ひとり あ め
草薮をかき分け、彼女はどこかへ行く。昔は道であったのか、看板が埋もれていた。
「アタシはヒトリ雨!そこまでベテランじゃないけど、君たちよりは先輩だよ〜」
「ヒトリ雨さんは単独行動をしているんですか」
「うん。印猫さまのヤツらみたいに群れるのは嫌いでね」
(印猫さまって、やっぱり多多邪の宮さんみたいに強い人なのかな?)
南闇とヒトリ雨なる女性が話している後を警戒しながらもついていく。
暗くなりかけた荒れ果てた土地。虫の音とザワザワと草木が揺れるだけで人気がない。忘れられた世界みたいだ。
「君たちはー?どこの門下生なの??」
「それが、…僕は覚えていないのです。必死だったもので」
「そっか。会えればいいね!」
(会えるものなのかな?あの子も印猫さま?に会えてるの?)
──彼女曰く印猫さまの下につく人々は非常に妄信的で一目で分かるらしい。攻撃的だったり情緒不安定だったり。対話ができない。
リクルートスーツ集団の中でもその教祖たる人物は強く、位が高い。なので他の同胞も手下たちに手出しができないのだと。
「詳しいですね」
「まあ、長生きすると嫌でも気にしなきゃならなくなるし」
苦笑すると、草薮が終わり崩れかけたコテージ群があった。バブル期に急増して放置されたのだろうか。
「こん中にたくさんあるからもらって行ってねー」
いくらか形を残す小屋の中には吊るされた人間たちが皮を剥がれて絶命していた。干からびミイラ化しているのもある。
「ありがとうございます。見ず知らずの人に食事を分けてくれるなんて」
「暇だからいいよ。それにずっと同胞と会わなかったから…あ、後、頼み事があるんだけど」
モジモジとするヒトリ雨は建物の近くに置かれた禍々しい塊を指さした。
「あの封印を解いて欲しいんだ」
「な、なんですかアレ?!」
ミス(Miss)は思わず大声をあげた。