らふくん と ひまつぶし
パーラムは『豚箱』の中で菓子を食べて、雑誌を読んでいた。看守役のラファティ・アスケラがたまに雑誌や本をよこしてくる。
暇つぶしをしろという事だろう。
「あのぉ〜、それ図書館で借りた雑誌なんで汚さないでくださいね…」
ポテトチップスを容赦なく食い散らかしているのを横目にラファティがゲッソリしている。
「ふぅーん」
「あー、聞いてないや」
「ねえ、乎代子チャンは元気?」
「えっ、あ…えっ、元気ですよ…?」
「そう」
「な、何ですか。いきなり」
口の周りについたのり塩味をベロベロしていると、半ば青ざめた様相で問うてきた。
「アイツ、頑なにアタシの力使わないよね〜〜。なーに気後れしてんだか」
「ファッ!?」
「ァ?何?」
看守役よろしく抱えていたボードを落とし、檻越しに詰め寄ってきた。
「至愚さんに全部の力をあげたはずじゃないんですか?!」
「まあ、『あの時持っていた分』はあげたさ。その前の乎代子と契約した分は別。要は乎代子が所有している。そんなモンだろう?」
床暖房にベッタリと寝そべると欠伸をする。その様子を前に彼は慌てていた。
「何を焦る?アタシは退職してもう隠居の身だしぃ?だいたい力を行使するのは乎代子の勝手になる。あのオンナの人生なんだ、誰も責任をとる事も保証もしない」
「…まあ確かに。彼女にも人権や個人としての尊重はあります。けど」
「アンタが徒魚にチクって、アイツが異能を奪うのならば…それじゃあ束縛魔セクハラジジイの多多邪の宮と同じになるぜ。欲深さが試されるなぁ。徒魚さんよォ」
ニヤニヤと下世話な笑みに、はああ〜〜と雑に息を吐いた。
「おや?看守さん?まさか不正を働くの?囚人の口実をもみ消すつもり?よろしくないな〜。く…腐ってやがる」
「めんどくさいんスよ!あんたと至愚さんで板挟みになるの!」
「おいおい。ナヨナヨ星人かよ」
ポテチをパリパリ咀嚼するとパーラムは人間の作り出した食べ物も捨てたもんじゃないな、と感心する。
頑なに人の真似をしていた先人が思い起こされる。──元気にしているだろうかとソッと気にして、あの人も酔狂だと嗤った。化け物が人間のか弱さを愛するなどただの下等生物としか見出してない。やはりあの人も生粋のこの世の者でない部類だ。
「別にお仕置されてもいいぞ♡そういう嗜好も有りだ」
「はあっ?!」
「徒魚の好きにすればいい。煮るなり焼くなり」
「…じゃあ報告しますよ。後悔しないでくださいね」




