みからでたさび あらたなさび
「止めて!地獄なんて、行きたくない!」
「さあ、あの世で仲良く睦まじく暮らそう。約束したじゃないか」
「許して、許してください!駒田さん!あれは駒田さんの家族に約束されて!」
嫌だと必死に抵抗する娘に、医者は乾いた笑いをもらした。
「君はいつもそればっかりだったね。約束。約束。守れた約束はいくつある?君はこれから駒田一族の一員だ。しっかりと…君をお義母さんに躾てもらおう」
「私は悪くない!悪くないんだわ!悪いのは──」
ズルズルと駒田に引きずられ、娘は『地獄』へ消えていく。地獄というよりは風穴か。
分からない。洞窟にも、口にも見えた。
赤い紙垂が飾り立てられた──冥婚の間に、彼女は呑まれていったのだ。
「ンフフッ♡♡ンン…愚かァ〜〜。ああいうのは何回見ても飽きないわぁ♡ジュルジュル…デリシャス☆グリィーン・ウィズ・エンヴィ♡」
ウットリと悪女は舌なめずりした。
「貴方はヒトリ雨さんじゃなかったのですね。色々と失礼しました」
空々しいな謝罪をする笑顔の青年へ、美麗之前は味もそっけもないとスカした対応をとった。
「いいえ?アテクシはヒトリ雨でもあり、そうでもない、誰でもあり誰でもないの。咋噬 南闇くん?あなたも気をつけなさい?良くも悪くも、悪目立ちしないようにね」
「ははは…目立ちたくないです」
「まあ、あのオンナみたいに口約束はしない辺りまだマシねえ」
じゃあね、とヒトリ雨であった人物は尾先ヶ 間蔵を引き連れて、消えようとする。
「あのっ!私が、貴方たちが何なのか、一つだけ教えてもらえませんか!」
ぼんやりしていたミス(Miss)は慌てて問いかけるも、傍でパシパシと笏を持て余していた子ども二人がハア、とため息をついた。
「それは…私らからは言えないなぁ。君たちの親である者に直々に聞くべきよ」
「そ、そ!管轄外、かんかつがーい!る、る!るーん」
厳粛な口調を止め、彼女たちがシッシッと跳ね除けた。
「また会おう!幼き同胞。君たちに幸あれ!」
マジカルな光が弾け、残ったのは寂れた町だけである。人の気配は無い。
血飛沫も、燃えた跡も。暴動があった空気さえも。
何事も無かったかの如く、港町は小雨に打たれていた。廃墟化している。
長年人がいた形跡がなくなり、崩れてしまった家屋もある。あれだけ騒がしかったのに。 端から過疎化しているみたいだ。
「…ああ、すっごく疲れた〜…利用されっぱなしな感じで…寝れるンだったら寝たいですよお!」
ぶつける先のないやるせなさに地団駄を踏むが、彼女の嘆きが響き渡るのみである。
雲間から朝日が差し込み、海を煌めかせる。どこからかカモメが飛来して日常に舞い戻ってきたと変な虚しさがあった。
どうなってやがんでい




