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おん ねん シ ねん

「きれいな パビャ子」の最終話になります。

「何を今更。アイツらの脳はアタシが作ったんだ。行動履歴を参照するくらいザラさ」

 それだけ言うと、ラファティへアイコンタクトをとる。

「パビャ子からバグの原因となった膨大な情報を消そう。でないと再構築できない」

「壊さないでくださいよ…こう、頭をぐちゃぐちゃーって」

「血が苦手なのどうにかしろ」

 安眠する茶髪オンナお姫様抱っこすると、廊下に出た。刹那、パビャ子が目を覚まし、白いスーツ──腕に牙を立てた。

「いでええ!?!」

「ぐぅぅ!!」

 予想外の行動に、ラファティは素っ頓狂な声を上げるが、当人は髪をざわめかせ牙を剥く。

「遘、ヮわ、私の存在を──消すつもりか。化け物ども」

「──イヨ子、」

「お前はあの時、私を利用した。利用するならまだしも死を愚弄しまた利用しやがって」

 至愚はジッと『イヨ子』を見据えた。

「文句をたれるなら小刀を返してもらおうか?お嬢ちゃん」

「返すものか。私は絶対にパビャ子さんを手に入れる。私を利用するのならお前らを利用するまで」

 邪悪に笑みを浮かべ、至愚の頭を『何か』ではねた。血も飛び散らず生首は廊下に転がる。

「っっっ………!!」

 ラファティが悲鳴もあげられず、ヘナヘナと地べたにへたり込む。

「こ、殺さなでくれっ!お、俺はお前にはなn…」

 首だけになった至愚はフウッと気を込めた吐息を出し、唸るように念じ始めた。

「日光月光、愛宕・摩利支天・不動明王…守護せしめたまえ──」

「このアマ!!」

 イヨ子が飛びかかろうとするが、彼女はピシャリと言いのける。

「オン・カラカ!ラビシバク・ソワカ!ウン・ジャクバンジャクギャカーシカーン!」

「な、何だ?呪文…?」

 透明な板に跳ね返され、イヨ子は転がる。重しを乗せられたかのように床に這いつくばった。

「この、このこのこのっ!!!ワタしは、わたしは」

「すべてすべよ、金剛童子。膝ひっしとすべよ、童子。膝ひっしとすべよ、童子。搦めよ、童子。不動明王の生末(しょうまつ)本誓願(ほんせいがん)を以てし、この悪魔を搦めとれとの大誓願なり。搦めとりたまわずんば、不動明王の御不覚(ごふかく)、 これに過ぎず。タラータ・カーンマーン・ビシビシバク・ソワカ。立てさまなれや、十文字。横さまなれや、十文字。不動山倶利伽羅嶽(くりからだけ)のカラ縛り。ビシバク・ソワカ。 南無三十六童子・八大童子。何れもよりて悪風をカラめとりたまえ。オン・カラカラ・ビシバク・ソワカ」

「私はパビャ子さんの──」

「オン・ソンバニソンバ・ウン・ギャリカンダギャリカンダ・ウン・ギャリカンダハヤ・ウン・アナウヤコクヤバギャバン・バザラウンハッタ。つなぎ留めたる()まかいの綱、行者解かずんば、とくべからず」

 至愚の独壇場が終わった頃には胴体と首は癒着していた。彼女は分厚い指で華麗な捌きで九字を切る。

「パビャ子さんの大切な人になりたいだけなのに…!」

 ごく普通の女子高生が涙をためて苦しげに訴えた──ように見えた。



「あの子もとんでもないカルマに縛られたもんだよ」

 チューニングが終わり、人面獣は静かに呟いた。

「けれどね。どんなに近づこうとしても、近づけないモノはあるのさ」

「あー、ありますよね。アイドルとか?」

「そうだね。似たり寄ったりか。アイツをアイドルなんて思いたかないが。…勘違いしたら真っ暗やみに真っ逆さまだ」

 二人はパビャ子と乎代子を見下ろし、しばし沈黙した。

「イヨ子ちゃんの怨念?が浄化されて、無事、彼岸に渡れると良いッスね」

「…理想はそうだなぁ。きちんと裁きを受けて新しい魂に変わるのが、人間としての摂理なんだろうねえ」

 輪廻と呼ばれるモノがあるのだとして、彼女の魂は全くの別物として此岸へ送られる。例え身体が人間ではなくとも、彼女はパーラムを忘却し生きていける。

 道を外れなければ。

「あ、あの、俺にもさっきのカッコイイ呪文教えてもらえませんか?ちょーカッコイかったんで」

「はあ?青二才が。調子乗るんじゃないよ」

参考書 『日本呪術全書』

「不動金縛法」から引用


至愚さんは生前、修験者だったので、不動明王関連の「不動金縛法」を選びました。

実際のものをそのまま出すのは失礼かな、と悩んだのですが…私に呪文や術の口上を生成するセンスはありませんでした。

カタカナが苦手なので間違えているかも知れません。

倶利伽羅って何だろう、と検索したらやはりサンスクリット語なんですね。昔の人は異国の言葉を取り込むの上手いです。

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小説家になろう 勝手にランキング

かなりランキングに向いている作品とは思えませんが、ぽちィーーー!!!としてくれるとマンモスうれピーーーー!!です。

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