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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆litとInsane☆  作者: 犬冠 雲映子
きりとりせん(ミス(Miss)ちゃんと南闇くんの旅、etc.)
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いじわる シ ないで

「んー…とりあえず身体を弱らせないと、暴走して周りに認識されたら困るし」

 彼女はそういうと近くにあった頑丈そうな石を手に、ミス(Miss)へ殴りかかった。

「ハーッ、ハー…」

 当の本人は金色の瞳を見開いたまま、返り血を滴らせ唖然としている。その隙を狙い、頭を殴った。鈍い音がして『血液』が飛び散る。

「何するんですか」

「君さぁ、教育係として失格だよねー。人黄の意味も教えない、自分自身たちが何なのかも明らかにしない。そんで己の親となる存在が誰だかも分からない」

 冷徹な声色で、ヒトリ雨は殴り続ける。嘔吐くミス(Miss)など気にもとめず。

「もしかしてお坊ちゃまも、人黄の事知らなかった?自分が何なのかも知らない?至愚の嘘を鵜呑みにしてたりした?」

「は?何を」

「あははっ、世間知らずのお坊ちゃまかあ〜〜~。ドクター駒田みたいだねー」

 ケラケラと嘲笑され、南闇は耐えられず──反射的にマジカルシャベルでガッと女の顔に突き立てた。

「レディーに手を出すなんて本当になってないわ〜。ま!ニンゲン、パニックになるとそうなっちゃうよね!」

 顔に深々と刃先が刺さっているのに、彼女は明るい態度を保持したままペチャクチャと喋っている。

「黙れ」

 笑顔を貼り付け、彼は怒りを露わにした。何度も何度もシャベルで傷をつける。

「僕をバカにするな。その笑いを止めろ、笑うな」

「お坊ちゃま。いつか、人黄を食べちゃったこの子に殺されないように気をつけなよー」

 グチャグチャに細切れになった顔面で、ヒトリ雨は『マヌケな若者』を馬鹿にした。

「今度、至愚に会ったら全部教えてもらいなねー」





「うっ…」

 ズキズキと頭が痛い。術士が呪縛で自らを殺そうとした時から記憶が飛んでいる。

「ここは…」

 背中が見えて、誰かにおぶられているのだと知る。

「お父さん…?」

「僕がお父さんに見えますか?」

 微かに気を害した南闇の声がして、恥ずかしくなる。どうやら道なき道をゆっくりと進んでいるようだ。

「すいません!手間をかけてっ、あ、歩きます!」

「良いです。まだ病み上がりですから」

「え?あれ?」

「ミス(Miss)ちゃん、オハヨー!起きた?」

 隣からヒトリ雨の元気な挨拶がして意識を失う前の、気味の悪いコテージ群は夢でなかったと実感する。

「見てみて。夜明け!綺麗〜」

 日が昇り初め、空がグラデーションがかっている。夏の夜明けは嫌いではなかった。虫の音と、風が荒涼とした景色を満たす。

「とても怖い夢を見た気がします」

「まあ、人生そんなもんさ!ミス(Miss)ちゃん、この先長いんだから気張っていこ」

 ニッカリと笑う彼女に、困惑しつつも蘇りそうになった悪夢を閉じ込めた。

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小説家になろう 勝手にランキング

かなりランキングに向いている作品とは思えませんが、ぽちィーーー!!!としてくれるとマンモスうれピーーーー!!です。

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