起動したのだ。
「えー。なに、なに」
キョロキョロとしていたパビャ子に鋭い刃のような鉄の糸が何本も迫りくる。しかし彼女は硬すぎるので金属はすぐぶつ切りになり、再起不能になった。
「え?終わり?何?え?」
キョトンとしていると、工場であった建物の真ん中辺りに細切れになった死体が転がっている。手にはリモコンか、起動スイッチか、残骸が握られていた。
もしかすると『アート作品』を作り上げた作者かもしれない。間違えてスイッチを押してしまい、機械に殺められたのだろう。
かなりの時間が経ち、血の海も乾ききっている。
「意味わかんない」
積荷の持ち主でもあったのだろうか。壁には体験型イベントとしての宣伝ポスターが貼られていた。
なぜ、鉄の糸の作品を作ったのか。
それは作者にしか分からない。他人には絶対に理解されない。
「よく分かんないけど余ってるポスター貼ってみようかなぁ」
そんな事を口にしながら、彼女は食べ物を探し始めた。
パビャ子は何があっても無傷なのである意味最強兵器です。