ここ ア!
無意味名 パビャ子は三賀日の最終日、乎代子とコンビニのイートインスペースでホットココアを飲んでいた。
外は極寒で木枯らしが吹きすさんでいる。昨日の暖かさとは打って変わった気候で風邪ひきそうだ。
「乎代子。2杯目、奢って〜」
「嫌だ」
「ううっ…お腹空いた…」
茶髪オンナのわざとらしい演技を無視してふとテーブルの下を見ると、大きな蛾が死んでいた。ここら辺にはいないような立派な羽を持つ蛾。
わずかに心臓が早鐘をうつ。脳裏にパーラムが蘇り、かき消すようにココアを飲んだ。
甘い。甘すぎるくらいな味が舌にこびり付く。
「どうしたの?急に、負のオーラ増して」
「は?負のオーラだって?」
パビャ子はガジガジと紙コップをかじって遊んでいる。牙が鋭いために紙はすぐボロボロになってしまった。
「くぅらあ〜〜~い顔して周りをどんよりさせてんじゃん」
「ああ…蛾が」
「蛾?!」
ヨダレを垂らして周囲を探す。彼女にとって虫は食べ物だ。
「蛾が苦手になってさ」
「えっ、あんなに美味しいのに?!」
「私は蛾なんて食わねえよ!…なんか、嫌な気持ちを思い出すようになって」
蛾がたくさんいる奇妙な森。あの世界が嫌でもフラッシュバックする。
「そっか。まー、嫌いな食べ物を無理に進めるのはよくないよね。蛾って目玉あるみたいで怖がる人もいるらしいし」
「うん」
「私が人間の肉が苦手なのと一緒!大丈夫!」
(人を食わないのか?!コイツが?!)
常に空腹感を有すかの化け物が人を食わないだと?
信じられないと、乎代子はポカンとした。
「え?知らなかったの?」
「知らん」
「そっか。まー、カミングアウトするのも自由だしね」
「そうだよなー」
ココアをチビリと飲んで、清々しいほどに晴れた空を眺めた。
「お前に話したら少し気が晴れた。…ありがとう」
「やーん。乎代子ちゃん可愛い〜〜」
「うざ」
ココア 美味しいんですけど粉だと作るのが苦手でカチカチにしちゃうんですよね…。




