ろうかで ざつだん(第7話)
多多邪の宮さん迷宮シリーズです。
ギャビーくらいの背丈ならまだ楽だが、上背のミハルにはキツイ低さの廊下が延々と伸びていた。壁にはたくさんの護符らしき物が貼られ、いかにもな雰囲気を醸し出している。
淀んだ空気の中、モニターに居座る少年に問う。
「この護符に意味はあるん?」
「うーん…神が出ないように隠している、だったはずガウ…」
「神、多多邪の宮?」
「ガウ」
「おかしな話やん。フツー神様はこの場所を依り代に居着いてるのに、逃がさんと小細工するなんてよ」
パーラム・イターが近くに居たから、彼はこの地に『降臨』した。監視目的ならそれで十分ではないか。
「アイツは束縛魔の癖に他人から縛られるのが嫌いガウ。人の下につくのも嫌いガウ。だから何回か祟りを起こしたんだガウガウ」
「自分勝手だなぁ」
「だから僕はアイツが嫌いなんだガウ!」
力強く画面を殴ってくるせいで画質がザラついている。相当な嫌いように彼らにも人間模様があるのだと伺えた。
「ま、まあ、何となく分かるよ。俺も同僚の性格が無理で職場が嫌いだわ…」
「おまいら、過酷な環境にいるんやね」
(この際、同僚にも会ってみたいな)
「オメーの組織も相当アレだよ。管理がどうなってんだよ」
「ガハハ!支部だからテキトーで良いんよ!」
笑ってみたもののチャラにはならなかった。二人はミシミシと軋む木板の廊下を歩く。誰も修繕していないのか老朽化しているようだ。
「どんちゃん騒ぎしてる割に廊下は寂しいなぁ。しかも屋根が破けちまってるやん」
「ま、まあ…頭イカれてそれどころじゃないんじゃね?」
「は──」
ズボッと床が抜け、視界が歪んだ。その合間にギャビーの悲鳴が聞こえたが、我に返ると床が壊れた前にいる。
コンテニューしたようだ。
「老朽化で死ぬアホがいるか!痛えよ!痛みは引き継がれんのかよ!」
「当たり前ガウ。そこまで僕も力が回らないガウ。封じ込められた以上、それくらいが精一杯ガウガウ」
フン、と彼はいじけだした。
「あーいたたー。罠みたいになっとるやん」
なぜだか下は針山地獄を体現した奇妙な光景が広がっている。鋭い金属の先端がギラリと光っていた。
「ああ、これはどこからか来た高僧に多多邪の宮が依頼されて作った物ガウ。人間の地獄、罰を表しているらしいガウ」
「は、はあ…めちゃ痛いから罰にはなるかもな」
引きつった笑いで彼女はこちらによじ登ってきた。
「なんなん?重たいんよ」
「俺、天使じゃねーから空とかは飛べねーんだ。よろしく頼むよ」
この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
です。




