ふたりの しあわせ
サリエリちゃんシリーズは完結しました。
春を通り越し、初夏を思わせる昼間にラファティ・アスケラはすっかり変わってしまったかつての上司…サリエリ・クリウーチを前に、静かに髪を編むしかなかった。
ただヘラヘラするサリエリの髪色はブロンドヘアーでなくなっている。きっと茶が混ざり、同胞の特色を失うのだろう。
今は隣で頭に花を乗せるパビャ子の髪色に似ていた。
「じゃーん。花かんむり!」
「花かんむりっていうのは編むんだよ。それじゃただ置いただけだろ」
「そんなぁ。でもとっても嬉しそう。サリエリちゃん。良かったねえ!」
ヘラヘラしたサリエリをパビャ子はキラキラした目で見つめていた。
「ン?」
川岸の向こう側で本来のサリエリにそっくりな少女と白いスーツを着たわずか年上の女子が座り、何やら楽しそうに笑っている。
二人で他愛もない話をしているかのようだ。久しぶりの再開で話が途切れない、そんなような。…あれはあちら側だ。パビャ子は無意識に悟った。
彼女たちは、この世のあらゆる苦しみから解放された理想郷にいるかのような、重荷のおちた雰囲気に包まれている。
良かった。それで良かったのだ。
「良かった!二人とも幸せそー」
「え?二人?…よく分からないけどよ。サリエリが幸せそうならいいや」




