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(この人は、人間と共存しようとしたのかな?)
この世の者でない部類は食人をする。推測ではあるがそれを良しとする人もいて、ヒトリ雨と医者は過ごしていたのだらうか?
(私たちは共存できない…だって、お母さんとお父さんは──)
ミス(Miss)は暗い顔で医者の遺体を眺め、後ずさる。
「…ミス(Miss)さん、まずは木を燃やしてみてください」
そうこうしていると、南闇がとんでもない提案をした。
「ええっ?!燃やしちゃうんですか?!」
「遺体には相当なマジナイがかけられているので、多分、燃やしても大丈夫です」
(根拠は…!?ま、まあ、南闇さん、そういう直感?もってそうだし…)
深呼吸して意識を集中する。木へエネルギーを向け点火させるイメージを浮かべ、拳を握りしめた。
ボウッと針葉樹が一気に発火し、夕闇を照らす。木の燃える臭いと奇妙な異臭がした。
「わあ〜〜~!すごい!」
ヒトリ雨が目を輝かせて轟々と焼け落ちていく物体を仰ぐ。
「君たち只者じゃないよー!!ね!ね!」
「う〜む。やはり燃えませんでしたね…」
「本当だ…」
彼の言うとおり遺体は無傷で、有刺鉄線は辛うじて形を保っているだけ。どんな技術を施したらこうなるのだろう。
「会いたかったよー!ドクター駒田!」
生者に再会したかの如く、ヒトリ雨が医者の遺体へハグをした。
「駒田さんとは仲良しだったんですか?」
「利害の一致だね!ドクター駒田は人体実験の後処理に困って、アタシがソレを手伝ってただけ!でも色々教えて貰って楽しかったよ」
(じ、人体実験…)
生前のお医者はロクな輩ではなかったようだ。コテージ内に吊るされたある種のエバーミング処理を施された死体たちにも納得がいく。
「ミス(Miss)さん」
「はい。燃やします」
いつものように死体を燃やしていく。脳みそがある頭部だけを保持しながら。
「──お、おい!ボヤが起きてるぞ!」
神社が見えた方から人の声がして、三人は顔を見合わせた。
「ミス(Miss)さん、続けていてください。今度は僕が殺ります」
コンパクトミラーからいつもより大きめなマジカルシャベルを召喚すると、南闇が地面に突き刺した。
「うわああああ!あ──が!」
亀裂から光が走り、暗がりに紛れていた人が絶叫する。
「化け物だ!化け物がっ」
「術士を呼べ!」