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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆litとInsane☆  作者: 犬冠 雲映子
キリトリセン(サリエリちゃんの開かず扉の鍵、隠し神編、他)
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あらたな かくしがみ

「あーあ、終わっちゃった…」

『イヨ子の幽霊』はそれだけ呟いて、懐かしい町を眺めた。いや、彼女は正確には八重岳 イヨ子ではない。

 真の八重岳 イヨ子の存在は無意味名 パビャ子の基礎になっている。

 髪を強風になびかせる少女は黒々とした森の輪郭に踏み入れる。人や獣を呼び寄せ、喰らう性悪なこの世の者でない部類。

 かの悪しき部類の存在こそは。

 隠し神。

「…恨みませんよ。私を新しい存在にしてくれたのはパーラムさんですから」

 生まれ落ちるはずの本来の隠し神は──本体は消失したが、囮になり得た残留思念の凝り固まった新たな『隠し神』に重点が傾いた。

「きっと『私』も喜びます」

 八重岳 イヨ子は今の自分を目にしたら嫉妬するだろう。実態を持ったパーラムの仇。独り占めしていた悪者。

 クスクスと笑うと、パトカーのランプに当てられた。

「君、家出したのかい?」

 警察官が降りてきて補導しようと歩み寄ってくる。

「…いいえ」

 か弱い娘を装って、首を横に振る。

「塾の帰り道、さっき…こっちで声がしたので。なんだろうなーって」

 森の奥を指さし、彼女は心配そうな声音を出した。警官はこの辺りにこのような深い森があったかと訝しがったが、確かめにいかなければならない。

「お嬢ちゃん。ここで待っててね」

「はい」

 警察官が暗闇に踏み入れるのを見送り、少女の唇は微かに笑った。


 隠し神は消えない。何度消されようとも。

 此岸がある限り。

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小説家になろう 勝手にランキング

かなりランキングに向いている作品とは思えませんが、ぽちィーーー!!!としてくれるとマンモスうれピーーーー!!です。

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