表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/169

おしょくじ あいせき

 咋噬(さくぜい) 南闇は夜中の三時、食事をとるためのルーティンをこなし、洗骨してから念入りに布巾で表面を磨いていた。いかなる付着物さえ許さない彼は潔癖症と言えるほどに、その時間についやす。

 人も近寄り難い、手入れが行き届いていない山奥で、埋めていた数人の遺体を掘り起こし、骨だけを取り出していた。後はまた土を被せれば自然の掃除屋たちの働きにより肥沃な土地になる。

 草薮から物音がすると、ホンドギツネとは少々異なる狐がジィッとこちらを見つめていた。大きさからしてキタキツネだろうか?いや、それよりも大きい。

 匂いに釣られてやってきたのだろう。

「驚きましたぁ。骨を食べるお人も居るんですねええ〜」

 狐は裂けた口を開くや否や声変わり期の、あの声色で語りかけてくる。

「何だ…この世の者でない部類ですか」

「ええ。()()()()()と申しますう。よろしくお願いします」

 ガササッと草薮から体が出てくると、身体の部分は人間であった。それは予想外だと南闇は感心する。

「腐肉の匂いがしましたのでぇ…少し頂こうかと…」

 狐の大きな口から舌をベロリと出し、いわゆる舌なめずりをする。

「どうぞ。お好きなように」


 腐乱死体を咀嚼している音をBGMに、彼は仕上げにかかっていた。

「南闇さん。こんなコトをしていると、ネツキのょうになってしまいますよぉ」

「貴方のようにですか?」

 美味そうな骨だけを並べて、南闇は振り返らずに問う。

「はい。キツネたちは昔、人でありながら人を食べて居たのです──」



 とても昔、地球に人類が誕生し、その発生源の近くに同族を喰らう者たちがいた。当時はさして人間を食べる行為は珍しくは無い。だが他に食べ物はあったが、その集団は人を狙っては食料にするのを生業にし始めた。

 人類を作った()は怒る。なぜ、他に食物となる生物がいるに関わらず同族ばかり狙うのかと。

 すると彼らは神に敬いながらも答える。我々は食物連鎖の頂点であり、罪深い人間を食べる善なる生き物なのだと──

 神の怒りは収まらず、彼らの頭を動物に変えてしまった。人間でなくなった彼らは世界から疎まれ、惨めに暮らしてはいけなくなったのだった。



「キツネはねえ、別に賛同していた訳じゃぁないんだけどォ…巻き添えってヤツだね〜」

「まるでその時に貴方も居たような口ぶりですね」

「…フフ。どうだろうねえ?」

 上品に、口をなめとる獣頭(けものあたま)は隣に座ってきた。この顔は狐ではなく、狼にも似ているな、と南闇は気づく。

「君たちもいづれ、もっと陥れラれちゃうよ。だから気をつけて。傲慢は罪なの」

「はい」

 意図は読めないが頷いて人骨を手に取る。最近飽食気味であったかもしれない。

「じゃ、お礼にコレ〜」

 キラリと摩訶不思議な光を宿した石を渡された。ご生憎、石に興味はない。しかしお礼の品なのだから受け取っておくべきだろう。

「Happyを運んでくれるょ♪では、さよなら」

 別れの挨拶を交わしまた骨を選別する。石は財布の中にしまっておく事にした。

 傲慢とはまた、哲学的で宗教的な戒めだ。青年は哲学は苦手だったな、と頭の隅で思い出し、あながち自身の思想信条と合致しているかもな…とも考えに浸った。

吉津 子築さんのお顔、モデルにした動物が厳密にはキツネではなかった…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小説家になろう 勝手にランキング

かなりランキングに向いている作品とは思えませんが、ぽちィーーー!!!としてくれるとマンモスうれピーーーー!!です。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ