じかい と きゅうさい(第14話)
多多邪の宮さん迷宮シリーズです。
「ハアア?おまいさんヨォ。狂った遊園地やってる癖によくそんな事を口にできんな?それを遊園地の餌になったヤツらに言ってみなあ?」
地面に叩きつけ、顔を覗き込む。
「くたばれ弱虫野郎」
それを聞いて頭に余程血が上ったのか、ギャビーは歯を食いしばった。キッと睨め付け、怒鳴った。
「俺だって好きで遊園地の仕事をやってる訳じゃないっ!誰も止めてくれやしねえんだ!誰も!俺も、生きていた頃の焼き回ししかできねえの!お偉いさんも視察にも来ねえし!アレはずっと回って──」
頭をスコンと叩くと、ミハルは快活に笑う。
「なら、今度はおまいさんがソレを壊す番やよ。オイラもそれを目指してる」
「え?」
「さあ。赤ちゃんを腹に戻してやろう。もう、あの子は眠るべきやけん」
「は?え?どうやって?」
泣きわめく苦しげな赤ん坊へ顎をしゃくると、彼は歩みだした。その足音を効いたミイラ化し、ほぼ皮と骨の産婆たちがミハルへ見かけによらずな俊敏な動きで襲いかかる。
しかしミハルが指を下に向け──サムズダウンのハンドサインをすると、産婆たちが音もなく塵と化した。
「野郎。なかなかやるガウっ」
目を輝け沸き立つバティに気を取れるが、ギャビーは悪寒がした。あれと正面きって戦えるだろうか。
「…あれが、伝書鳩の最高格の力…逆らわないどこ」
「無へ帰るんよ。黄泉路できちんと母さんと、帰るんよ」
赤子を優しい仕草で手に取り、母親の腹にソッと戻した。すると母親の悲鳴と無惨な傷口が癒え、共々白骨化していく。
『金久蘇』が消えた今──悪趣味な違法建築のどこかが倒壊し、轟音と共に御堂が激しく揺れた。二人は何とか体勢を保ち、天井から煤埃が降ってくるのを眺めるしかない。
「白スーツ!お手柄ガウ!生と死が通常の流れになったガウガウ。はー、長い時間だったガウ」
「生と死?そんなスケールでかいのが狂ってたのか?」
「そうガウ。人間にはそれが正常に流れなければ無茶苦茶になってしまうガウ」
我々は例外だガウガウ。と彼は付け足した。
「『金久蘇』はそれを乱していたのか?何のために。ああ…教祖と神のためにか」
ギャビーは白骨遺体を眺め、虚ろな目をした。
あれだけ燃え盛っていた邪火炎が下火になっているのを誰もしらない。




