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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆litとInsane☆  作者: 犬冠 雲映子
きりとりせん(多多邪の宮の悪趣味城塞編、etc)
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たたら じんじゃ えんぎ(第9話)

多多邪の宮さん迷宮シリーズです。

「意味わからんわぁー。何でこの屋敷に説明書あってん」

 商業施設な匂いを漂わせる仕様に苦笑してしまう。

「多多邪の宮が封印する前、渋々…働いていた時に説明書を渡してきたガウ。これに従って作業をすれば何とかなるとか言いやがったガウ」

「テキトーなヤツやんな」

 呆れるも、バティへ説明書が渡されたようで読みはじめる。

「自己の罪に対する畏怖をまず、この塔楼で捨て、新たな存在に生まれ変わるガウ。おおよそ九割の人間は死ぬガウ。運良く生きた人間が次の場所へ案内されるみたいガウ。こちらが『金蓮(おうれん)寂光浄土(じゃっこうじょうど)』施設内の地図ガウ」

 バティが説明したように八角堂の周りをざっくばらんに六角形の塔楼が並んでいる。右上には謎の小さな部屋が多数あり、用途は不明だ。廊下が縦横無尽に張り巡らされた様に火事が起きたら逃げられないな、とミハルは頭の中で場違いな感想を抱いた。

「嫌だ!痛い思いしたくない!」ギャビーが塔楼の数を目の当たりにして喚く。

「痛い思いさせてきた奴が言うセリフかよ。おまいさんはじっく〜り修行せんとな」

「ヒイッ!」

 そうこうしていると、勝手に隠し扉が錆び付いた音を立てながら空いた。

 次の場所まで招き入れたいようだ。




 先程より成人した日本人が楽に歩けるほどの廊下だ。相も変わらず足元は軋むが…。

 渡ると外を窺い知る小型の窓からは瑠璃が散りばめられ煌めいていた。どんな細工をしているかは分からないが、今の世の中ならSNS投稿での映えスポットになるだろう。

「この模様はなんなん?」

 廊下の保存状態が良いためか、壁に模様があるのに気がついた。

 バディはううむ、と唸り、必死に思考を巡らしている。

(コイツ…お偉いさんに劣らず世間知らずな感じするなぁ)

「雲か煙でないかガウ。これは説明書には記載されていないガウ」

 雲が廊下の先に流れるように書かれ、木や建物をなぎ倒していく。そんなふうに見えた。薄れつつあるがかなりの迫力がある。

「うーん、火砕流?」

 ギャビーが目を凝らして小さく呟いた。

「何でそう思うん?」

「形が似てるから。ほら、煙が滑り落ちるみたいな形をしてるし、後ろっかわには巻き上がる様子も似てる。昔、テレビで目にした事があるんだ」

 ふむふむ、とバティは説明書を捲り、これか?と読み出した。


 ──ある所に火山群があった。とある火山では大規模な噴火が起きていた。

 その際、一際大きな火砕流が起きた直後、光り輝く祭神が降り立った。

 踏鞴神社縁起では地に降りたった祭神に、全滅した村の、唯一生き残った現地の老人が極楽浄土を説いた事から始まる。


「──それがこの歪んだ世界の縁起ガウ。多多邪の宮は気まぐれに地面を踏んだだけで老人を救う気もなかったガウ」

 捨てる神あれば拾う神あり、か。

 老人の大罪はかの子供を神と勘違いした事である。

説明書を誰も読まなさそうだ…。

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小説家になろう 勝手にランキング

かなりランキングに向いている作品とは思えませんが、ぽちィーーー!!!としてくれるとマンモスうれピーーーー!!です。

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