NPC のん・ぷれいやー・きゃらくたー(第5話)
多多邪の宮さん迷宮シリーズでええす!
バティさん初登場!!
「人?宴会でもしてんのか?」
ギャビーが気味悪そうに言う。祭りの最中の楽しそうな笑い声や音が聞こえた。どんちゃん騒ぎが逆に気味が悪い。
瓦屋根や壁が崩壊しつつあるのに。
「行方不明になった人たちがいるのかもしれん」
「ああ、なるほどな。あ、」
「ん?どした?」
彼女が鳥居を見返すと、悪趣味なネオン看板には『愧堕焚邪神宮』と記されていた。
「踏鞴神社ってのも偽造だったんか〜」
「そこまでして隠したいのか?てか、あの…、怪しいホテルじゃないよな?!」
ジタバタし始めるスパイに笑いが止まらない。
「おいおい。忍び込んどいてハニートラップの手法とかも知らないのか?スパイさんよ」
「俺はそんなのをするために下界に来た訳じゃ…もうヤダ。帰りたい…」
「そこまでして獲物を誘い出すほど小物じゃないんやな?おまいさんは。恵まれたヤツやの」
睨まれたが、それは真理だ。
何人かスパイを見てきたから分かるが、悲惨な結末ばかりだった。コイツはいつまで伝書鳩の中で袋叩きにされないだろうか?
「遊郭みたいな場所っー事かね。ここは」
(多多邪の宮もそうとうアレな頭しとるわ)
娯楽。享楽。悦楽。
人間の好きなモノを容易く提供する。浅ましく、傲慢不遜なやり口。吐き気がする。
「はー、とっと爆破しちゃおうぜ」
「できるかなぁ?君に?できるのかなぁ〜?」
「ガウガウ!爆破するならやってみやがれ!ガウ!」
どこからふざけたセリフが聞こえ、二人は辺りを見回した。
「多多邪の宮の野郎!良くも放置しやがって!ガウ」
(初っ端から変なんでてきたなあ)
「どこにいる?!」
「お前のモニターを出せ、ソレなら出現できるガウ」
ギャビーは狼狽えて、右手首を操作する──とノイズ混じりのモニターが現れた。『故障中』と書かれた画面に謎の人物が出てくるではないか。
「リクルートスーツ軍団か、おまいさんは」
「そうだ。僕はバティ。多多邪の宮の下の階層だが、あの甘ったれた女よりは上ダガウ」
「しかしそのキャラ作りはなんや」
軍人のような格好をしているが、どうもギャップが激しい。
「野郎に呪いをかけられて変な口調になったガウ!」
「…内部分裂してるじゃねーか」
「仕方ないガウ!アイツが変だからガウガウ!」
画面をバンバン叩いているが、こっちはどう反応していいか分からない。
「僕を解放するために、手伝って欲しいガウ」
「悩むなぁ。おまいさんが解放されたら、危険因子が一つ増えた事になるんよ」
「酷いガウ。解放したら多多邪の宮とパーラムをビンタするガウ」
「あー…」
封じられた時から時代が止まっているようだ。ミハルは考えあぐねた結果、やんわりと社交辞令をしておく事にした。
「解放できたらな!オイラたちも生きて帰れるか分からんし、そんときはそん時よ」
「それは困るガウ」
「とりあえず見学してみるけん。またな」




