いぎょう いじょう じょうさい(第4話)
多多邪の宮さん迷宮シリーズですう!
鳥居をくぐると、奥にこれまた巨大な建築物が現れた。結界で隠していた訳でもないのに鳥居を境に突然現れたのだ。
(さすがは多多邪の宮。桁違いやけん)
竜宮城を思わせる竜宮造りの建物を母体に増築を繰り返し、違法建築の城となっていたで。入母屋屋根が幾重にも、四方に向けられている。
大きさは大型の観光ホテルくらいであり、5階建て以上はあった。
ミハルはいったん引き返し、神域から出て鳥居からではなく横から建物を探してみる。
あるのは良く見かける小さい社殿だった。屋敷神の社規模の『踏鞴神社』へ先にギャビーがたどり着き、観察している。
「鳥居の割に小せえな…」
「崩れそうやん。平成から令和ってまだ三十年くらいしか経ってないのになぁー」
(カモフラージュか…こすいなぁ)
結界らしさを匂わせないほどの技量に、内心ムッとした。技としてではなく天性の能力なのだろう。
「つーか、ギャビーちゃんは鳥居くぐらないん?」
「えっ。あ、門をくぐるのが苦手で」
「吸血鬼かよ〜」
「俺の職場に繋がってたら嫌なんだ…あとピンクだし…職場を彷彿させんだよ…」
(そこまで嫌がるなんて…パワハラ受けてるんかな?)
渋い顔をしている彼女を前に『無明のカルーセル』のある職場を考えてみる。
遊園地だろうか?無明、とつくのだからマイナスなイメージが付きまとう。地獄に似た何かなのだろうか?
(この世に地獄も天国もない、そのはずや)
ミハルはウーム、と悩んだ末、先程あった建物の話をした。
「どんな仕組みでそうなってんの?」
「神さまパワーなんよ、きっと」
「ますますくぐりたくなくなってきた…嫌だァ…」
「竜宮城みたいやったけん。ギャビーちゃん好きそうやね」
「竜宮城?あ、ああ、浦島太郎の」
「まーだ門をくぐるの躊躇しとんかい!」
小さな体を捕まえて担ぐと、ズカズカと歩き出した。
「オイッ!やめろよっ!やめろーーーーーー!!!!!!!」
予測不可能な動きをしながらジタバタしてみせるが、背丈の低く細身の彼女は容易く鳥居の内側まで連行された。
「な、なんじゃこれっ?!」
「多多邪の宮の隠し機能やよ」
「地球の上級クラスの化け物か?!」
(宇宙にいもいるんか?コイツ、謎だらけやん。まー、勝手に身の上明かしそうだけん。黙ってやるわ)
「確かに上級かもな。主体になる存在から色濃く異能を受け継いでやがる」
「わああ!!帰る!俺はそういうのを観測するために下界に来たんじゃねええ!!」
「落ち着き。見てみ?人がおる。怖い所じゃないんよ」
先程までヒッソリと佇んでいた城砦に明かりが灯り、ワイワイガヤガヤと楽しそうな声がしていた。




