しんねんことよろ なパーラム と をよこ
あけましておめでとうございますmん!
あけました!
2025年へのカウントダウン。
──覚醒するとまた見知らぬ気味の悪い森にいた。さっきまでは廃墟と化したアパートの一室だったはずなのに。
鬱蒼とした森──雑木林だろうか?変わった木々は──乎代子には分からなかったが、コウヤマキが多くを占めていた──空を隙間なく埋め、不気味で巨大な蛾が木にとまり、羽の模様がこちらを見ているようだった。そして何故かあちこちに錆び付いた信号機があって、夜間点滅信号のため赤く点滅している…みたいだ。
あの串刺しにされた亡骸たちが信号機の犠牲になり──訳が分からないが、か細く呻いている。
これはパビャ子に似た女がいた、意地悪い悪趣味な空間だ。
「や、乎代子さん」
「また、この気味悪い場所かぁ…」
「ひでーな。私好みにしてある最高の空間だよ」
パーラム・イター。彼女は妖しげに光る金色の瞳を歪め、どうぞこちらへ、と仰仰しい仕草でエスコートしてくる。
なんの吹き回しだと、怯えていると…場違いな客人を持て成す茶菓子が置かれたテーブルと椅子が用意されていた。
「…なになに?私は殺されるの?」
「毒入りクッキー遊びでもすると?まさかあ、ありかだーい容物サマにそんな物騒な行いをするとでもぉ?」
ニタニタと彼女は嘘か誠か、真意の読めぬ言動をする。
「…怒ってるんだろ。この前、私がいきなりでしゃばって台無しにしたのを」
椅子に座り、ボソリと零す。
「そりゃあーまあ。怒っておりますわよ」
「やっぱり殺す気だ」
「ハハ!短絡的な思考をしなさんなぁ!パーラムさんはそこまでお馬鹿じゃないよ」
薬臭い茶を注がれ、前に出される。
また特注品の煎じ茶であろうか?口にする気になれなくて眺めていると、パーラムがゴクゴクと飲んだ。
「不老不死の化け物から取った胆嚢が煎じられた茶だ。寿命が伸びるよ」
「はあ…よくもまあ、そんな物を持っているなぁ」
「色々あったからね」
茶を口にしてみるととんでもなく不味い味がした。
(マジで寿命が伸びたら困るな…)
「ねえ?駆け引きしない?」
媚びたようで、それでいて射抜くような眼光を宿したパビャ子にそっくりな女性が切り出してきた。
パビャ子に言われているようで居心地が悪い。
結局はそれか。
「洞太 乎代子。アンタにアタシの力を自由に使う権利を与えよう」
「…嫌な予感しかしねーぞ」
「ある限度を越えたら、アタシが体を支配する。そしてアンタは異能に耐えられなくなり自壊し、私は自由の身になるってワケだ」
茶菓子を無遠慮に食べ散らかしながらも、楽しそうだ。
「…いやだ」
「えー。武器は持っといた方がいいよお?」
「武器?バケモンに立ち向かうための?」
「YES。多分ね、人間の寿命の中で何回かは意地悪いヤツらがけしかけてくるかもしれないし、こないかもしれない。その時、アンタは無力で手立てもない」
これは保険なのだと、言いたいのだろう。清楚凪 錯迷の際、この世の者でない部類の凄まじさを思い知らされた。
パビャ子が負傷した。嫌だと思い、居なくならないでと願っていた。
「…ある限度って?」
「生命を異能で不必要に殺めたり、オーバーキルした場合だ」
「私がそんな事できるとでも?」
するとパーラムはズラリと並んだ牙を見せびらかして笑った。人の口には不釣り合いな肉食獣の牙は血が染み込んでいる。
「分かるさ。アンタは私でできてるんだからね」
それに。
「人間の愚かしさってのは何度も拝見している」
「…そ、そう」
乎代子はとりあえず理解しようと声を出す。
「さあ、邪悪なるパーラムサマとの契約をしようじゃないか!!」
「あ、い、いや、待って」
椅子を立とうとして、指を掴まれる。骨が折れた音がした。そして──もげ、血を吹き出す。
「ぎゃああああああああ!!!!!!いでええ!!!!!!!!」
「さて、と」
己の人差し指をいとも簡単にひきちぎると、乎代子の指にグリグリとねじり込む。
「これで血は止まったよ」
「ヒ、ひっ!何した!指!指が!!!」
「この指は私のモノになりました〜」
乎代子の細っこい指がアチラの人差し指になっている。血は収まり、代わりに獣びたいかつい指がそげ替えられた己の現状に涙が出そうになった。
「何してくれんだよおーーー!!!!!!!!」
「泣いちゃうの?あらあら、泣かないでえ」
「泣くよ!ちくしょう!」
「あけましておめでとう〜」
「今?!」
今年もよろしくお願いします〜〜~!




