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とらばさみ と ばりきゃりうーまん

世間一般的に知られているあのギザギザ歯がついたトラバサミって今は規制されているんですね。 罰金がとられるそうです。

知りませんでした。世の中は変わっていきますね。

 夜明け頃。リクルートスーツ姿の痩せこけた女性、廢──スフは首都圏近郊の低山で罠にかかってガウガウと吠えていた。何度も暴れてみせたが獰猛なトラバサミはがっしりと足に噛みつきとれなかった。

 もちろんフスの皮膚は無敵なので傷はつかない。痛覚もないので痛みもない。この世の者でない部類なので尋常な力もある。

 ただ彼女は長く生きてきた代償か、人らしい思考を持ちえていない。五本の指でトラバサミを外すという考えに至らず。周囲を見渡してみれば、あるいは鎖と杭に気づき──普通に罠を壊せるのも気づかなかった。

 しかし彼女の中にあるわずかな野生動物の知識と常識が、自分自身を前後不覚にさせている。罠にかかれば逃げられない、と。

「がアアア!!」

 鼻にシワをよせ牙を剥き、ジタバタするが一向に事態は改善しない。

「あら、貴方」

 ガサガサと山を登ってきたのは登山客ではなく、場違いな服を着た四十代半ばの女性であった。皆が思い描く通りのバリキャリウーマンな、オフィスカジュアルなしゃなりとした姿形。

 到底山を登ってきたとは思えない。

 まるで降って湧いたようだ。

「ガァッ!」

 敵である人間を前にフスは怒りを表す。しかし容姿端麗な女性は首を傾げ、トラバサミをみた。

「ああ、違法な罠が仕掛けられていたのね。しかし貴方、人間の手があるのに外せないの?」

「グぅぅ」

 唸りながら身を低くして距離を置こうとするが、女性は近づいてきた。

「そう。まだ使ってる地域があるなんて知らなかった」

「…」

 ジーッとそれを熱心に眺め、しゃがみ込んだ。そうしてしばし静寂がすぎる。さすがのフスも予想外の反応に困惑した。

 ただ彼女はトラバサミを『見ているだけ』なのだ。

 人らしさは失ってはいるが動物として、生物として予想外の出来事に口をあんぐりしてしまう。それに気づいた美女は髪をかきあげ、聞き取りやすい声で言い放った。

「ああ、私は何もしないわ。トラバサミを外しもしないし貴方を攻撃もしない。ただ見てるだけが『仕事』なの」

 何だそれは?と罠にかかった方は呆気にとられた。

「じゃあ、さようなら」

「ガウ!」

 待て!と言わんばかりにフスは吠える。しかし彼女はモンローウォークで山を歩いていく。行き先は不明だ。

「ううううう!!!!!!!」

久しぶりのフスちゃん登場!

そして新キャラも登場しました。

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小説家になろう 勝手にランキング

かなりランキングに向いている作品とは思えませんが、ぽちィーーー!!!としてくれるとマンモスうれピーーーー!!です。

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