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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆litとInsane☆  作者: 犬冠 雲映子
キリトリセン(サリエリちゃんの開かず扉の鍵、隠し神編、他)
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さよなら さりえりちゃん

サリエリちゃんシリーズです。

「あははっ。イい案件を見つけたもんだよぉ…ねえ?撃ち落とすのが上手い暗殺者さん?知らない人から食べ物をもらっちゃいけないって教わらなかったの?あっ、聞こえてないっか〜」

 その頃、尾先ヶ 間蔵は不可思議な宇宙施設を稼働させていた全ての機会を停止させ、くたびれた通称『無猟の地』を眺める。

 手入れの行き届いていない制御装置だらけの室内。ゴミが溢れたクズカゴ。埃が積もった床。

 割れた蛍光灯。いつからか替えられていないヘドロの水槽。

 もうかなり前からこの施設は用を成していなかった。

「あなたの失敗は潜入が苦手なダッチバーンを下界へ向かわせた事。そうして自分たちは捕まらない、痛めつけられないという慢心さ。ははっ、ま、別にマクラちゃんはなんの得にもならない仕事をしている善人ですからぁ。急所は外します。感謝してくださいね〜」

 尾先ヶ 間蔵は小さく祈る。自らの祖へ、彼女の施設へ。

「獣も鳥も獲れませんように」

 見知らぬ人からもらった飴を舐め、昏睡し床に転がったフープ。今やこの遊園地は動かない。

「さょうなら。トーローテレイン・フープサン」

 間蔵は天真爛漫な表情を貼り付けて、隠し持っていた刀をスーツ脇から取り出した。



「彼女を生き返らせなくていい。僕も、すぐにあちら側へ行く」

「…ギャビー。ありがとう。君がいなかったら今の僕はいなかった。なのに忘れるなんてさ。笑っちゃうよ」

 優しい瞳で蒼白な死体を見つめ、語りかけた。

 冷却装置が働かなくなった炉が警報音を出す。ジワジワと青白い光が瞬き始め、蛍に似た燐光が舞い始めた。

 ──サリエリちゃん。見つけてくれてありがとう。

 融解していく青白い光の中──ギャビーの声がして、ハッと眼前を見やる。白む視界に出現した彼女へサリエリは手を伸ばした。

 二人の指先が触れ合い──

 遊園地はメルトダウンを起こし爆発する。





 アイシュワリヤの使者はそれを、無表情のまま煙を仰いだ。手には通帳が握られている。

「はあ、疲れた…頼まれた割に報酬は…少なっ」

「やほう。マクラちゃん。ジゼルさんに感謝してくれないのー」

 背後から明るく人当たりのいい、子供の声色がした。間蔵はサッと通帳を隠し、背筋をシャンと伸ばす。

「あ、あざすっ!助かりました!お世話になりました!指摘通り、サリエリ・クリウーチとトーローテレイン・フープの人黄ポイントを頂く事ができました!後日、お礼の品をっ」

 慌てふためいてお辞儀をするも──ジゼル・クレマンはニヤニヤしている。

「君のような人柄は好みだよー」

「ひ、ヒイッ」

「…ジゼル容疑者。私の部下に何をしてくれている?」

 凛とした声色が響き、二人は視線を横にやる。

 シャナリとした動作をした白いスーツの女性。かなりの長身で威圧感のある仏頂面、そうしてジゼルを前に怖気付かずに見下している。

 それを前にしてリクルートスーツのか弱い女子はさらに萎縮した。

「やあ。アリーちゃん」

 ──アリーと呼ばれた女性は、さらに睨みを聞かせる。

「容疑者なんて呼ぶのはやめてよー。ジゼルさんはアリーちゃんの上司なんだし」

「ふん。おまえのような八方美人は好かない。ミャオアスへこのような暴挙を起こしたと通達しておいた」

「ちえっ。まーいいや。違法原子炉を破壊できたからいいでしょー?表彰もんだよう」

 むん、と年相応の不満そうな顔でジゼルは歩き出した。

「仲間なんだから穏便にいこうねー」

「あ、アリーさん、ありがとうございましたあ。じゃあっ」

 つかさずもこちらも逃げようとする。しかし首根っこを掴まれ、困惑した。

「ひ、ひゃ〜〜~」

「サリエリから貰い受けた報酬とやらを返せ」

「あ〜〜~あの、マクラちゃんは報酬を返せますがあ…ギャビー・リッターを見つけたいと言った依頼主さんはもう、そちらの存在ではいられないんですう。我々の祖直々の、そういう決まりでしてえ」

「…。しょうがない。報酬のみを返上してもらう。サリエルの枠組みには新しい者をあてがう。全くめんどうなハエどもだ」

「ハエどもだって。チェ。無慈悲なヤツ〜」

 呟くも彼女は何も言わず去って行ってしまった。「どいつもこいつも、変な事ばっかりだわ。めんどくさっ」

 吐き捨てると、尾先ヶ 間蔵はフワリと宙に浮き、此岸へ戻る。

「さよなら。サリエリちゃん」

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小説家になろう 勝手にランキング

かなりランキングに向いている作品とは思えませんが、ぽちィーーー!!!としてくれるとマンモスうれピーーーー!!です。

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