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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆litとInsane☆  作者: 犬冠 雲映子
きりとりせん(ミス(Miss)ちゃんと南闇くんの旅、etc.)
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おぼんには むしに たましい がやどる

 昼下がり。

 ムシャムシャとバッタを無心に食べていると、草原から声がした。

 複数人の、囁きにも近しい声だった。

「あちら側にいけないようにした者が、我々を食べておる」

「ああ、恐ろしい恐ろしい」

「この地の未練さえ無下にするのか」

 どうやら何人かの男性がコソコソと話し合っている。パビャ子はムッとすると河川敷を見渡した。

 そこには暑い最中(さなか)、ランナーやコートで運動をする子供たちだけ。この辺りは日が強くて釣り人もいない。

 対岸に望めるスーパー堤防には散歩する人もいるが、あの気配ではないと分かっていた。

「もう!」

 捕まえた虫をありったけ咀嚼する。腹が満たされるには草も食べなければならないかもしれない。

 猛暑続きに生き物が不足している。パビャ子はお腹が空いたと嘆きながらも地道に虫を探すのだ。

「アレに食われたら来世もクソもないぞ」

「川の赤子もついには泣き止むだろう。恐ろしい恐ろしい」

「んも〜〜~っ!さっきからコソコソ誰なの?!」

 振り返ると仲間首が4体、並んでこちらをジロジロと見ていた。落ち武者といった風貌の──今の時代ではない髪型をしている。

「わ!生首?あっ??」

 腐敗した生首かと見間違えたらしい。バッタたちがワタワタとしているだけだった。

「やった〜〜~!ご飯だっ」

 パビャ子は散り散りになったバッタたちを追いかけまし、日が暮れる。





「ああ、あそこは古戦場だよ。ほら、川って戦いに適してるだろ?まあ…そういう戦術は…俺も詳しい事は知らないけどよ」

 ラファティ・アスケラが焼肉屋で何の気なしに答えた。

「川?ああ、あの…色々幽霊が出るっていう噂の川ね。パビャ子、バッタ食ったのにあまつさえ焼肉も食べるワケ?」

「良いじゃん!」

「うえっ、乎代子はバッタを食べ物にカウントするのか」

 それぞれ焼肉を焼きながらも会話をする。

「お盆も明けたのにまだ居るんだな…」

 ラファティがやや暗い気色で呟いた。

 このご時世、お盆時期も過ぎ夏休みすら終わっている。あの世とこの世は遠ざかっていた。

「パビャ子はそのバッタ、食ったの?」

「うーん。逃がしちゃった」

「そっか」

「え?なんかあるの??どうしたの?」

「いや…まだソイツらはこの世にいるんだなって…」

「え〜〜~?」

 訳が分からないと茶髪オンナは目をぱちくりさせる。

「幽霊の寿命って確か、何だっけ?数年前にネットで話題になってたんだけど忘れたわ」

「…寿命もクソもあるかよ。ははっ!つーか、この世に幽霊はいねえだろ」

 本調子を取り戻した彼に二人は顔を見合わせる。だが気にした所で何も変わらない。

 パビャ子はふと落ち武者たちがまだ川辺にいるのか、と不思議に思った。落ち武者というよりは彼らは死者の残した残留物かもしれない。

 あの世、なんて、この世の者でない部類になっても囚われているのか。もうそこに居ないのに。

 少しだけ哀れだ。

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小説家になろう 勝手にランキング

かなりランキングに向いている作品とは思えませんが、ぽちィーーー!!!としてくれるとマンモスうれピーーーー!!です。

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