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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆litとInsane☆  作者: 犬冠 雲映子
キリトリセン(サリエリちゃんの開かず扉の鍵、隠し神編、他)
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かくしがみ の ごじつだん

隠し神編の後日談みたいな話です。

 厄介な日だな、と至愚はため息をかみ殺す。

 後光が差している。黄金色(こがねいろ)の亜空間では美しくたなびく雲さえ作り物が見え透いていた。

「ゃぁ、稀代の禍根術士〜」

 白髪に近しい色素の薄い茶色びた長髪がなびく。たおやかな表情の奥にドロドロとした負が渦巻いていている。

 神聖さを放っているのに、邪悪さが隠しきれていない──『神』を超越する存在。

「多多邪の宮。久しぶりだね、いや、いつぶりかな?」

「さあ?わえに時間なんてないもの」

 燕尾服を翻し、さらに近づいてくる。適わないのを至愚は存じていた。だからせめて平然と立ち向かい、強がってみせた。

「徒魚。パーラムを返して?ね?ね?」

「返す?多多邪の宮。貴方は個人を所有物だとでも思ってるのかい」

「そうさ!わえは誓ったのよ!パーラムを幸せにしてあげる、とね」

「…私はその考えは好まないが…」

「別にいいよ。この世にはたくさんの考え方があるんだもの。で。パーラムは返してくれる?」

 人面獣は首を横に振る。

「私はパーラムを所有していない。彼女が帰りたいと思ったら、きっと帰るのだろう」

「なぁにそれ?ウッザ──まー、いいやー。時間はたっぷりあるから待つよ!わえは優しいからねええ」

 白檀の香りを振り撒きながら彼は消え去った。内心無事で済むと思っていなかったが…。強ばり逆だった毛並みを寝かせると、至愚はのそのそと歩きはじめる。

 脅されたのは初めてじゃない。だがあそこまで直接的な牽制は今回だけだ。



「多多邪の宮のヤツ、目ざといわー。きんも」

 表に現れたパーラムがシッシッと残り香を払う。

「ある意味羨ましいよ。どでかい人脈があるってのは」

「ハア?皮肉かよ。まーいいけど。なぁ、徒魚♡今日はなんの菓子をくれるの?それとも出血大サービスで人黄くれるの?」

 舌なめずりをする様子に内心ため息がでるが、『人畜無害』に成り果てた今、彼女の態度は正しいと思える。パビャ子程では無いが腹が減るのだろう。

(パビャ子はコイツの成れの果ての果てみたいなもんだし)

「ハア…毎日毎日、精気をねだるなんてサキュバスみたいじゃないか…」

(あたしが想像していたパーラムではないぞ…)

「サキュバス?アタシはそこまでのべつまくなし食うゲテモン好きじゃない。信頼して言ってるんだけどお?」

 背中に頬ずりされて気味が悪い。自分自身を人黄のストックだと認識しているのか?

「ラフがカステラを買ってくるそうだからそれをもらいな」

「つれなっ。それともサキュバスよろしく交尾でもしたい?いいぜ。こちらは準備満タンだ…」

「お前──」

 項が逆立ち、振り返ると妖しい──ギラギラした目付きをした茶髪オンナがいた。捕食対象を見据えるソレで熱い息を当ててくる。

「好きにすると良いと言ったろ?アタシを使って欲求不満を解消してもいい。サキュバスや妖狐なんて大それたモンじゃあねえし、生憎今は異能もないただのオンナだけどね」

 ご安心を。とのたまうパーラムに、至愚は恐怖を感じた。

「あ?!?熱でもあるのかい??」

「つれねーな。せっかく誘ってるのに。いいや!今日はナシ!カステラ食べる」

 スッパリと消えたヤツに肝を冷やされたまま、意図が分からずゾワゾワと総毛立つ。こちらは女性を性的対象にする気は無い。元より巫者として生娘のまま、道を外しここまで来てしまったのだ。

 あれは何だ?からかう範疇を超えている。

「アイツ…どういう教育されてきたんだ…」

ガールズラブ要素がやっと出てきたような?気がします。

いや、この人たちはガールズなんでしょうか…。

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小説家になろう 勝手にランキング

かなりランキングに向いている作品とは思えませんが、ぽちィーーー!!!としてくれるとマンモスうれピーーーー!!です。

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